136話 《盾》。戦争を見に行く
お久しぶりです……。
状況は……。
「思ったよりひどいな」
地形が変化するんじゃないのかという感じで馬鹿の一つ覚えのように軍艦から放たれる大砲の弾。
「あんな武器。レーゲンブルネンも使ってなかったよな……」
レーゲンブルネンの想像つかない進化をした武器か。それとも……。
(レーゲンブルネンが危険だと判断して表に出さなかった技術か……)
あの国の技術は表に出せない。出ない技術が多いからな。
便利な道具も使い方を誤れば危険な代物に変化する。
一番身近なもので例えれば薬だ。さじ加減一つで劇物に変貌する。
――もし、レーゲンブルネンが表に出せない技術だと判断したのならあれは人を殺す以外の用途が無いと判断したのだろう。
「ったく!!」
あんなもの作るな。
そう文句を言いたくなるのは自分は守るための存在だからだ。
守るために戦う故にひたすら奪う武器など不愉快極まりない。
――そんな自分も守るために人を殺す。ある意味矛盾しているが、最小限の被害で大勢の人を守るが犠牲はゼロには出来ない。
襲ってくる敵すら守るなんて不可能に近い。
それでも、
「無差別じゃないか……」
ミレニアムヘヴンの攻撃は一般人を巻き込んでいる。
まだ、アルコスの民ならいい。間接的に戦争をしているのだから。だが、巻き込まれたのは戦争をする気のなかったラーセロ。
ミレニアムヘヴンは虎の尾を見事に踏んづけたのだ。
「さて、どうするかな~」
戦争に参加する気はない。
だけど、このままだと被害が大きくなるだろう。
「………」
一応。最終手段として事が大きくなりそうなら阻止する役割を頼まれた。
「ホント分からないな………」
ミレニアムヘヴンは何がしたいのか。その意図が掴めない。
「――という事だけど。ど~する?」
声を掛ける。
反応は無い。
「少し反応してくれ。俺が一人でしゃべってる変な奴になりそうだろ」
隠れている方向を向いて文句を言う。
「………」
まだ反応しない。
「本気で泣きそうになるけど、出て来いよ」
そこまで隠れて俺と話したくないわけ。
「………気付いていたか?」
茂みの向こう。バイクにまたがって出てくるのは調停者としてかなり頼りにしているかの人物。
「もっと、早く出て来いよ」
気配がするのに出てこないから俺の勘が鈍ったのかと思ったからな。そう軽く落ち込んだように告げると、
「よく言う。――これ以上出てこなかったら引き摺り出そうとしていたくせに」
あっ、バレてた。
いたずらがバレた子供のように舌を出す。
守る手段は先手必勝というのもある。まあ、実際にしないが。
「――お前が出る事にするのか」
かの人物――エーリヒはさっさと本題に入ってしまう。まあ、軽口を言って遊んでいる時間もないのでちょうどいいが。
「一応ね。出れないんだろう」
レーゲンブルネンは。
確認するように声を掛けると隠れていたエーリヒは溜息を吐き。
「この地域ではレーゲンブルネンという名は武器になるが、あの小僧には通じないからな」
敵に回してはいけないレーゲンブルネン。
この地域では不文律であるが、あの餓鬼からすれば『なんだいそれ?』という反応しか返ってこないのは先回の紳地騒動の時にも感じられた事だ。
空気を読まないというか。
古い風習。約束事は破るものだと思い込んでいる節がある。
――いい迷惑だ。
「あの若造が………」
「無謀としか言えないよな」
戦争を吹っ掛けた事に関しても悪びれて無いのだろう。
戦争という手段を用いて、自分の国の立場を表に出す。知名度を上げる時によく使われる油断だが。
「周りの状況を見てないでやらかして」
先日の事もある。悪い方で名が広まるだろう。
「で、エーリヒから見てあの国はどんな国?」
「……リンデン並みに面倒な国だ」
リンデンですか。名前出すかよ。
「リンデンと潰し合ってくれればいいものを……」
「距離が離れすぎだからそれは無理だと思うけど……」
リンデンは北の大陸に一番近い。ミレニアムヘヴンは南の大陸。その二国で戦争してくれたら巻き込まれるのは必須である。
(そうなったら勘弁……)
「――で、レーゲンブルネンの技術にあったのか?」
もしあったならその対応もあるだろう。
尋ねると、エーリヒがため息を吐いて、
「あるにはある」
「っ!! なら」
「だが、その対応策も所詮攻撃でしかない」
エーリヒの言葉。
「――その手段は?」
「大砲を同じ威力の武器での破壊。――火薬武器だ」
「攻撃しかないのか……」
防ぐには――。
「だから、俺は封じたんだ」
本当はこれすら表に出すのを嫌がったからな。
エーリヒの手には銃。
「過ぎた武器は悲劇を多く生むからな」
「………」
その言葉に、全くだと頷き、
「防壁とかは無いんだ」
「……あるにはあるが、それは下準備が大変でな。今からじゃ間に合わない」
レーゲンブルネンには設置してあるが。
「じゃあ、内側に入るしかないか」
呟くとエーリヒはそうだと告げるように頷いたのだった。
この世界では、化学武器とかはエーリヒのところにしかありません。大砲もミレニアムヘヴンが使うまで無かった




