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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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24話  《盾》。問題を先送りする

リヒトは目的地に向かってます。

「俺バレたら首ですかね~」

 かぽっ、かぽっ、かぽっ


 馬にまたがって走りながら年若い騎士が不安げに告げる。


「僕が命令したから怒られるのは僕だよ」

 だから安心して。

「安心って、卿がそれで納得してくれるでしょうか……」

 …………。


「ガンバレ」

「それ棒読み!! ってかやっぱ叱られるんじゃないですかっ!!」

 嫌ですよ~。俺ルーデル卿に憧れて騎士になったのに~。


「……姉さんに叱られたいから馬鹿な事する輩いるよ。そいつらは『我々の業界ではご褒美です』って言っていたけど」

 まあ、軍服で雪合戦とか。水の掛け合いとか。酒で暴れたとかそういうのだけど。

「姉さんはそいつらを外に正座させてしばらく相手しないんだよね。『放置プレイですか。厳しい。でも、そこがいい』とわめいていたけど………」

 ああ。そういや、姉さんその後こう言っていた。


『こういうのは面倒だから相手しない。お前もこういうのになるなよ。悪い見本だからな』


 心底嫌そうだった。


 それさえ除けばすごく優秀なのにと嘆いても居た。


「そういう方々と一緒にしないで下さい……………」

 うん。そんな上司の話聞きたくなかった。


「でもいいんですか?」

「何が?」

 走るたびに寒くなる空気。


 それがリンデンの象徴の能力の影響だと教えてもらう。


「うん……」

 王に言われたから気付いた。

 僕はただ守られるだけになりたくなかった。


「僕の事で争っているんでしょう。なら、僕の事は……」

 僕が決める。


「………」

 返ってきたのは沈黙。

「………? どうしたの?」

 振り向いて尋ねるとポカーンと口を開いてお世辞にも騎士としてどうなんだろうと間抜け顔。姉さんに見られたら騎士としてまだまだだなと地獄の訓練になるだろうな。


 …………姉さんの訓練を受けると大半の人がどうして自分は生きているんだろう。と哲学を語りだすのだ。


『リヒトにもその内してもらうからね』

 満面の笑みで告げられて、内容こそ分からないのに哲学を語りだす輩や死屍累々の方達を見て―ー一部そちらに目ざめている者も居るが――絶対にしたくないと思わされた。


「いえ……」

 あっ、動き出した。


「リヒト様もやっぱり象徴なんですね……」

 そう思っただけです。

『君が居たらプリーメラの存在が危うくなるんだ』

 王の言葉を思い出す。


「………姉さんに似てきたのかな」

 姉さんの……あの人の存在を危うくしたくないけど。僕はいつまでも守られたくない。

 だから。

「姉さんに似てきたのなら嬉しい……」

 象徴である前に姉さんの弟だから。その前提で僕を見てくれるといい。


「そうか。ルーデル卿の弟君ですからね」

 納得したそう告げる騎士が何を見て象徴だと言ったのか分からないけど。今はそれでいい。

 ――今は姉さんのおまけ扱いで居たいと思ってしまった。



先送り。

怒られる現実。

姉を苦しめる存在になる事。

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