15話 《剣》。すぐ訪れる戦争に備える
この作品を戦記にしたのでそろそろ戦闘を――。
鳥が飛ぶ。
「――感心しないな」
誰も居ない隙を窺っていたのに届いた声に振る向く。
「ついでにうちの国の情報を放つなんてな」
鳥には文を付けていたのがバレバレだったらしい。
「あ~あ。バレたか」
お手上げと告げると声を掛けた主――エドワードがにやにやと、
「まさか俺の目を誤魔化せるとでも」
エドワードの近くにはたくさんの妖精たち。
「いや。――全然」
切り返して笑うと、
「だよな」
お前がそんなヘマするとは思えないし。
「――うちの上司に連絡。おそらく戦争になるからな」
「リヒトか」
「ああ…」
玉座の名はそれだけの意味がある。
しかも玉座は本来所属する場所から切り離されている。
「名乗り出るだろうな。自称象徴様の生国が」
それも山のように――。
「あいつの外見もな。この地域じゃ多い姿だから余計な」
金髪。緑目。
「だよな。俺みたいな外見だったらもう少し時間も稼げただろうけど」
色素欠乏症。それなら名乗りだすのも勇気がいる。
「だから《玉座》なんだろう」
「だな」
軽口を言いながらもその頭は別の事を考えている。
「――で、謁見の場を設けるか?」
エドワードも同様。
旧友でありながらも場合によっては国と言う利権が絡む。
「ああ」
頼めるか。
上司の判断を仰がなくても恐らく上司の考えはある程度分かる。
俺がここに居るのを利用して同盟を強化するだろう。
「まあ、うちはそちらの玉座には興味持たないからな」
この地を守る事。それが一番。
「まあ、敵に回る国によっては協力してやるけどな」
「まず、ノーテン」
予想付く範囲で答える。
「シュトルツか……。確かにな」
玉座の補佐の意味を持つ象徴が居る限り《玉座》を欲するだろう。
「次は、リンデン」
「………死神か」
あそこは領土が、雪のない世界を欲している。
「ノーテンに象徴を人質に取られてるところも動くだろうな」
「ジェシカとマーレか」
エドワードの脳裏には地図が浮かんでいるだろう。
「そして、国の方針としては、ノーテンの同盟としてお前の所の天敵も動くぞ」
ぴくっ
エドワードが反応する。
「それは、お前の味方をする大義名分になりそうだな」
ふつふつと湧き上がってくる闘志。
エドワードの……イーシュラットの天敵と言われる国はかねてからイーシュラットの幻獣を盗み出そうと目論んでいる国で、常に目を光らせていた。
芸術の為とか言いながら、独占を許さないという名目で戦闘に利用しようとしているその国。
大義名分があれば叩きのめしたいと狙っていたのだ。
「今のところそれくらいかな。海上戦になればまた話が変わるだろうけど。うちに国は海無いから」
もっぱら陸地で終わるだろう。
一面が森だ。
「四面楚歌か」
「まあ、森な分戦闘にあまり不利ではないからな。あと、中立宣言している国が隣国だからそこまで悲惨じゃない」
ただ厄介なだけだ。
「防衛戦特化の恐ろしさを見せてやるだけだ」
にやりっ
余裕をもっての笑い。
………実際はそこまで余裕はない。四面楚歌で虚勢を張っているが、不安を表に出したら味方はいなくなる。
それに――。
もう、ある程度の戦略は整えている。
「……戦ベタなシュトルツに目に物を見せてやれ」
エドワードが楽しげに応援する。
「そうする」
さて、本格的に開戦になる前の準備をしようではないか。
軍国。防衛戦特化の象徴である俺の力を見せてやろうと次々と策略を練るのであった。
因みにエーヴィヒという国は北にリンデン。西にノーテン(シュトルツ)。東に森。南に幾つかの国と海の向こうにイーシュラットがある設定です。




