104話 《調和》。過去に想いを馳せる
トーマスの過去話。
ひょこっ
船の中で僕達は生まれた――。
イーシュラットから出たその船の象徴が二人だったのはこの船の乗っている存在の考えが二極化していた事が原因だろう。
新天地に希望を馳せ、自分の中に希望を抱いていた――とは聞こえがいいが、イーシュラットという国が自分に合わないと感じていたはみ出し者達から生まれたマイケル。
イーシュラットから出たのはイーシュラットの生活に疲れ、すべてを捨て去りたいという想いでいたので、生きる希望を見いだせれるようにと言う時の上司の願いを込めての命令で強制的に送られて希望ではなく不安で怯えていたが、それでもその新天地を目指していた者達から生まれたトーマス。
――その二つの異なる考えで生まれたのだが、二人はとても外見は似ていた。
マイケルに振り回されるトーマス。その二人の姿に和まされて不安が消えていく者達。その二人に早く大陸を見せたいと逸る者達。
二人を中心に船という小さな集団の心は纏まってきた。
そして、辿り着いたのは南の大陸。
いーゆラットから来た者達からすれば何にもない遅れた文明。だが、その原住民はイーシュラット付近の国とは違う文化の中生きていた。
「オルグ・パパの祭祀。ビアンカだ」
その大陸には国は無く、大小さまざまな種族が交流を行っている。
小さな争いはあるものの。平和な世界。
その集落に一人祭祀と呼ばれる象徴がおり、その祭祀同士で話し合い、精霊の声を聞いて、民を守る慎まやかな幸せ。
トーマスを生み出した民はその生活に理想を抱き、彼らと交流を大事にした。疲れていたのだ。国の命令とはいえ、不安だらけの生活に。
小さな幸せの感謝し、見えない精霊と言う存在の加護を肌で感じる日々に喜びを見出して、彼らは馴染んでいった。
そうトーマスの象徴名《調和によってもたらされる平和》の名に相応しい生活だった。
だけど、トーマス達は満足でも満足できない原始的な生活だと不満の声が上がった。
マイケルを生み出した民だった。
イーシュラットに不満があって、出てきたが新天地は彼らからすれば原始的な生活。今まで当然の様に会った文明の利器が全くない状況で、それもまた不満が上がり、彼らは以前の生活に戻りたくなっていた。
それだけならまだいい。彼らは元々の住民をバカにして、その者達が今までしていた自然との調和を不便だというだけで、壊しだしたのだ。
取り過ぎないように、考えて調整していた動物。植物を無限にあると判断して取り尽し、極端に減らされていき、そのわずかな数でもめて元々の種族を滅ぼしていく。
住みやすそうというだけで住民を追い出して、街を作り、挙句の果てに原住民を人ではない動物という扱いをし出した。
マイケルの象徴名《自由の理想郷》。その名は悪い意味で表に出てしまったのだ。
「トーマス」
トーマスを生み出した民がその暴走する者達から元から居た民を助け出そうとするのは自然の流れだった。
しばらく続くよ




