122話 《剣》。国を案じる
信じてはいる。だが、不安……
情報が無いと予想も出来ないからな……。
かなり時間差で届く情報を耳にしながらいつもと変わらない訓練の日々。
使えないと思った部下がだいぶましになって――第三者からすればこいつ人間というレベルに仕上がっているがフリューゲルからすればまだまだだと思っている――。
「歯がゆいな……」
「――それでも動かないんですね」
縁側に腰を下ろして、じっとしていたらお茶を運びながら烏丸が声掛けてくる。
「命令が出てないからな」
振り返りながら返事をする。
それに――。
「動いてすぐに向かえる場所ならともかく。天都から自国は遠いからな」
焦るな。
自分に言い聞かせている。
焦るな。
国が戦争を起こすのではない。近隣の国が戦争をするだけだ。
「……………」
王は優秀だ。
戦いには向かないが、戦争に突入する前なら信頼できる。
俺の事を毛嫌いしているが、国に対しての判断力はきちんと持っている方だ。
「強いですね」
ぼそっ
烏丸が呟く。
「強い?」
「ええ。――信頼して、ただ見守る。いうのは簡単ですが、実行するんは大変なんですよ。時間が無いから焦って先にしてしまったり、もう少し見守ればいいのにと言うところに心配になって手を伸ばしてしまったり」
分かっているんですけどね。
苦笑。
「そんなに強くないさ」
手を出した方が早いよなと思って手を出してしまうし。相手に過度な期待をしてしまう。
「それなら、烏丸の方がすごいだろう」
「私が、ですか?」
「ああ。――王を育てるなんて俺には出来ないからな」
告げると、
「そんな事ありませんよ。王というか国を治める者は大なり小なり象徴の影響で育ちます。私は特にそれが目立つだけで……兵を見れば貴女の育てているのが分かりますし」
「………だといいけどな」
今の王とはいろいろと気が合わないからな。
「ふふっ」
「何がおかしい?」
「いえ、可愛らしいじゃないですか。象徴に敵わない劣等感。ただの反抗期だと捉えれば」
「……………」
そんな簡単な事とは思えないけど。
「似たようなものですよ。私は大概女性が君主に……大君になりますが、男性が就く時は少し荒れますよ」
男もあるのか女帝国家だと思っていたが。
「それに……」
「それに」
「そろそろ。来ますよ」
連絡が。
その言葉通り数日後。
帰還命令が下された――。
そろそろ合流させたいです。




