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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
外伝  《調和》と《理想郷》。そして《魂》
110/185

108話  《調和》。《約束》に口出される

エドワードは弟分には甘い。ただし伝わってない

「久しぶりです。エドワードさん」

「久しぶり。大きくなったな!!」

 イーシュラットに出向いて、後継人――象徴的には兄という立場――であるエドワードに挨拶をする。


「珍しいな。ここまで来るのは大変だっただろう」

 お茶を用意してくれるので腰かけて口に運ぶ。うん。蜂蜜の甘さが美味しさを際立ててる。

「お願いがあるんです」

 かくかくしかじか。

「なる程。じゃあ、戦争になるのか」

「はい……」

「分かった。と言ってもマイクも俺が貢献しているから表向きは手を貸せない。だから、信頼できるところを教えておく」

 そして教えられたのは。

「エーヴィヒ……?」

「あそこも表立って協力できないから、重鎮は来ないだろうが、おそらく手を貸してくれるぞ」

「でも、他国が……⁉」

「あそこは貧しい国だから傭兵業を生り合いとしているんだよ。侵略戦には向かないが」

 区切り、

「――防衛線ではおそらく随一の能力を誇る」

「――紹介してください!!」

 それは喉から手が出るほど欲しい存在だ。

 

 僕達の目的は侵略じゃない。細やかな幸せを守りたいだけなのだ。


「じゃあ。――やるよ」

 渡される紹介状。


「ただし、会いに行くのはお前じゃだめだ。象徴は表で動かない。信頼できる部下に託せ」

「部下って……」

「トーマ」

「はいっ!!」

「民は俺らを生み出してくれたが、民は俺らの親であり、俺らの子だ。そして、部下である。――上司は部下を守るために動くものだ。――時に、人が人情という言葉で下せない決断を下す時に象徴おれたちは悪と罵られても下せるようにな」

「………」

 象徴の役割……。


「罵られる覚悟ですか……」

 怖いな。

「マイクは……」

「うんっ?」

「マイクは象徴である自分をどう思っているのかな」

 僕は怖いと思うのに。


「……多分」

 紅茶を口に運ぶ。

「分からないんだろうな。アイツは」

「分からない?」

「ああ。――民の重みだ」

 苦笑。

「アイツは名の通り理想郷があると思っている。だけど、理想なんて星の数ほどあるのを認識してないんだ」

 自分を生み出してくれた民の理想がすべての理想だと思っているから他者の理想が違うと思わない。だから踏み躙り、侮辱できる。


「エドワードさん……」

「――もちろん。俺も他の象徴も分からない事が多い。だけど、分からない事が分からないのは問題なんだよ」

 身近であれば、そんな事を諭す余裕も無いがな。


「僕も分かりません……」

「――だが、お前はもともとの民を救いたいと思ったんだろう」

「エドワードさん……?」

 優しい笑み。

「お前はその優しさを求められて生まれたんだろう。なら、誇らしくいればいい」

「……さっきと言っている事は違いませんか?」

「違わないさ」

 象徴に生き様は。


「お前はその優しさで武器を持つ覚悟をしたんだろう」

「………」

「なら、マイクに罵られる覚悟で進めばいいさ」

「エド……兄さん」

 つい昔の口調に戻ってしまう。


「――マイケルは、民を守るという事をはき違えてると思うんだけどな」

 それを諭せるといいけどな。

 エドワードの声。


「まあ、でも」

「?」

「所詮。戦争は勝った者が正しんだけどな」

 だから、手を出さない。

「エド兄さん」

「ケンカ。しておいで」

 微笑み。それは見守るからこそのもの。

「大きくなりそうなら止めてやるからな」

「じゃあ。――出来る限り最小限で納めますね」

 兄に甘えないように――。









 

トーマスは、エドワードの伝手で、エーヴィヒの協力を得たけど、フリューゲルと直接面識はありません。

象徴同士であったら国際問題になるから。

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