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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
大戦
159/185

155話 《剣》。死を覚悟し、そして…

リヒトの象徴としての力公開。やっとだよ……

 大砲の弾はこちらに向かってくる。

 剣で空間を切り裂こうと思ったが冷静に間に合わないと感じた。


 被害が広がる――。


 そう覚悟した。

 そして、それが自分の死であるのも感じた。


 象徴は多少の怪我では壊れない。

 人の想いで具現化した生き物故にいくらでも再生可能だ。

 だが、あくまで『多少』の怪我だ。


(まいったな~)

「何冷静何だいッ⁉ このままじゃ僕らはっ!!」

 そうだな。マイクの存在をもっときちんと見せておけばこんな馬鹿な事しないだろう。


「自分のとこの象徴も殺すなんて何考えてるんだか……」

「だから、冷静にそんな事言わないでくれないかっ!!」

 そう言われてもな~。


 目の前に迫ってくる。

 部下には避難をさせるように指示したが、間に合わないだろうな……。


(リヒト……)

 あいつが居れば象徴は消えるという事はない。象徴のいない国は早晩滅ぶ。


 まあ、滅ぶ前に何とか持ち直して新しい象徴を生み出してくれればいいがそんな状態で維持できた国は少ない。


 民にとって国=象徴なのだ。


 アイツに。

(リヒトに国を任せておけばいいか)

 死ぬのを……生きる事を諦めたわけじゃないけど。最悪な事態は考えていかないといけない。

(死ぬのは怖くない)

 怖いのはその後の混乱だ。


 何度も見てきた。その終わりを招いた事もある。

 その時に起こる騒乱が、国を立て直そうとしても上手くいかない状態を何度も見てきた。


 祖国エーヴィヒが滅ぼなければいいか。


 大砲の弾を見て、出来るだけ多くの民を逃がしながら――自分は最後に逃げるつもりなのでまだそこに留まっている――その時を構えている。


「悪いな。リヒト」

 すべてを押し付けて、

「後は頼むな」

 届かないだろうがそう告げて、終わりになる。


 ――はずだった。


『嫌だ!!』

 声が届いた気がした。

『嫌だ。嫌だ。嫌だ!!』

 子どものように嫌だと抵抗する半身リヒトの声。


『貴女を………喪いたくない!!』

 祈り。いや、それは命令に近い何かだと思えた。


 執念。妄執。それに近い想い。


『……プリーメラ。象徴という存在で一番怖いのは何だと思う?』

 ふいに兄の声が甦る。

 その不安定さで子供の姿から成長しなかった兄。


『人にない力。人が、象徴という《人ではない存在なら》人にない奇跡が起こせると想像して手に入れる力。気象を操る。その存在の本質を起こせる。遠くでも話せる。いろいろあるが、一番怖いのは……』

『……人の心を誘導するものでしょうか?』

『――お前はいい子だね。違うよ』

 その時まで兄の力を知らなかった。


『人が欲しがる力というのが《玉座》だ。そう私の力は』

 

 迫ってくると思っていたその弾が奇妙に止まっている。

「何だい。あれは……?」

 信じられないとエドワードが呟く。


「…………」

「まるで、止まっているみたいだぞ!! 時が」

 エドワードの言葉に答える事は出来ない。


「……り」

 リヒトと言い掛けて口を閉ざす。誰にも聞かれてはいけない事だ。


 リヒトはやはり《玉座》なのか。


 リヒトの象徴としての人には無い力は、

(時を止めるモノか……)

 だが、その力は象徴に負担が大きい。


「悪いな」

 エドワードの剣を――儀式用で実用性は無いだろうと思ったけど、一応刃があった――借りて――無断借用という――振るう。


 護るための力。


 被害を出さないためにばらばらに切り刻む――これによってエドワードの剣も破壊してしまったが仕方ない――とその場を後にする。


 再び時が動いた時には細かい破片が少しだけ被害はあったが人死には無かった。


 そのどさくさで、これで戦争は終わるだろうと判断するとエドワードの剣を返して――いや、壊したけど――取り敢えずラサニエルの所に送り込んだ。 

ラサニエルに押し付けるフリューゲル。

剣「もともとエドワードと戦争してたのラサニエルだし」

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