132話 《芸術》。《約束》を呼び出す
主人公は出ません
『アルコスとの戦争に我が国は関係ないはず。それなのに我が国の攻撃をした事に対しての真意を問いたい』
ラーセロの意見はミレニアムヘヴンに即刻届けられた。
『えっ⁉ 当たったのかい? 運が悪いんだぞ!!』
それに対しての返事はその一言。
お詫びの言葉も。責任を取るもなく。ただそれだけ。
そう。かの国はラーセロを舐めているという考えに政府は一致して、
『我が国は先刻の攻撃を敵意ある行動と判断のもと。宣戦布告を伝える。我らが欲しいのは謝罪であり、それ相応のお詫びである。その当然の行いのない国を責める大義は我等にある』
そんな一文が各国に届けられた。
オルゴ-ルの音が物静かな雰囲気をかもち出す。
こぽぽぽっ
コーヒーを淹れる老齢な店主の熟練の技。
店内に広がる香ばしい香りは木の柱に浸み込んでいるような錯覚を覚える様な物静かな雰囲気。
だが、その店の雰囲気にそぐわない客が二人。他の客の目に入らないような奥のテーブルで不穏な話をしている。
「広がるな……」
厄介だ。
「エドワード。お前の弟だろ。何とかならないの?」
フルーラの象徴――カシューがイーシュラットの象徴――エドワードに尋ねる。
「アイツ……俺の言う事聞かないんだ。聞いてたら神地の騒動も起きなかっただろう」
溜息混じりの言葉。
ここはフルーラの定食屋。
老舗のその店はカシューが国の仕事で疲れた時に一息つける場所としてよく来ているお気に入りの店で一人で静かにしたい時、仲のいい友人達とよく気軽な話をする時に集まっていたが、
(これは気軽な話じゃないな……)
やだやだ。堅苦しい話をしているとご飯が不味くなる。
せっかくの数少ないくつろげる空間なのに――。
それでも、ここで話をするのを決めたのはおそらく自分の他によく行くところは有利な情報を得たい密偵が出入りしていると予想が付いたからである。
あ~あ。また、お気に入りを探さないとな~。
出来た当初から出入りしていて、店主は代替わりしてきたけど、その雰囲気は変わらないからこそ気に入っていたのに。
「後継人を名乗るのならそれくらいさせないと……。あ~ヤダヤダ」
戦争になるのは。
「ってか、あの国は何がしたいの? 大義も何もないけど」
ラーセロを敵に回すとか、何考えてるのやら。
「アイツも懲りないよな。神地騒動の時にお仕置きしたのはマーレとフリューゲルなんだからその二人……の国は敵に回さない方がいいと学習しないのか」
客観的な意見を聞こうと思ってここに連れてきたのに、エドワードも自分と同じ考えなので参考にならない。
あの大義無しな国の考えが分かる立場の意見を聞きたいと思ったのに――。
「人選間違えた……」
つい呟くと。
「――いや」
間違ってないぞ。
紅茶の香りを楽しみながらエドワードが告げる。
「えっ⁉」
「分かりそうな奴を呼んだからな」
エドワードが告げるが、分かりそうな奴……。
「そんなの居るの?」
アイツかなりぶっ飛んでいるけど。
「……それは、俺の考えもぶっ飛んでいると言いたいのか?」
俺を参考にしようと思ったという段階で。
エドワードが問い掛けてくる姿に。
「ハハッ。何の事だろうね。おに~さん分かんな~い(/ω\)」
と、ふざけて誤魔化そうとしたが誤魔化せなかった。
「殴っていいか? というか殴る」
それ宣言だよね。店の迷惑になるから止めて欲しいけど。ってか。
「痛い」
頭の上に拳骨を落とされる。
「いつもより加減はした」
まあ、いつもより痛くないけど。
「……珍しいね。その程度に抑えるなんて」
雨でも降るんじゃない? ああ。雨降らすなら農村地域にお願いね。
「手を抜かなければ良かったな。――ここはお前のお気に入りだろう」
一応、気を使ってくれたらしい。
「そんな事されたら惚れちゃいそ~♡」
「手を抜かない方が良かったな……」
うん。そんなごみを見る目は止めて欲しいな。ぞくぞくしちゃうから。
あっ、エドワードが鳥肌立ててる。面白~い。
「何してるんですか? エドワードさん」
からんころ~ん
店に新しい客が来たと思ったらそこにはトーマスとビアンカの姿。
「知ってそうなのって…この二人?」
「ああ。――あいつに振り回されているからな。わざわざ悪いな」
まあ、ここに座れと声を掛けたので、俺の許可なく勝手な事言うな~と思ったが、まあ反対する理由もないので好きにさせてた。
マイケルの保護者の意見を聞こう




