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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
外伝  《調和》と《理想郷》。そして《魂》
116/185

114話  《理想郷》。思い通りにいかない事に憤りを覚える

八つ当たり

 松明を持つ牛。

 飛んで来る矢。


 それによって、軍に混乱が生じる。

「トーマス!!」

 数の暴力だ。


「卑怯だぞ!!」

「――卑怯」

 近付いてくる牛。そして牛に乗っているのは……。

「ビアンカ」

 なんで君がトーマのもとに。トーマの味方になっているんだ!!


「なんで?」

 鼻で笑う気配。

「――それが分からないのだから。敵になった」

 矢筒を持っていたが、ビアンカの手にはナイフ。


「追いつめられる気持ちはどんなもの?」

 ナイフが向けられる。

 それを避ける。

「格下だと思っていた者達に追いつめられる感覚はどう?」

 右。左。右。


 攻撃の手は緩まない。


「ビアンカ……なんでなんだい!! 君達に文明を教えてあげたのは俺だろう。なんでっ!!」

「――文明」

 殺気。

「それは我等を見下す事?」

 頬に痛みが走る。ナイフが頬に傷付けたのを感じて――ワザとそれを外したのだと気付かされた――痛みで――こんなのかすり傷だとビアンカは笑うが――腰を抜かしてしまう。


「1893人。23人」

「えっ?」

「お前達に殺された者の数。そして祭祀たち」

 牛から降りる。


 とんっ

 牛の背を叩くと牛は軍の中心に向かって走り出す。


「なあ。文明ってなんだ?」

 殺したい。

 その目が告げる。


「我らの誇りを壊す事。我らを見下し殺す事?」

 そんなの。

「我等は望んでない!!」

 しゅっ

 ナイフを腰を抜かしている股の――そう少しずれていたら股間に当たっていた。


「なんでだいっ!!」

 文明があれば豊かになる。そうすればもっと幸せになる。


 俺を生んでくれた民は幸せになりたかったのに幸せになる権利を貪られていった。

 文明の元幸せだったのに、それをハイエナ達が奪っていった。

 いや、

「利権とか。特許とか。価値を分からない者達によって見下されて、その価値の素晴らしさが分かってきた時にはその本人達が亡くなっているので安く買い叩かれた。家族にも権利はいかずに」

 いや。

「頭が古い。固い者達が居ないんだ。この大陸はまさに理想郷になんだぞ!! どうしてそんな幸せを手放すのだ」

 そうトーマはなんでこの大陸の価値が分かってないんだ。


「――お前のしてる事」

 ぼそっ

「お前が告げる頭の古い固い考え者達がしていることと同じだと自覚ないのか」

「えっ……⁉」

 松明越しで見えた。


 ビアンカの表情は。

「っ⁉」

 ――憐憫を宿していた。




駄々こねる子どもだった。所詮。

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