133話 《調和》。《理想郷》の説明をする
トーマスはとぼっちり
呼ばれたのはいいけど……。
「あの…⁉」
確か、エドワードさんと一緒にいる人は同じ象徴の……。
「フルーラの象徴。カシューだ」
よろしく。
あいさつをされて、
「僕は、トーマスです」
「ビアンカだ」
「トーマ。マイクの行動の真意と言うかアイツの思考が分かり難いという事なんで、お前の考えを聞かせてくれないか?」
エドワードさんが告げるので、
「――僕と同類に思わないで下さいね」
と前置きをして、席に着いてから口を開く。
「アイツ……マイクは、英雄願望で生まれた象徴です」
「英雄願望……」
「自分はもっと出来るんだ。何で正当に評価しないんだという不満をもって正当な評価を求めて新天地に向かったのが、ミレニアムヘヴンという国を作り上げたんです。で、そこで原住民を見て、彼らからすれば遅れている文化を見て、選民主義が発生したんです」
「ああ……。俺らが評価されなかったのは、俺らが彼らを導く運命があったのだと都合のいいように解釈したという事か」
面倒だなそれ。
カシューがぼやくのにエドワードも同意見だったのだろう。全くだと相槌を打つ。
それに巻き込まれてないからそんな呟き程度だが、巻き込まれた僕とビアンカはそんな言葉だけでは片付けられない。
「選民主義。指導も必要だという判断が、我ら元々の民を差別。迫害。元々の文化を破壊という強硬手段に出て」
「それで、ミレニアムヘヴン。パステルライツとの間に戦争が起きて……」
「我らが勝った」
エドワードさんとカシューさんに僕とビアンカが交互に説明する。
「で、負けたけど、英雄願望という夢から目を覚まさないで、次にしたのは」
「神地って事か……」
引き篭もっている国を出してあげる。囚われの姫君を助け出す英雄忌憚によくありそうな話だ。
ただし、
「神地に伝わる神話に、自ら岩屋に入ってしまい出ようとしなかった神の話があるんだけどな」
――囚われていると思われているが本当は自ら中に入って、外から来る恐ろしいモノから隠れていた。自分をも持ってくれそうな番犬も用意して。
エドワードが神地の象徴に対して思うのは、抜け目なさ。囚われの姫君ではない強かさを持っている。そんな感想だ。
「トーマスが言ったマイケルという象徴の考えなら………アルコスに戦争を仕掛けるのは囚われていた姫君の目を覚まさせるって事か」
姫君……ふてぶてしい姫だけどな。
「あ~」
やっぱりそうなんですね。
そんな気がしてた。
マイケルはどんな幻想を抱いたのか分からないけど。神地の象徴は綺麗な顔立ちの割に何と言うか……。
「一筋縄ではいかない感じだったな」
ビアンカの言葉に。
「そう。そんな感じですね」
僕もそう思いました。
「アイツの目は節穴と前から思ったが、ここまで認識がずれると心配だ」
巻き込まれないかと。
「うん……」
アルコスの象徴がどんな人か分からないけど。誤爆されたら嫌だな。
「そこら辺は安心しろ。アルコスはやるなら徹底的に当事国だけ狙う。どちらかと言えば早速マイケルがやらかした方が心配だ」
「もうやったの⁉」
「早さ重視と言って正確性が無いからな」
エドワードの言葉に胃がきりきり痛んでくる。そんな僕の背中を擦ってくれるビアンカにどうせなら胸を摩ってくれる方がありがたいかなと思いつつ、聞きたくないけど、聞かないといけない内容を促す。
「怒らせたらいけない国に誤爆して、そこの国の関係国も動き出しそうなんだ」
「………」
エドワードの言葉に胃がますます痛くなる。そんな自分を慰めるようにカシューが差し出したミルクが涙が出るほど美味しかった。
ミレニアムヘヴン。
厨二病患者がうようよいる(むしろそういう奴やしかいない)国




