19話 《盾》。王に諭される
どちらもフリューゲルの守られるのを是としない人達。
とんとん
ノックする。
「――どうぞ」
「――失礼します」
中の声に反応してそっと扉を開ける。
「ああ。待っていたよ」
軍服に身を包んだ王。
前回会った時とは雰囲気が全く違う。
ぞぞっ
身を包む空気が違い過ぎて、その身に纏う空気の鋭さに恐怖を覚える。
そうそれは戦場のそれ。
戦う者としての戦場の空気を宿している。
ぞくっ
そうだ。ここは戦場なんだ。
前線ではないが、常に指示できる状態。すぐに動けるように構えるその雰囲気。
軍国の王。
「当事者の君が知らないというのも妙な話だと思ってね」
机に広げられた地図。
「我が国の状況と戦争の理由。それを話そうと思ってね」
声を掛けたんだよ。
王は笑う。だが、その眼差しはこちらを試すような――好意的なモノに見えない。
「今まで、プリーメラが居たからきちんと話せなかったからね」
丁度いい機会だから。
そう告げて地図を指さす。
「今我が国は二国に攻められている」
「――知ってます」
「そうだね。だけど」
楽しそうに、笑う。
「その理由は分からない」
「っ…⁉」
図星だった。
戦争の理由なんて気にした事がない。戦いは戦い。
「ああ。勘違いしないでくれ。戦争は戦争だ。だが、戦争にも大義名分が必要でね」
苦笑。
「ノーテンの大義名分は、《玉座》の正当な権利だ」
「………」
正当な権利? 《玉座》の?
「………正直な事を告げると我が国の主張はプリーメラ一人で十分だ」
はいどうぞと差し上げてもいい位ね。
「……!!」
「君が居たらプリーメラの存在が危うくなるんだ」
危うくなる?
「……どうしてです?」
「……うちの国の成り立ちはかつてあった大国の騎士団だった。他の騎士団の象徴は、金髪碧眼。男性の姿。我が騎士団の象徴は異質だった」
女で、銀髪。眼も紅い。
異なる姿。
その結果は想像できる。
異質故に拒まれたという事は。
「認められるのに時間が掛かった。騎士団が放浪の果てに国になった時には誰一人その外見も性別も気にならなくなったけど。外見だけであっさりと認められた気味が居るのがある意味問題なんだよ」
困ったと口を挟ませないまま告げる。
「君はいつか我が国を滅ぼす白アリになると思われるんだ」
「………」
二つの象徴は民を国を二つに分けてしまう。
「それに、君はいつまでも子供のままでいないだろう」
「………姉さんは」
それが分かっていたのではないのか。
尋ねる声に苦笑して。
「分かっていたかもしれないけど。その前に君を《守る者》の対象にしてしまったからね」
拾った消えかけていた命。
生きたいと願ってその意思を見せた。
だから、
「彼女は、良くも悪くも守るために戦う存在だからね」
生きたいと願った存在も守ってあげると手を差しだした。
「……なら、どうして僕をここに居るのを認めたんですか?」
「そうだね」
真っ直ぐな眼差し。
「私は彼女を置いて死ぬものだからね」
人と象徴。
寿命も生まれも異なる存在同士。
「王と象徴は一対。二つが協力しているから国はまとまっている。でも、王はどんなに上に立っても寿命は人だ」
置いていく立場。
「だから、置いて行かない彼女の絶対的な味方を作りたかったからね。――守られるばかりは嫌だろう」
それだけだ。
もう用が済んだとばかりに彼は王として自分のやるべき事に入る。
それを見て自分に問いかける。
自分はこのままでいいのか。自分は足手纏いになってないか。
自分の意思は………。
「戦場に」
行かないと。
呟いて走り出す。
行く手段は分からないでも。
(自分の意思を伝えないと)
自分が戦争の原因で死人が出るのなら――。
さて、戦争を引っ搔き回してもらいましょう




