115話 《魂》。子供を叱る
しっせきって、漢字で使えないのが不思議な気がするんですけど……
最初に浮かんだのは。
――憐憫。だった。
彼の民の事情。支離滅裂だが、なんとなく。新しい考え故古い考えの者達に拒まれたのだろう。
だけど、その苦しみが分かるのならどうして自分達がしているのは、自分達がされた事と同じ事だと気付かないのだろうか。
相手の意思を尊重し合う。
押し付けられた思想。それに抵抗するものを愚かだと笑い。なら譲歩できるところを探していけばいいのにそれが出来ない。
子供なのだろう。
そう思ったが、それだけ。
(象徴を育てるのはその象徴を生んだ民だ)
他の象徴では教えれない事だ。
象徴を兄弟姉妹の様に教え導く者もいて、そこから学ぶ者もいるがそれは民がそう望んでなしえる事だ。
彼の民は他の影響を……自分達以外の意見を求めてない。
かわいそうに。
トーマスとともに生まれた。
トーマスは他の象徴の意見を聞く耳があった。
聞く耳があり、自分の意見も言える強さもあった。
マイケルにはそれが無い。
だから哀れだと思うが同情はしない。
自分には守りたいものも通したい意思もある。
戦争になった事はその譲れない一線を護るためだ。
ナイフで攻撃するが、わざとぎりぎりのところで躱す――たまに少し切ってしまったが――本気で傷付けるつもりは無い。
自分達が守りたいものは殺して手に入るものではない。
戦意を失わせてこそ手に入るものだ。
「なんで――」
マイケルが口を開く。
「なんでそこまでするんだ。俺達なら君たちの生活を楽にできるんだぞ!!」
「――そんなの」
がんっ
「望んでない」
ナイフを眼下に突きつける。
じゅぅぅぅぅぅ
マイケルの下半身が濡れてくるのが見える。
「我らの勝ちだ」
マイケルの誇りもあるだろうからその事には触れず宣言する。
「負ける……」
ぼんやりと信じられないものを見る目。
「そんなはずはない!! 俺は負けないんだ!!」
反撃をしようと立ち上がるが、
「マイク……」
静かな声。
「――君が今感じていることを屈辱と思うなら。それは」
トーマがマイケルの背後に回っている。
その手には刃物。
「君達によって捕らえられた部族の人達の受けた屈辱のほんの一部なんだよ」
静かな口調だったがその言葉は同情と哀れみ。そして、怒りを宿し。
「――自分がされて分かっただろう。自分がされて辛い事は人にやっちゃいけませんって」
子供を叱りつける様な言葉を継げる。
「知らない……!!」
「マイク!!」
「知らないんだぞ!! 俺が正しいと皆言っていた。俺は理想郷の名を持っているんだ。そんな屈辱は俺には関係ないんだぞ!!」
子供の様に喚く。
「認めな」
そんな兄弟に。
「君の理想郷はすべての者の理想じゃないと」
分かって欲しいという祈りの籠った。愛あるしっせきだった。
マイケルに対して辛らつになってしまう




