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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
大戦
129/185

127話  《剣》。片割れと再会する

ようやく会いました。

 エーヴィヒに入り、その首都――というほど立派じゃないが――に入るとその気配を感じた。

 慣れない軍の訓練を指導氏――見た目の割に文官なのだ――ている姿を見て微笑ましさと逞しさをでしみじみしてから。


 その姿を見けて走り出す。

「リヒト~♡」

 その大きな背中に抱き付く。


「……姉さん」

 抱き付かれて困っているというか呆れているというか……顔が赤い?

「急に抱き付くなっと何回言えばっ!!」

 リヒトがお説教してこようとするけど。

「大きくなったな。俺がいない間に」

 話をごまかすというかすり替える。いや、そんな感想を抱いたのも事実だが。


「そうか…」

 ほらすり替えられた。

「自分じゃ自覚ないんだが……」

「そうか? 筋肉がついてるぞ。ほら」

 俺の腕と並べる。

「太さが全然違うだろ」

 服をめくって見せるとリヒトが顔を赤らめる。

「リヒト?」

 どうした?

「いえ……。姉さん」

「なんだ?」

「姉さんはもう少し慎みとか……嗜みを持ってく欲しいのだが」

「俺に期待するなよ」

 これでも軍国の象徴だぞ。

「そんなの身に着けてもな……」

 確かに計略とかに使えるけど。


「姉さんって、やればできる象徴ひとだって事は知っているんだが、本人がする気が無いからな……」

 礼節とか知らないと馬鹿にした象徴がコテンパにされたのを見た事あったし……。

 そう昔話をしてきて。

「そういや、そんな事あったな」

 そいつもいつの間にか消えていたな。まあ、象徴は民によってあっさり消えるのもあるし。


 そんな俺らの姿をくすくすと楽しげに見ている古参の兵士達。

 そんな姿に目を白黒させている新兵達。

 見事に二極化したなと面白がりつつ、

「少しリヒト……ヒメルを借りるぞ」

 その俺の声にリヒトは、

「しまった……」

 人目がある時に姉さん呼びするのが恥ずかしいと最近姉貴呼びしてたのにそれを忘れていたと焦っている。

 ああ。悪い事したなと内心謝りつつ、

「よろしいですよ。ルーデル卿。ルーデル公」

 古参の指導していた兵士が告げる。

「ああ。――ルーデル卿」

「なんだ?」

「お帰りなさい」

 部下の言葉に、他の兵も続く。

「「「お帰りなさいませ。ルーデル卿」」」 

 野太い声に笑い。

「ああ。ただいま」

 と、返事を返して、リヒトを引っ張って、建物の中に入る。

「姉さん。俺のも威厳というものがあって…」

「悪かったな」

 お前の威厳形無しにしてしまったな。

 謝る。


 その間にも女官達とすれ違って、会釈だけの者もいれば、『お帰りなさいませ』と告げてくる者もいる。

古参と新入りの違いがはっきり見て取れる。


「俺の留守中頑張っていたんだな」

 城の様子を見ればわかる。平和だった証明だ。

 平和だからこそ、新しい人をそ当てる余裕があり、細かい事に気を配れる。

「偉かったな」

 頭を撫でる。

「子ども扱いはいい加減やめて下さい!!」

 リヒトが恥ずかしいやら怒れるやらで文句を言ってくる。それに可愛いなと思いつつ、いつまでもこのままじゃらちが明かないので。


「――それにしても」

 話題を変える。

 俺の顔と空気から仕事に関係する内容だと感じてリヒトの表情も険しいものになる。

「怖い顔するな。――場合によっては民を怯えさせ、不安にさせる」

 いくら不利な状況。危険な時でも笑みを絶やすな。象徴が笑っていれば大丈夫だと安心感を出せ。

 そう告げて、不敵に笑うが、

「姉さん……。目が笑ってませんよ」

「んっ? そうか」

 それは悪いな。


「アルコスもミレニアムヘヴンも面倒な事してくれて……」

 避けられない戦争だけど。出来れば回避してもらいたかった。

「面倒。ですか」

「ああ。場所が広すぎる。かなり距離があるから近隣諸国が巻き込まれる」

 海を隔てているから海に隣接している国々が巻き込まれるのは必須だろう。


「海と言うと……アルシャナ。ラーセロ。イーシュラットとかですか?」

 カナリアのアルシャナ。マーレとテッラのラーセロ。エドワードのイーシュラット。それらの名が挙げられて、

「勉強不足だな」

 90点だ。

 鼻で笑う。


「カシューの国。フルーラも若干海に近い。関係ないのはリンデン。ノーテン。エーヴィヒ(おれら)。そして、レーゲンブルネン」

「リンデンも海に面してないんだったか?」

「あそこの国は戦争ばっかでその都度国土の形が変わるから何とも言えないけど面していても北の方だ」

 距離があるから北の大陸は動かないしな。


「………」

「姉さん?」

 急に黙った俺を心配そうに声を掛ける。

「ラサニエルも悪手を打ったな」

「姉さん?」

 執務室に入る。

 そこにはこの大陸の地図しかない(それでも正確ではない)。


「この大陸間の戦争ならレーゲンブルネンを巻き込める。だけど、今回はレーゲンブルネンは出てこない」

「………」

 あっちの地図も欲しいな。説明が大変だ。


「戦争の落としどころが見つからないだ」

「………」

 今回の戦争。もしかしたら……。

「かつてない規模の戦争になるんだろうな……」

 と呟いた。




弟「……これは姉さん。これは姉さん(ぶつぶつ)」

姉「?(分かってない)」

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