177話 《盾》。男と女の王を事を聞かされる
実際女性の王って大変ですよね
第一王女――と言えば聞こえはいいが、陛下にはその第一王女以外御子が居ない。
「王女殿下が王位を継承する………」
「ああ。陛下の希望だ」
「………難しいな」
「全くだ」
女帝自体別にいい。問題は、王位に就くのを大臣達がどう捉えるかだ。
「ただでさえ。姫の婚約で揉めているんだ。どんだけの申し込みが殺到してくるんのやら」
婚約の話は当然あった。
内々で正式発表は無かったのは、王女の立場が微妙なモノであったので正式発表される前に白紙に戻された。
「姉さん」
「女帝は繋ぎ。実験は夫である大公が掌握。そして、次代はその女帝の子供。傀儡に出来ると狙うハイエナがわんさか来るぞ」
にやっ
笑って告げるが笑い事ではない。
「不謹慎だ」
そう注意すると姉さんは笑いを引っ込めて、
「まあ、ハイエナ程度ならまだマシなんだよな」
ハイエナ程度って?
「姉さん?」
「………王女様が、恋をしたら厄介だ」
まあ、身分を弁えてくれればいいけど。
「姉さん……」
意味が分から無いのだが。
「男の王は、正妃が居ても恋に溺れて側室……愛妾をもてた。だけどな。女帝の場合愛人を持つ事は外聞的に悪いモノなんだ」
「……………」
「次代の王がどこの馬の骨の子か分からない。そんな面倒な事を言われて戦争の理由として吹っ掛けられたら厄介なんだよ」
「側室の子供が次代の王でも起こる問題ですね」
「まあな。でも、女だからと言うだけで周りの目は厳しくなるんだ」
不公平だよな。
「…………姉さんもそうだったのか?」
「……まあな」
最近(ここ5百年くらい)は気にされなくなったけど。
「姫様の立場が微妙になる理由の一つは俺なんだよな……」
「姉さん?」
「|《象徴》《俺》が女だという事がな」
「? それが?」
「………上に立つ女性は一人でいい。今までもあったんだよな。王を誑かす女狐扱いは」
「………………………姉さんに一番合わない言葉だな」
女狐って……。
確か男を誑かして権力をほしいままにする女性の別称だよな。狐に失礼だよなその別称。
「そんな媚なんて出来ないし、権力なんて今更」
「だよな。《象徴》と言う存在がどういうモノか理解不足と言うのがまあ大きな要因だけどな」
それにエーヴィヒにはリヒト居るし。
「なんで俺?」
「――俺が《象徴》と言うのを信じてない方も多いんだよ。大抵の国は《象徴》は一人だし、俺の外見が国の《象徴》て言っても信用されない」
銀髪に赤い眼なんて民にも居ないからな。
「俺の方が偽物の様なものなのに……」
「それだけお前が浸透してきたって証拠だろ。多分俺の方が先にエーヴィヒの《象徴》だって事実を知らない奴も多いだろうな」
この国には《象徴》は二人。
男の《盾》と女の《剣》
それが民にも普通に伝わっている。
「………そんな大それたものじゃないのに」
そう。まだまだ姉さんに追い付いていない。
「そっか?」
最近じゃお前の方がいろいろしてるじゃないか?
そう言われるが、
「姉さんの方が民に慕われているよ……」
俺は民に溶け込んで笑う事が出来ないが、姉さんはよく民と一緒に酒を飲みかわし、子どもと遊んでいるのをよく見かける。
「そこは適材適所だろう。上の方達はそんな俺よりもお前の方が信が置けるともっぱらの噂だ」
俺を煙たがっているのも居るしな。
「単に都合がいいだけだ」
そうまだ追い付かない。
この人にどうすれば追い付けるのか。対等になれるのだろうか……。
『……《玉座》に』
「リヒト?」
ぼんやりしていたのだろうか姉さんの顔がすごく近くにあった。
どくんどくん
心臓に悪い。
「リヒト。顔が赤いけど?」
大丈夫か?
そう手を伸ばしてくる姉の手を避け、
「暑いから多分それでだと思う……だから……」
無防備な顔を見せないでくれ。
鈍感な”姉”にそう言えない本音をぶつけたかった。
嫉妬されるのに気付いてないフリューゲル。(女性受けが悪い理由)
男装の麗人だからその手の趣味の人には人気(笑)




