123話 《盾》。王の変化に戸惑う
帰還命令に驚いてます
その人の帰還命令を出した――。
その発言に信じられないと目を見開く。
「ルーデルにそう反応されるとは思ってなかったな。――私とて、一国の王だ。国のためになら個人的な感情は捨てる」
陛下の冷静な言葉に、そう冷静なのだ。
「失礼しました!!」
慌てて、謝罪する。
だが、謝罪しても信じられない。
(陛下が……姉さんを呼び戻すなんて……)
あんなに毛嫌いしていたのに。
姉さんの力を頼りたくないというのがありありとあったのに――。
「――あれは他国に対しての牽制的意味でも必要だと認識しただけだ」
なんか遠回しな言い方だな。
「陛下……?」
「別にアイツを見直したとかそういう事ではない!!」
(こういうのって、なんていうんだったか……確か…ツン何とか)
詳しい事は分からないが、庶民向けの本にそういうのがあった気がする……。
本を読むが、最近は忙しすぎて読む暇が無くて――姉さんが居ないから忙しさが倍以上になったのだ。つくづく姉さんの仕事量が多かったのだと思わされる。もう少し分担してくればよかったものの。いや、それは戻ってから言えばいいだろう――きちんと内容を覚えて無いが。
「なんか、変な事考えてないか?」
「いえ……」
思い出せない事だし、それを口にしたら不機嫌になりそうだから言わないでおこう。
「帰国命令を出したが、ここから距離もある。帰ってくるのに時間が掛かるだろう」
「………」
その間。事態が急変しないといいが。
陛下の不安はもっともだ。
(それを口に出してくれるようになっただけ、肩の力が抜けたのだろうな……)
先代の見る目を疑ったが、こうやってみると、
(名君になる素質はあったんだな……)
当初は……ってか、姉さんに妙にこだわっていたところを見ていたらそんな事思わなかったが。
それにしても……。
姉さん……フリューゲル・プリ―メラ・ルーデルの名前は他国に対して抑止力になる。
防衛特化の象徴。
姉さんが居れば、エーヴィヒを攻めても無駄足になる。
姉さんがいる限り侵略しようとしても返り討ちになる。
それだけの力があるのだ。だから、王と不仲という噂だけで隣国は色めき立って――それでも実行しない――動こうとしたのだ――その恩恵を分かってない者が内乱を起こそうとしていたけど……。
「アルコスは我が国を巻き込む気満々でした……」
「そうだろうな。いま、神地に対して一番影響があるのは我が国だ」
ミレニアムヘヴン――マイケル・カ-ペンタ―の国は、自分達が一番神地と有利な関係を結ぼうとしたのだが――その手段は脅しに過ぎないが――いろいろと手違いがあって――それで成功すると思っている方がおかしいのだが――神地の一つである天都は我が国と同盟を結んだ。
それに不満があるのは当然だが、それを正面切って言い出すので、もともと一番有効があったアルコスは当然怒ったのだが。
「アルコスからしたら我が国も不愉快な対象でしょう……」
今はミレニアムヘヴンと言うちょうどいい。八つ当たり対象があるからいいが、いつ攻撃してくるか分からない。
まあ、アルコスは愚かではないので我が国を巻き込んで起こる他国との騒動を心配して動かないだろうが……。
「面倒ですね」
最悪の事態を考えて手回ししないといけないなんて……。
「全くだ。だが――」
「外聞を気にして動かないと後々の国交に影響が出ますからね」
手回しをしてきますと告げて陛下の前から後にする。
姉さんが戻ってくるまで事態が動かなければいいが――。
「無理だろうな……」
廊下を出て、窓の外を見る。
木漏れ日の下で遊んでいる子供達。
その子供達の様子を微笑ましげに見つめ、裁縫などの内職に精を出す女性達。
平和な光景。
守らないといけない世界。
「………」
その光景を見て、戦火を未然に食い止める決意をした。
どこぞの王「べっ…別に彼女を必要だと思ったわけじゃないんだからなっ!!」




