178話 《盾》。面倒な事を言われる
女難の相
「わたくしが王位に就ける……」
女だから。それだけの理由で王位に就く事が出来ないと思っていたのかその報告を聞かされて王女は戸惑い、やがて、
「――当然よね」
と微笑む。
「――ヒメル」
めったに呼ばれない本名――象徴同士しか呼ばれないし、姉は愛称のリヒト呼びが殆どだからな――で呼ばれ、王女の方を見る。
「わたくしは王になるの」
「そうですね」
「女だからと言って就けないと散々言われていたわたくしよ。これはこの国の変革の時だと思わない⁉」
興奮したように告げている王女にどう答えればいいのかと様子を窺う。
「騎士の国。この国はずっとそう呼ばれていたわね」
「そうですね」
「わたくしを守る騎士の国になるんだわっ!!」
相槌を打つのも辛くなってい来た。
「殿下」
「なあに?」
「俺の事はルーデル公とお呼びください」
公では名を呼ぶなと言外に告げる。
「ヒメルはヒメルでしょう。――リヒトではなくて」
その一言で、ああ。姉さんに対抗してそう呼んでいるのかと察しがついた。
「俺のリヒト呼びは愛称です。姉しか呼びませんし、結構便利です」
そうもっぱらお忍びで城下に行くと俺の名前を知っていても愛称までは知らないだろうから見付からない。姉さんも変装すれば溶け込めるので情報を手に入れるのに都合がいいのだ。
「そう……」
不満げだ。
一体殿下は何を望んでいるのだろうか。
「ヒメル」
「殿下。先ほど……」
「わたくしも貴方に愛称をつけてもいいのかしら」
問い掛けではなく命令。
「――申し訳ありません」
丁重に断る。
「どうして!!」
「……俺が呼ばれたのを認識できないからです」
そう。かつていろんな王が俺に特別な呼び方をしようとしたが定着しなかった。
俺が呼ばれたのに気付けなかったのだ。
愛称が何とか定着する頃には王は寿命でなくなり、結局愛称は消える。
それが何度もあるので愛称呼びは断る事にしたのだ。
「それは忠誠心が足りないのでなくて?」
理由を告げると返ってくるのはそんな言葉。
「そうかも知れないですね………」
言われて見ればそうだ。主君が付けてくれた愛称を覚えられないなんて忠誠心が足りないと言われればそうだ。
「――わたくしにもそんな事を言うのつもりかしら」
……………………誇り高さと言うか傲慢さが透けて見える。
だけど………。
愛称リヒト。人としての名前はヒメル・グランディア・ルーデル。そして、象徴としての名前は『戦う玉座の為の盾』多くないだろうか………。
「そうね……『太陽』とかいいかもしれないわね」
太陽……。
「俺に合わないと思いますが……」
正直止めてくれ。太陽の象徴名を持っている人もいるんだぞ。
「これは命令よ!!」
そう告げてくる王女に、
(即位したら面倒になるんじゃないかな)
と感想を抱き、この殿下を王位につけたいと思った陛下の頭を心配になってしまった。
リヒトは苦労性




