109話 《理想郷》。歪んだ正義を進む
うん。短い
戦争が始まったのはもともといた大陸の住民達が次々と国境の向こうに――その情報がどこから漏れたのか分からない――安住の地を求めて向かったからだった。
「分からない!!」
壁に思いっきりクッションを叩き付ける。
「なんで何だい!! 国境なんてものが無くて素晴らしい世界なのにどうして捨てるんだっ!!」
マイケルには理解できない。ここは理想郷だ。自分の名前はこの世界を守るためにあったのだと思えるほどこの世界の仕組みは素晴らしいと思えた。
国境なんて煩わしいものが無い世界。
決まりと言う堅苦しいものが無いから束縛もされない理想郷。それなのにそれを手放すという事の意味が分かっていない。
「分からない。どうしてわざわざ首輪を付けられるんだ!!」
……ここにトーマスかエドワードが居れば告げただろう。首輪でも自分で選んだならそれもまた自由だと。
マイケルは幼かった。
そして、自分の信じた正義以外は悪だと決めつけていた。
未熟な文明に文化を教えてあげている。
人としての礼節を知らない者に礼節を教えてやっている。
逃げるのなら逃げないように抑え込む。
当然の行為。
それを否定するのならお仕置きも当たり前。
そんな当然の事を守りたくないと逃げる者達。
そんな弱者を匿うトーマス。
理解できない。
――理解したくない。
「――トーマも悪い子なんだ」
トーマなら分かってくれると思っていた。でも裏切った。
「マイケル」
準備ができたと告げる民。
自分の正義の証明。
「ああ。そうだね」
分からせてあげないと。
「全軍出陣!!」
集めた兵を見て誇らしくなって笑う。
トーマスは臆病者だ。
これを見れば考えを改めるはずだと信じていた。
マイケルがヤンデレに見えてくる不思議




