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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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16話  《盾》。王と対面する

久しぶりです。さぼって遅くなりました。

 途中。どこかの農村によって、また、大きな港に行き、軍船と呼ばれる物を見てから遠回りして国に帰った。


「ルーデル卿」

 帰るとすぐにね…姉さんを待っていた騎士に声を掛けられる。

「陛下がお待ちです」

「――分かった。リヒトは先に……」

「陛下はもう一人の象徴も連れて来るようにと仰せです」

 騎士の言葉に、

「そうか…」

 どこか険しい顔。


「リヒト」

 付いておいで。


 優しい声だが、どこか警戒している声。

「姉さん……?」

「――ここでの振る舞いが今後のお前の評価になる。気を付けろ」

 忠告。


 振る舞い?


 どういう事だろうと首を傾げて、姉に付いていく。


 あるお屋敷に辿り着いて勝手知ったるとばかりに中に進んでいく。

(勝手に入っていいのかな……)

 きょろきょろと辺りを見渡すが窘める者もいない。


 やがて、重厚な扉の前に立ち。

 とんとん

 ノックを二回。

「――ルーデルです」

 扉から返事はない。


 中から何か聞こえる。

 音楽?


「またか……」

 舌打ち。

 そして、


「コンラート!!」

 腹の底から出した声が響く。


 音が止む。


「どうぞ」

「失礼します」

 かちゃっ


 中に入ると、大きな机に積まれたたくさんの書類が最初に目に入る。

 ……人の姿が見えない。


「へ~い~かぁ!!」

 いや、居た。

 物陰に隠れているガタイの良いおじさんが。


「何隠れようとしているんですかねぇ~!!」

「だって、ルーデル!! 笛吹いていると怒るから……」

「仕事を溜め込んで吹いていれば怒るに決まているでしょう!! 片付いてから吹いてください!!」

 そのガタイの良いおじさん――陛下を軽々と引っ張り出して。

「お呼びと聞いたから来ましたが」

 どうしましたか。

 尋ねると、

「ああ」

 陛下は書類の方に近付きたくないとばかりに近くにあった上質なソファに腰を下ろし、

「――ノーテンが宣誓布告してきたよ」

 流石情報が早いね。


 雰囲気が変わった。


 さっきまで仕事が嫌で隠れていたガタイがいいだけで王として頼りないと思われたその人が、がらりと変貌する。


「あいつの能力は情報を得る事だ。一度出た情報は掴むのが早い」

 だからこそ厄介だ。

「王を支えた一族故。《玉座》は自分達が保護するのが至極当然と大義名分を出してきた。――あそこは王家との繋がりが深く何度か王女が降嫁している。自分達こそ《玉座》を継ぐにふさわしいと判断したんだろうな」

 あそこの女狐は。


「で、ノーテンだけじゃないだろう」

「――そうだね。その大義名分に賛同して、リンデンがノーテンと手を結んだよ」

「フルーラは?」

 あそこも動くだろう。

「今は様子見。――だが、勝ち馬に乗れると判断したら動くだろうな」


 ばさっ

 

 机の上に広げられる地図。


「リンデン。ノーテン。フルーラは不明。……まだ囲まれてないだけましか」

「それでも軍を二つに分けないといけないね」

 見つめる厳しい眼差し。


「ノーテンは文官筋だ。戦場になれてないから激戦になるのはリンデンだ」

 戦場?

「それでも味方の士気に関わるからね。君が二人居ればいいけど……」

「――無理だろう」

 俺は分身なんてできないぞ。

「ああ。そうだね。でも」

 陛下の眼がこちらに向けられる。


「おいおい。景品リヒトを戦場に出すのは筋違いだろ」

 リヒト狙いなのに、

「まあ、そうだね。馬の前にニンジンをぶら下げるようなものだね」

 それで戦争が酷くなっても困るし。


 戦争………。

 僕狙い……?


「姉さん……?」

 どういう事かと尋ねようと姉さんを見ると、

「おや、言ってなかったのかい?」

「その段階じゃないと判断したので」

「なるほどね……」

 頭上で交わされる言葉。


 そして、

「小さな象徴殿」

 声を掛けられる。

 びくっ

 それに驚いて反応してしまうと、

「堂々としていろ」

 叱咤する声。


「姉さん…」

「王と象徴は同格。ましてやお前は《玉座》であり、王の《盾》だ。王に気負とされるなな」

 厳しい声。

 だが、

「じゃあ…、どういえばいい?」

「簡単だ」

 笑う声。


「こちらが上だと見せ付けろ」

 その言葉に緊張は吹き飛んだ。

 

 そして、

「何だ。王よ」

 カッコ付けそう思ったが、その声は声が変わり前にしては堂々としている代物だった。

戦闘シーンは来年でしょうか。まあ、良いお年を。

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