120話 《盾》。戦争に巻き込まれかける
お帰り主人公
「大陸が違うんだっ!! ばかすか戦争したら迷惑だって言ってんだよっ!!」
エドワードがラサニエルに文句を言う。
「――同意見や。不本意やけど。オマイらが戦争してみん。海に面しているわいらの国はもろ影響でるわ」
カナリアもエドワードの意見に後押しをする。
「――そうだな。この大陸間ならひどくなる前に調停者に動いてもらえるが、海挟んでの事じゃエーリヒは動かせないんだぞ」
カシューの意見。
「だからって!! あの若造な気ままな行いを放っておくのか!!」
ラサニエルはかなり怒っている。
「ごめんね。おにーちゃん。神地の権利をうちらの国が握っていたのを手放したのが痛かったみたいで」
エリーゼが近くにいた女性の象徴達にこそっと説明する。
「エリーゼ!!」
「はいはい。――でも、実際。ミレニアムヘヴンだっけ。あの国は勝手すぎるよ」
うちらの国だけじゃないんじゃないの?
エリーゼの問い掛けに……。
「あのね……」
マーレが恐る恐る手を上げて意見を述べる。
「先日。僕らの国で犯罪犯した集団がミレニアムヘヴンに逃げたんだ」
「ああ。俺らの国って、商業と文化遺産で観光客が多くてな。観光客狙いの詐欺をしてくれている集団でようやく捕らえられると思った矢先にミレニアムヘヴンに逃げられてな」
「酷いんだよ!! 僕らの国の犯罪者だから渡してと言っても。マイケルから『移民を求められたんだぞ。渡す必要は感じないんだぞ』なんて言われてさ」
怒り心頭とばかりにテッラとマーレが告げる。
「そういう事からも踏まえて、あの国をそのままにしておくわけにはいかんだろ。――現に今だって、神地が交流を始めたのは自分の手柄のはずなのにどうして自分と国交を開かないんだと言い出しているしな」
あのままにしておくわけにはいかないだろう。
ラサニエルの言葉。
「他人事の様に聞いているけどな。お前も当事者なんだぞ」
ラサニエルの視線がこちらに向けられる。
「戦争になったら巻き込まれるんだぞ。ルーデル!!」
「……………」
ラサニエルの矛先がこちらに向けられる。
ルーデルと呼ばれて、新鮮な気持ちになってしまう。
そこでルーデルと呼ばれるのは大概姉さんだったからな。
「――攻められるというのか」
あくまで静かに落ち着きを払って、
「侵略を許すと思うか防衛特化国で」
ここで、ラサニエルに同意しては戦争に巻き込まれる。
防衛はしても攻撃に回らない。それが、エーヴィヒの在り様。
「今神地の利権はお前のところが握っているのにぬけぬけというな」
「利権じゃなくて、同盟です。――我が国と天都は同盟関係なので」
一方的に甘い汁を啜る様な関係ではありません。それとも……。
「神地と唯一交流のある国という名のもと甘い汁でも啜ってましたか?」
その問いかけにラサニエルの返答が、
「ぐっ⁉」
…………図星だったようだ。
「巻き込まれたなら歓迎しましょう。我が国ならではの方法で。ですが、我が国は自ら攻めません」
戦争なんて、民の生活が失われる。
ようやく豊かになってきたのだ。
四方を森に囲まれているが貧しい土地。作物は民が生活する分ギリギリしか取れずに輸入に頼っている。そんな国が少しずつ、豊かになってきたのが目に見えてきたのだ。
植物を見て、食べれるか食べれないかで判断していた生活。冬に備えて、牛や豚を加工していき春に新しい牛を購入する。そんな日々。
文明が育ちだして、独自の製品が出来てきた。生活に余裕が出来てきたのを守るのが当然だろう。
姉さんが外からの敵から守る剣なら俺は生活を守る盾になる。
「防衛特化と言っても守ってばかりで」
「そちらは、俺の姉の能力を疑うんですか?」
人の姉をバカにするのかと言外で告げる。
「戦争するのなら勝手にしてください。――我が国は味方になりませんので」
そう返して、話は終わりだと告げる。
その姿にラサニエルは舌打ちするが、それ以上何も言いださないかった。
ラサニエルさんは今回の騒動にエーヴィヒを巻き込む気満々でした




