116話 《調和》。戦場に立つ
覚悟を決めたから彼は立つ。
――話は少し前に遡る。
ビアンカ達祭祀――象徴達がマイケルに攻撃を仕掛けているのは上から見えた。
「彼女達に頼りきりになってはいけない」
馬を一頭借りる。
「トーマ」
「マイクを止めてくる。作戦は実行できるように動いてください」
「トーマがわざわざ!!」
「――僕が始めた我が儘だから」
敵対すると決めたのは自分。巻き込まれたのはビアンカ達。
「それに……」
僕は知っている。
「マイケルの力が発動したら、ビアンカさん達は無傷で済まない」
「マイケル……ミレニアムヘヴンの象徴の力って」
決別したから名を呼ぶのに躊躇う部下に笑い。
「アイツは自覚ないけどね……」
もし、力が発動したらアイツに叶わないだろう。
トーマスの視線の先には戦場という異質な空気に誘われた人外が集っている。
ビアンカ達祭祀と呼ばれる象徴に能力はかつて自分達部族から生まれた英雄を召喚させる事。召喚した英雄達を祭司達が牛に付けた松明を通して味方に英雄の力を分け与えている。
それに合わせて僕の力である味方の能力上昇。
ドーピング効果で能力を上昇されていき、兵達の力は火事場の馬鹿力と言えるくらい。力を高めている。だけど、もしアイツが自分の力を発動させたら………。
「幸いなのか、自覚がないからな……」
溜息一つ。
「トーマス?」
「行ってきます」
馬に跨る。
「いま護衛を!!」
「いりません」
「ですがっ⁉」
「大丈夫」
笑みを浮かべて、
「ビアンカさん達と合流するだけですから」
あの人達に任せておけば大丈夫でしょう。
「……………御武運を」
「ハハッ。本当は戦いたくないけどね」
馬を操り、戦場に向かう。
「トーマ」
「トーマス!!」
祭祀と呼ばれている象徴達がこちらに気付いて声を掛けてくる。
「作戦は次の段階に入りました。――撤退を」
声を掛けると。
「……」
「どうかしましたか?」
「……ビアンカが。オルグ・パパの祭祀が……」
「お前の兄弟と一騎打ち中だ」
一騎打ち……。
「オルグの戦士の魂を降ろしているから負けないだろうが」
「……ビアンカさんはどこです?」
尋ねる。
声が固くなってしまっているのは仕方ないだろう。
「あちらだが……。トーマ」
「ビアンカさんの手伝いに行きます」
「手伝いって、トーマは強くないだろう!?」
それに兄弟と戦うのは……。
「――マイクとは……僕が決着付けないといけない」
それに。マイクの能力が発動したら負けるのはビアンカだ。
「トーマス……」
「――先に行っていてください」
にこり。
「後から追いつきます」
反論はさせない。そう笑みで黙らせて馬を進める。
マイクの能力は危険だ。
海での長旅は決して安全ではなかった。何度も危機を迎えた。
それでも、不思議なほど無事だったのはマイケルの能力。
――あらゆる攻撃的な力の無効か。
それが発動しているから見事に無事だったのだ。
「ビアンカさんの能力……戦士の償還をがいある力だと判断したらアイツは消し去るだろうな」
その前に止めたかった。
そのために戦場に降り立った。
トーマスは戦争とか争うのは苦手です




