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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
毒の支配
179/185

174話 《盾》。まだ気づいてない…

毒はゆっくりと侵食していく……

「ったく。姉さんは……」

 仕事をこんなに置いて行って、北の地に向かうだなんて……。

 ぶつぶつと文句を言いつつも残してある仕事を確認して笑みを浮かべる。


 ――残された量は信頼の証だと気付いてから。残してもらえる事実に嬉しく思う。


 子どもだった頃はどんなに急いで出かけても仕事を残してくれなかった。全て片付けてから行ってしまう姉を見送り、姉に頼って貰えない自分の力なさに悔しさを覚えた。


 そんな事を思えばこの苦労は幸せな面倒事だ。


 そっと笑みを浮かべて、すぐに誰にも見られてないかと慌てる。


 こんな姿を見られたら示しがつかない。


「良かった。見られてないな」

 安堵して、仕事と向き合う。


「軍の強化もあるな。これは姉さんの専門だったはずなのに……」

 そこまで信頼してくれているのかと感動する。


 書類に目を通し、必要な事を考える………。


「――今何をしているんだ?」

 声がした。

 

 誰だと考える事もなく自然に。

「軍の強化です。ミレニアムヘヴンが新兵器を開発したと情報があり…」

「おや。また戦争か。――無粋だね」

 争いは何も生み出さないのに。


「……そうですね」

 相槌。

「戦争をするのはたくさんの国があるから。――国が複数あるのは困るね」

 声に疑問を抱かない。


「…………ええ。そうです」

 ()()()()()()()


「この世界は間違っている」

「…………そうです」

「正さないとね」

「………………その通りです」

 なら、

「********ないとね」

 その言葉に続こうとしたが止まる。


『リヒト!!』

 脳内で、姉が呼んだ気がしたのだ。


「………まだ上手くいかないか。――ホントあの《剣》は余計な事を」

 さらっ

 触れる手。


「ねえ、《玉座》」

 触れられる事に抵抗はない。

 抵抗はないが、不快感が込み上げる。


 お前は、《盾》だ。《玉座》じゃない。

 俺が守ってやるよ。


 何度も姉の声が重なる。


「――《剣》はいらないよね」

「……姉さんを侮辱するな!!」

 声に逆らうな。

 声に従うべきだ。

 そんな心の声を無視してとっさに叫んでいた。


「………ホント余計な事を」

 苛立つ声。


「あの出来損ないが。――まあ、今回はここまでにしておこう」

 舌打ち。

 だが、すぐに偽善者というか嘘くさい顔をその声は纏う。


()()()()()()()()()()()

 命令。


 ばたん

 去っていく気配。


「手が止まっていたな」

 予定よりも仕事が進んでない。

 自分の手元を見て、ぼんやりしていたようだと溜息を吐く。


「俺も休みを貰おうかな」

 最近仕事がはかどらない事が多い。疲れているのだろうか。


 そんな事を思いつつ、残っている書類を見てげんなりした。








 ――まだ、自分が何をしているのか気付いてない。




 そして、それは―――――――。

フリューゲル「目を離すんじゃなかった………」

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