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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
大戦
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156話  《盾》。白昼夢を見る

それは未来からの警告

 暗い暗い闇の中。


 そこに自分は立っていた。


「やあ」

 声を掛けられる。

 そこに居たのは……。


「俺……?」

 玉座に座り、王冠と錫杖を手にしている自分――。


「ここに来たんだ。歓迎するよ」

 にこやかにそして、どこか恐怖を感じさせる空気を纏っている玉座の自分。


「お前は……」

「何だと思う?」

 くすくす


「分かってるはずだよ。《盾》」

「……………《玉座》」

 そう。これは。


 この自分は――。


「姉さんに拾われなかったら……俺を生んだ民が俺を認めていたら進んだはずの未来」

 そう。《盾》などという言葉が名に含まれてなかったら進むはずだった自分の可能性。


 本来の自分――。


「――本来というのはおかしいかな。その道を選んだんだからな」

「………」

「いわゆる俺は亡霊というものだよ」

「…………………………その亡霊がどうしてここに」

 亡霊なら亡霊らしくしてればいい。


 ある筈だった未来を見せられて、その未来があるという事実が、捨てられたという過去を傷として残し続ける。


「何。君のその力預かろうと思ってね」

「力……」

「そう。――《玉座》ではなく、《盾》として生きるのにはそれは邪魔だよ」

 力……?


「力とは……」

「――象徴は、象徴というだけで人には無い力がある。人が自分達の象徴であるという事は自分達にない神秘の力がある筈だと思い込みで我らに持たせる枷だ」

「枷……」

「ああ。――大きすぎる力は人を貪欲にさせ、人を……国を滅ぼす」

 玉座から手を差し伸ばすと俺から何か光が出て、彼の手に収まる。


「だから、この力は使わない方がいい」

 光を逃がさないように握って告げられる。


「その力は象徴の必要な力じゃ……」

 象徴の力。姉さんみたいに鳥と心を通わすとか。動物になれるとか……。


「――お前が《盾》として生きるには大きすぎる。お前は姉と姉が与えてくれた幸せだけでいいだろう」

 エーヴィヒという国。

 姉と二人で一つの象徴という立場。

 そこで暮らす民の笑顔。


リヒト

 彼は笑う。


フリューゲルの居る生活が幸せだろう」

 柔らかい眼差し。


「この力を求めるとこうなるよ」

 床に何かが映し出される。


 戦争の光景。

 血と火薬の臭い。

 崩れている建物。


 そして、迫ってくる敵の姿。


 そこに大怪我を負っている自分を姉さんが抱えている。

 自分も大怪我を負っているのに俺を庇おうように――。


 逃げられないと判断して、大きく息を吸う。

 そして、敵の前に近付いて、敵の一人に俺を預ける。


『嫌だ……』

 抵抗する《俺》。


 怪我を負っているので暴れるたびに苦痛が襲ってくる。


『嫌だ!! 姉さん!!』

 姉さんは敵の一つに跪く。護る者として、民を国を。そして、俺を守るための選択で、彼女は自分の命をそいつに捧げて助命嘆願をする。


 そして――。


「《玉座》は影響を与えすぎる」

 彼は告げる。


 映像は最悪の未来。


 自分と姉が引き離されるものに変化する。


「忘れるな」

 手の光を握ったまま。

「お前はいつかこの力を欲するだろう。だけど、これで幸せなど手に入らない。あるのは絶望だ」

 握り潰すように宣言――いや、予言をする。


「《盾》でありたいなら、これ以上の幸せを求めるな」

 その声を最後に《玉座》は消える。


「あの一族の執念。気を付けろ」

 闇だけが残り。そして――。




「――公」

 声が掛けられる。


(今のはなんだ⁉)

 白昼夢?


「大変です!! 公。ルーデル卿がっ⁉」

 姉さんがっ⁉

「姉さんがどうしたんだっ⁉」

 詰め寄ると、

「敵の攻撃によって死亡の可能性がありましたが……ルーデル卿に迫っていた大筒の弾が奇妙な形で空中で止まり、被害にあわなかったと……」

「奇妙な形……?」

「はい。………まるで、時が止まった様に停止したそうです」

 時が止まった様に?


『《玉座》は影響を与えすぎる』

 まさか、これが。


 象徴としての自分の力……?

 まさか……。


 もしそうなら。

(表に出してはいけない)

 それがどういう意味を持つのか危険性を気付いたからそう判断した。


時を操れたら使い方によっては無敵ですよね……。


因みに当初は、リヒトの力は不老とか治癒能力にするつもりでした

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