113話 《魂》。戦争の意味を知る
トーマの味方にはたくさんの象徴がいます
他に祭司たちに彼を会わせた時。
いや、正式には会わせる直前まで迷っていた。
幼い象徴。
見た目は青年に近かったけど、それは民が求めたから。
民が子供姿だと頼るのを躊躇ったから――。
でも、外見は頼ってもいいと思わせながら、中身は子供だった。
みんなのためにと頑張ろうとして弱音を出せない幼い精神が垣間見えた。
だから、守らないといけないとつい思ってしまった。
「――ここに集まってくれた事をまず感謝します」
だが、その認識は一瞬で塗り替えられた。
頭を下げて、祭祀たちに礼儀を尽くすその姿はいつものびくびくしている彼から想像つかないものであった。
責任を負う者。
その雰囲気を宿して協力を仰ぐその姿にみな同じ事を思った。
――ああ。支えてやりたいと。
……象徴には人には無い特殊な能力を持つ者がいる。
気候を操る者。
遠く離れた者の様子を覗ける者。
鳥などを操る者。
そして、彼は恐らく。
力を貸してやりたいと思わせる力を持つだろう。
心を操る者は独裁者を作りやすい。それを一瞬心配したがそれも杞憂で終わった。
他の祭司たちが居なけらば気づかなかったかもしれないが。
「彼は恐らく。同じ考えを持つものに力を分け与える力を持っているのだと思う」
ある祭司が告げた。
「だから、敵対している者の心を替える事は出来ない。それに」
「それに」
「あの象徴がばかげた行いをしたのもその勘違いかもしれない」
一番古い部族の祭祀いわく。
トーマスの能力は同じ考えを持つ者の力を増強させる。そして、彼の意思を尊重して手を貸したくなるが、それをしっかり自覚してないと自分の力を過信しすぎる。
この地に流れ着くまで、マイケルとトーマスは同じ意思を持っていた。それゆえ、マイケルは自分の力がトーマスによって増強された自覚がないので、自分の力を過信し過ぎて、原住民を下として扱った。
「ある意味かの者も犠牲者だろう」
自分の身丈を勘違いした独走。
「じゃから……」
止めてやろう。
そう判断して、牛に跨る。
(本当だ……)
牛に跨って両腕を開けるなんて芸当誰も出来ない。
それが出来てしまう。
牛は松明を付けられて恐怖で暴れているのに、落ちるという不安は無い。
弓矢を構える。
「――戦士よ」
囁く。
「私に力を」
この地に住み、民のために戦った魂よ。力を貸してくれたまえ。
祈りの言葉と共に。
矢を。放った。
本人は自覚なくて、仲間の能力を増強する系主人公って好きです




