138話 《盾》。世界の動きを教わる
お久しぶりです。少し書くのが止まってました………
「ラーセロとアルコスがアルシャナの仲介で手を結んで、これによって、アルシャナは戦争に参加してないが、ミレニアムヘヴンから見れば、同じようなモノだという立場になったんだ」
地図を広げ、最新の情報を持ってくる姉の話に耳を傾ける。
「……ミレニアムヘブンは何がしたいんでしょう……」
わざわざこんな遠いところまで来て、敵を増やして。
「……新しい象徴。新しい国によくある事なんだ」
自分の地位を高めるための手段に戦争を使うものだと説明される。
「兵も遠征に出て疲弊しきっているし、食料も足りなくなっているのにそれで地位を高める為って、意味が分からないが……」
「戦争関係なしに、イーシュラットが食料を支援を迷っている、今下手に支援したら戦争は長引くからな。人道的支援も出来ないのは辛いな」
姉さんの言葉に、どういう事だと首を傾げると。
「パステルライツ……トーマスの国だけど。そこからの連絡で、南の大陸がいま食糧不足らしい」
「食糧不足って…⁉」
「まあ、パステルライツは先住民と共存共栄のおかげで先人の知恵というか南の大陸ではある期間になると食料が取れにくくなる時期があると教わったから事前にそれの対策をしていたらしいが……」
「先住民にいい印象を持たれてないミレニアムヘブンはその情報が無いという事か……」
自業自得というモノか……。
「で、ラーセロは穏便に事を済ませたいからミレニアムヘブンにわずかな部下を送り込んで中枢を封じ込める算段らしい」
「ちょっと、待って!!」
なんでそんな情報を知っているのか――そういうのは軍事機密だろうに――とか、ミレニアムヘブンに送り込んだって敵陣に突っ込ませるなんて聞けんじゃないのかといろいろ言いたい事があったが、言いたい事が多すぎて言葉が出ない。
「慌てるなよ」
冷やしたお茶を差し出されて――ちなみにこのお茶は天都からの土産である――それを口に運ぶ。
「お前からすれば危険行為だけどな。ラーセロを甘く見ない方がいい」
「ラーセロが甘くない国というのは散々分かりましたよ」
商売の国とか。海上戦に強いとか。職人が多いとか。
「あそこの一番性質が悪いのはまだ分かってないな……」
溜息一つ。
「まだあるのか……」
「ああ。――あそこで一番優秀な兵士は女性だ」
「はいっ?」
「そのまんま。――ミレニアムヘブンに侵入した部隊は女性の部隊。あそこの部隊はえげつないぞ。もう敵を仕留める為なら何でもやる。分かり易い手段として色仕掛けで同士討ちさせて内部から崩壊させるとかな」
あそこだけは敵に回したくないな。
「………」
えっと……。
「ラーセロって弱い国って印象があったんだが」
象徴の一人――マーレ――が長い事人質に出されていたのだからそんな印象を受けていたのだが……。
「弱いぞ。あそこは」
いや、そう思えないのだが……。
「いや、実際に弱い。なんて言うんだったかな……追い詰められたモノが反撃すると怖いという言葉があったような…」
「窮鼠猫を噛むというのですか」
「ああ。それそれ!! ラーセロはまさにそれ。俺は詳しくないけど、あそこは国民性で平和主義者なんだ。戦争は好まない……まあ、かつて大国だった時にいろいろやらかして弱体化したからな。だから、戦争嫌いなお国柄になって自衛以外で武器を持たなくなったからな」
象徴を差し出してもいい。それで安全を買えるなら。
そう言うお国柄だ。
姉さんに言われて、
「どんどん印象が変わる国ですね」
「いっとくが、戦争が一番弱い国はフルーラだからな」
あそこは戦争しない。勝ち戦だと判断すれば出てくるけど。
「――お前の権利を取り合った戦争あっただろう」
「ああ。あったな」
うん。俺が小さい時だ。あの時は自分の力なさが歯痒かった。
「あそこでフルーラはノーテンの味方になっていたけど結果負け戦。巷ではフルーラは味方につけるな負け戦になるって言われるほどだ」
「………」
何も言葉が浮かばない。
(今、脳内でハンカチを咥えたカシューが『酷いわ!!』と言っている姿が浮かんだんだが……)
「それでも結構地位高い気がするのだが……」
集まった時の発言力とか。
「ああ。それは……戦争以外では強いからな」
そんな話をしていたら。
ばたばたばた
廊下で走ってくる音。
「ルーデル卿!! ルーデル公!!」
「二人ともいるから象徴様でいいぞ」
ルーデル卿――姉。ルーデル公――弟が揃っているのだし。
「では、お二方」
「ラーセロがミレニアムヘブンの本部を襲撃したと情報が入りました」
その言葉に事態が急変したと感じた。
戦争しようよ……。




