129話 《剣》。始まりに気付く
戦争は始まったけど、まだ当事者ではないから落ち着いてます。
今の状況。
その対応。
それらを聞いて、不足分だと俺が感じて動き出している時だった。
ばさばさばさっ
鳥の羽ばたく音が耳に届く。
「――動いたな」
「姉さん?」
窓から外を見る。
エーヴィヒは被害は無い様だが、あくまでエーヴィヒは。だ。
「リヒト」
「――はい」
返事はしたが俺の言いたい事は分からなかったのだろう。顔をこちらに向けてくる。
「近隣の国に連絡を取れ。そうだな……マーレちゃんとカナリアかな」
杞憂で済めばいいが、鳥の動き。それに何となくという勘で、危険信号を感じる。
「姉さん……それって」
戦争をすると宣言しているのはラサニエルの国。アルコス。
そして、アルコスの隣は、カナリアの国アルシャナ。マーレとテッラの国ラーセロ。
「ミレニアムヘヴンはそこまで愚かじゃなきゃいいが……」
俺の勘が外れてくれればいい。そう思った。だけど、
「失礼しますっ!!」
非常事態なのか返事を待たずに入ってくるのは諜報専門の兵。
「ラーセロから緊急連絡。ミレニアムヘヴンが海から大砲を撃ち、それがアルコス寄りの自国に被弾。被害は甚大との事です」
「…………アルコス寄り。それはテッラの方か」
ラーセロは特殊な国の形をしている。
アルシャナ寄りは海。
アルコス寄りは陸地。
長細い形をしていて、それで接している国が多く。その均衡に常に振り回されていた。
ある意味かつての強国の名残と言えるだろう。
「姉さん……」
「ラーセロは黙ってないだろうな」
「………」
あそこは戦争が苦手だと公言している。だけど、
「海からの攻撃という事は軍船で来ているんだろうな」
「ですね。――陸地からの攻撃は届かない」
「………」
戦争が起きるという事態になったので至る所にエーヴィヒが掴んでいるだけの地図が置いてある。地図には機密性があるので正確性が乏しいが、それでも大まかな状況を判断するにはうってつけだ。
地図に触れる。
海。そして、ラーセロの国境。
「海では、マーレが強い。というか。ラーセロは強国だ。それに商業に関しても大きな影響がある」
「………」
「しかも、テッラの方と言われている陸地は職人が多いんだ」
「職人……」
そうなのか。少し信じられないという感じで呟くので、そんな事知らなかったのかと首を傾げる。
あっ、もしかして。
「――リヒト」
「はい!!」
「マーレが実は優秀なのは知っていたけど、テッラの事は勉強不足だったか?」
「はい……すみません。後、姉さんがマーレを呼び捨てにするの意外で……」
「時と場合を選ぶぞ。俺も。じゃなくて、テッラの居る地域は農作物と芸術品が多い。というか、テッラのところで作った染め物をカシューが服として加工するんだ。普段着はあそこの制作したものだぞ」
軍服とかは機密情報があるから無理だけど。普段着として丈夫だし、虫に襲われにくい。
「すみません……」
「まあ、いい」
リヒトを叱るのは後だ。
「………」
「姉さん?」
「……シュトルツのところに行ってくる」
ここまで来たらアイツに確認しないとな……。
「なんで、わざわざ?」
「いろいろあるからな……」
ため息交じりに告げた。
マーレ。人質に行っていたけど、結構境遇が良かったのでぬくぬくしていた。
テッラ。残されていたけど、その間国を維持していたので苦労性。(その間に当時放浪中だったフリューゲルを雇っていた)




