119話 《調和》。未だに起こる騒動に頭を悩ませる
現在に戻ってのお話の続き。
「あの時の経験を学んでくれたかね?」
「……学んでないだろう。ここまで空気を読まない行動するからな」
「だよね」
ミレニアムヘヴンが戦争をするというのを聞いて……いや、ミレニアムヘヴンが神地と呼ばれる地域の封印を破壊したというのを聞いた時から。
ああ。こいつ学んでないな……。
という感想を抱いた。
「あんなに教えたと思ったのにねぇ~」
「仕方ないだろう。未だに分かってないのだから」
ビアンカがため息を吐く。
「――先日。自生させて育てていた薬草を雑草だと思って芝刈り機で刈ってくれてな……」
「……………ああ」
被害が大きかっただろうな。
「薬草と言う事は、ケイシェル・マンカ族かな」
「そう。あそこでしか育たない薬草が全滅」
「あそこでしか………じゃあ、今年の冬に肺炎が広がったら大変な事になるね」
「ああ。いまのところ貯蔵庫に去年の分があるから多少は大丈夫だろうが……」
マイケル……。
戦争の後。マイケルは原住民の事を見下さなくなった。
……見下さなくなったのはいいが。マイケルは自分が悪い事をしたつもりはいまだになく――まあ、文化の違いだろうからと大目に見てくれているが――祭祀と呼ばれる象徴達と交流を深めないといけないと考えて、彼らの手伝いを――しかも一方的に――し出した。
それがいろいろ酷くて………。
気に実っている果物が美味しくないから捨てたと告げ――腐ってから採れる種が肉を保存させる為の香辛料になるのだ。
道が舗装されてないから通りにくいのだと舗装して――とある種族の成人の儀式で、危険な険しい道を仲間と協力して超える事に意味があるのだ。
臭いが臭いから掃除をして捨てておいたと告げて――染め物の材料で、その匂いが獣除けの効果があったのだ。
などなどやってくれて、まるで、親切なふりをして文明を破壊させようとしていないのかと疑ってしまいそうな事を平気でしてくれる。
勝手に入らないと散々告げているのだが、鍵も掛けないのに入っていけないなんて思っていないのだと言われた時には同じ言葉を話しているはずなのに、別の言葉を話しているのかと考えてしまうほどだった。
(マイクの言を借りると鍵を掛けていたのにその鍵を壊すしな)
神地の事である。
あそこは鍵をしっかり掛けていたのにその鍵をまさか壊すとは思わなかった。
引き篭もっているから出してあげたんだぞと自慢げに行ってきたが、最小限にでも交流はしていたんだろうと言いたくなった。
「まあ、それはともかく……」
海の向こうとの戦争だ。
戦争に協力しないと告げたが、巻き込まれる可能性は高い。
「祭祀の皆さんに相談しないと……」
パステルライツはあとから来た住民と元々の民と協力して生まれた国だ。外交に関しては自分とビアンカが表に出るが緊急の場合は話し合いで決める。
「その事だが……」
「ビアンカさん?」
がやがや
外が騒がしい……。
「先に連絡した。――トーマの事だ直接会いに行って話をするだろうからとそれなら出向いた方が早いとおっしゃられてな……」
「………」
うん。そのつもりだった。
だったけど……。
「来られたんですね」
この外の騒ぎは。
「ああ」
「……気持ちは嬉しいんですけどね」
若輩者の自分が出向くのが普通だと思うんですけど……。
「あの方達にしてみれば孫のような感覚なんだろう。――甘えてやれ」
「そうします……」
力なく。そう告げるのが精いっぱいだった。
次回から主人公達帰ってきます




