142話 《寄り添うもの》。客観的に状況を見る
行き詰っていた&体調崩してました。復活です
影響力の高い三国を敵に回すような宣言で、他国から孤独していく。
それがミレニアムヘブンという国の進んでいく今の状態。
「分からないですね……」
戦争に関わっていない状態であるからこそのんびりお茶を口に運んでいられる。
「烏丸」
「後ろに居るのは人です。ですが……なぜ人が」
大君に疑問を口にすると。
「……自分のためではないのではないでしょうか」
「自分のためじゃない…とは?」
大君は答えない。
扇を手にして舞いだす。
その舞いはかつて、未来のために改革を進めようとして夢半ばで終わった者が好んで舞っていた物。
大君の補佐として当時目を付けていたが、かの者自身に断られた。
『今の私では大君の傍では危険なので』
古い考えの者達に理解されずに修羅の道を進んだ男だった。
「貴方方象徴は分からないものですが……わたくし達人は自分達の先の未来に希望を紡いでいくものです」
「………」
「糸のように弱い可能性。未来を紡いで、繋げていく。よりよい世界を作るために」
「……大君」
「わたくしは子供を作りませんが、子供を作るのに似たような感覚ですかね」
大君の言葉に手が止まってしまう。
「………もし」
大君の地位にいるモノは孤独だ。
大君という呼び名は――神の妻を意味するもの。
目に見える神ではない。見えない神の妻。
だけど、真に神の妻になったのかと言われるとそれはその大君しか分からないものである。
本人の意思はそこにはなく、相性や先代の大君の指名で決められ、家族から引き離されて大君として育てられる。
僅かな例外を除いて大君には伴侶も子もいない。
「………」
何人もの大君を育ててきた。
『どうして大君なんてしたのよ!! なりたくなかったのに!!』
孤独の末。亡くなる直前に責められた事がある。
この大君も同じだろうか。
もしかしたら、なりたくなかったのかもしれない。
「――忠臣」
「はい」
「わたくしは大君である事を誇りに思っています」
「はい……」
主君の言葉。
「託し紡げるのは子孫だけではない。親子でも分かり合えないものも多くあります」
「……はい」
かの英雄の願いは実子ではなく、その部下と友人に託されたように。
「話が逸れましたね。――かの黒幕は自分のためではなく未来のために行っているのでしょう」
「未来ですか…」
「ええ。――時代にそぐわない暴挙でも後の事を考えるとそれが正義になる。そうやって紡がれるんですよ」
舞いながらの言葉。
「問題はどんな未来を紡ぎたくて行っている行為か。でしょう」
「そうですね」
「神が二柱程手助けしたくてうずうずしてます」
「神。ですか……」
「ええ。――エーヴィヒとの交流は面白い事が分かりましたね」
「………」
たんっ
扇を仕舞う。
「神は生まれた時の状況によって神地から出ようとするという事が」
くすくす
大君は笑う。
「神が味方をします。異国の神がどのようなモノか不明ですが。我が国では神が味方になる事は」
言葉を区切る。
「――正義です」
迷いのない言葉。
「その通りですね」
天都にまだ残っているエーヴィヒの兵士達。そして、神を生んだ兵士もまた残っている。
そろそろ自国に帰してもいいだろう――神と共に。
「烏丸」
「はい」
「次を見ましょう。人の想いと人の想いで生まれた象徴。そして、神というの存在。どの存在の意思が戦況を打破するのか」
想像すると面白でしょう。
くすくす
自分達に火の粉が飛ばない。その確証があるからの宣言。命令だった。
名前を出してない英雄さんは某ゲームの主人公です(笑)




