168話 《剣》。その未来を拒む
この作品のポイントはリヒトを闇落ちさせない事です(笑)
リヒトの言葉を聞いて、アルベルト殿下が自決する姿を見て、
(危険だ!!)
と思った。
自分の象徴名《護るために戦う剣》としての本能が黒幕を……かの王族の生き残りを滅ぼせと訴えてくる。
いつか……人からすれば長い時かもしれないが、この国に災厄を持ってくる。
――そう。|《玉座》《リヒト》がいる限りこの国を狙うだろう。
「…………」
(――この国に災いになるのなら殺せ)
リヒトを拾った時思った。
象徴は誰かがいないと生まれない存在。人が望んだから形作った。リヒトを生み出した人間はその意味を知らずに手放したが、糸は切れてなかった。
(シュトルツ……お前の言う通りになるようだ)
リヒトが《玉座》の名を持っている限り戦乱が起こる。大国ならまだいい。でも、エーヴィヒはそこまでの力はない。
大き過ぎる力は国を飲み込む。
(リヒトが災いになったら処分する)
そうその見極めが済んだ。
(リヒトは、ここから先は災厄の元凶になる……)
ならば、《護るために戦う剣》が取るべき手段は……。
「姉さん?」
リヒトの視線がこっちを向く。
小さな小さな弱い子供だった。
捨てられた記憶に縛られて委縮していた。
大きくなった。
逞しくなった。
………頼れる存在になってきた。
――それをここまで育てた。
(そう、俺が――)
殺せるわけない。
リヒトは、俺がなりたかった理想だ。
女である事。
色彩欠乏症である事。
それらが自分にとって気にしてない様に思わせていて、ずっと拘っていた。
でも、リヒトはそんな自分がなりたかった姿に成長した。
護れる力を手にしている。
見た目だけで舐められない身体つきになった。
政治にも詳しい。
内政も出来る。
ああ。自慢の弟だ。
「…………」
出来るわけ無いだろう。
「姉さん?」
「何でもない」
だから、笑う。
何でもないと不敵に。
(リヒト……)
大丈夫だ。
かの一族が接触したのは確かだ。リヒトの記憶に残ってないだろうけど……。
(民はリヒトをこの国の象徴だと認識している)
ならもっと強靱に糸を結ぶ。
(お前が自分を捨てた者達に引き摺られない様に)
俺が縛る。俺の民が縛り付ける。
だから――。
「破滅の道には進むんじゃないぞ……」
腕を掴む。
たくさんの血に染まった闇の中を歩かない様に引き留めるように――。
「姉さん。どうしたんだ。さっきから」
「何でもない。疲れただけだ」
そう。
「だから、疲れたお姉さまを労われよ~」
「そう言って、仕事を押し付けるつもりだろう。俺も忙しいんだぞ」
「バレたか」
「ただでさえ今回の事件で騒動があったんだ。姉さんも動いてもらわないと困るんだぞ」
「え~。めんど~」
「姉さん!!」
サボって仕事を押し付けるふりをして、こいつに重石を与える。
そうやって繋ぎ止めるために――。
今更な話。
《玉座》の名を持つという事は強国になる=戦乱の元凶になる。
シュトルツ達は、その未来が来る可能性が高いからフリューゲルに荷が重いと言い続けていました。
フリュ-ゲルも戦乱の元凶になるのなら処分する出来るとその当時は言っていたけど。
今は情が沸いて出来ません……。




