118話 《調和》。戦いを終わらせる
トーマスを生み出した民が元元々その手の事に強かった……
「なんだ……これは……」
信じられないとマイケルが呟くのが耳に届く。
ミレニアムヘヴンの本陣は火が回っていた。
なんてことない、パステルライツが敵を迎えている間に別動隊が動いて火を掛けたのだ。
「………」
人が焼ける臭いが風邪から漂って来て気分が悪くなるが、これも自分が引き起こした事。
………目を逸らす事はしない。
「どういう事なんだいッ⁉ 戦っていたのは俺らだろう!!」
なんで、本陣が狙われるんだと信じられないと詰め寄ってくるが、
「――勘違いしてない」
血を流すのは現場だけだと。
「ここは戦場だ。そして、兵を倒すよりも」
自嘲気に笑う。
「――頭を叩いた方が決着が速くなる」
その方が被害が少ない。
そうそのために動いてもらった。
別に手段はどれでも良かった。
川の近くだったら水攻め。
山の下であったら土砂を落として埋めていくつもりだったし。
投石でも。何でも良く。たまたま火が向いていただけだ。
どれを選んでも後の被害は酷いので、その対応策も考えないといけないのでそれも作戦に組み込んである。
頭を――指令系統が潰れれば、戦争は長引かない。その為に敢えて、前線に居る司令官は潰さない。
命令系統がめちゃくちゃになってしまっては戦争なんて続けられないだろう。――全滅を考えずに全軍突撃などという命令を下す馬鹿ではない限り。
「兵は……民は混乱しているだろうね。命令を下してくれる人がいないから」
「そんな……正義が負けるなんて……」
「マイク」
まだ分かってないのか。
「正義なんて。――勝たなきゃ言えないんだよ」
お前は自分が正義だと思っているようだけど。正義なんて星の数ほどある。お前に正義があるように。こっちにも正義がある。
「俺は負けるわけにはいかないんだぞ!!」
「――じゃあ。まだこちらに向かってくるの? 兵を全滅させる覚悟で、兵がいなくなったら? 非戦闘員を戦闘に駆り出して? ………お前の民が居なくなってもするのかい?」
「うっ……⁉」
民が居ないと僕らは消滅するのは分かっているだろう。そう尋ねて、
「――僕らの勝ちだ」
宣言する。
「………」
マイケルにはもう反論する気力は無い。
「民を人質にするなんて……」
いや、してないから。
お前が勝利に拘るなら民を全員戦場に出すつもりだろうと言っただけなんだが。
「………」
どうしようね。
ビアンカにアイコンタクトするとビアンカは肩をすくめて、
無理だろう。
と返してくる。
「………」
自分が正義なら正義と信じればいい。だけど、
「正義なんて星の数ほどあるんだよ」
告げても。ああ。聞いてないな。
そうとしか思えなかった。
――そして、虚ろの大陸と呼ばれたその地の戦争は終わりを迎えた。
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