131話 《盾》。恐怖する
運命は動き出す
姉さんはシュトルツのところに行くと言っていたが、いったいどうしたっていうのだろうか……。
「シュトルツからの情報は既にあるのに」
意味が分からないとため息を吐くが、人の話を聞かないところもあったからなと納得する。
「そうだ。マーレ」
姉さんの勘が正しければマーレの……ラーセロの被害は酷いだろう。
「マーレ……ラーセロに連絡を」
部下に命令して、すぐに連絡をする。
最近。電話というものが出来たので――まだ一部しか連絡は通じないが――連絡はとりやすい。
『もぅ~。最悪~』
大丈夫か? そう問い掛けようとしたが。
マーレの第一声はそれだった。
『卸す予定だったガラス製品も割れて大損害だけど、それよりも職人が数人亡くなって大変なんだよ~。中には特殊な加工を引き継いでいるのはその人しかいないというのもあってさ~』
伝統って途絶えると再現が難しいんだよ!!
マーレは怒っていた。
「そうか」
良く分からないが――そもそも伝統というものがまだ育ってない――取り敢えず相槌を打っておく。
『でね。ラーセロは……僕のところの王がね。宣言したよ』
「宣言?」
『そう。――ラーセロの宝である職人の命を奪う事に対して責任を追及するってね。元凶……ミレニアムヘヴンにね』
「そうか……」
返答次第でどう転ぶか分からない。
もしかしたらラーセロも参戦という事に……。
「世界を巻き込んでの戦いか………」
『そんなのしたくないけどね。僕らにも譲れない一線がある』
「………」
こんなきっぱり告げるマーレの声を聴くと最初にあった時のヘタレが嘘のように思える。
(キャラぶれしてないか?)
『失礼な事思ってるみたいだけど……僕はね。僕らが我慢すれば穏便に済むのならいくらでも我慢する。それがかつての大国であった時の滅亡を繰り返したくないという民の内なる願い。だけど、我慢しすぎだからって舐められるの事は些か許せない。特に相手は海から攻撃した』
海は僕の領域だ。
「マーレ」
『でもね。分も弁えてるんだ』
「弁えてる……?」
『そう』
マーレの言葉が途切れる。
『最悪な場合。フリューゲルの力を借りる。ヒメルには悪いけど、防衛特化の能力を持っている彼女が戦場に来てくれたら自体は早めに片付くから』
それは……。
「それは、エーヴィヒも戦争に参入させるという事か?」
尋ねる。
戦争はしないと今回はうちの国の方針だ。
『参入かも知れない。それとも、エーリヒの…レーゲンブルネンの役割を求めるかもしれない。まあ、それもイーシュラットがかの国を諫めてくれれば参入前に解決するけど』
期待できないからね。
「マーレ。その……」
姉さんはどうしても出さないといけないのか。
そう尋ねようとした。だけど、マーレはそれを。
『不安だよ。正直。――それでエーヴィヒが力を付ける事になるし、発言力も増す。大国……強国になるという事は今回の件が片付いても僕は、君たちを恐れる事になる』
「………」
マーレは俺が…エーヴィヒが力を付けていいのかと聞いたと勘違いしたのだろう。そう答える。だが、俺はそんな事思ってもいなかった。
強国……。
ふと自分の名を浮かべる。
《戦う玉座の盾》
普段意識しないが、その名は強国になると言われてきた。
(運命なんて信じないが、この流れはまるで)
強国になれと何かに言われているような気がして。
『ヒメル?』
恐怖した。
何か=作者(笑)




