157話 《剣》。不安を口にする
濁点付けれると便利だな~
すべてが終わった――。
「ひどいな……」
被害はマーレとテッラの能力で最小限に抑えられた。だが、最小限であって、ゼロではない。
建物は壊れ、怪我人は出て、人は死んでいる。
カーンカーンカーン
教会の鐘が鳴り響く――。
「驚きました……」
後ろから声を掛けられる。
「時を止める能力だったなんて」
後ろから来たのはシュトルツ。
俺の居る地域で一番長く生きている象徴。
「お前でも知らないのか」
「知りませんよ……。そんな玉座の名を持つ者の能力なんて」
「……………………」
当然か。
「兄上は……」
「それは知ってました。それゆえ国が滅んだ」
「……」
「……人が求めるモノではありません。不老不死など」
辺境の地に追いやられてたから内戦の原因など耳に入ってこなかった。でも、
「そんな理由……?」
「そんな理由です。なまじ権力者の傍には私達のような不老不死と思われるが居ました。夢見てもおかしくないでしょう」
「……悪夢だけどな」
俺はまだ象徴の中では若いけど、長命な象徴は長い生に飽きている者もいる。
大切な者に置いて行かれ、すぐに追い掛けられないというのがどれだけの苦痛か分かっているのだろうか。
「なあ……シュトルツ」
振り向かない。視線はまだどこかの境界に向けられている。
「リヒトに力を使わせたくない。俺は……」
あれは、幸せになれない力だ。
不老不死の力も当初は他の国。厄介な国同士のやり取りで弱みを見せないための方法だったのだろう。だが、欲に溺れた者にしてみたらその力は自分という存在の栄華を守るための道具にされた。
「なら……その力を使わせないくらい。必要ないぐらい立派な国にしなさい」
シュトルツの声。
「シュトルツ……」
その声にどこか懺悔というか悔いの残っているのを感じて振り向く。
シュトルツはそんな雰囲気を見せて無かった。
いつもの余裕綽々の物知り顔で人をイラつかせる鉄面皮。
表情筋が崩れる時はこっちがいたずらして慌てた時だけじゃないのかと思わされる。
――兄の傍らを支え続けていたのに兄を救えなかった許せない存在。
「なあ……」
「戦争の片づけをしないといけませんね。こういうのは昔取った杵柄で私の得意芸ですからね」
お前も後悔したのか。そう尋ねようと思ったのに先に話を変えられて封じられた。
いつもそうだ。
いつも俺に恨みを抱かせ続けて、その恨みを原動力にして俺が自分の地位を押し退けるかもしれないのを高みの見物とばかりに待っている。
それが分かっているのにこいつの掌に踊らされ続ける。
「分かったよ。案内する。――マイケルもそこに居るからな」
そう。ここからはこいつの出番だ。
戦争の傷跡。それを早く解決させるための戦後処理。それを出来る存在はこいつしかいないから――。
シュトルツとフリューゲル。いろいろあって素直になれないだけの関係だったりします




