103話 《調和》。その申し出を断る
そう言えば、こいつらの象徴名出してなかった。
「という事で、俺の味方をするんだぞ!!」
いきなり人の家に来たと思ったら何を言い出すのやら。
「マイケル。そこを退け」
ビアンカが怒って告げる。
「何ピリピリしてるんだい?」
ところでここだけ何も植えて無い様だけど。花でも持ってきてあげるぞ。
などというマイケルに頭を抱え、
「マイク。そこをどいて、足を付けていいのはレンガが敷いてあるところだけだから」
「なんだいそれは?」
馬鹿だ馬鹿だと思ったけど、マイケルはここまで常識知らずだったのか。
(こいつの近くの人は常識を教えなかったのだろうか………)
そう頭を抱えたくなり、いや、こいつは自分の都合のいい所しか聞かない性格だったと思い直す。
――マイケルの今立っているところには大量の薬草の種が植えられているのだ。
僕とビアンカが居て、何も植えて無いという事は無いのに。
「トーマ」
こいつどうにかしていいか。目で告げてくるビアンカを何とか抑え、
「話をするのならそこをどいてさっさとレンガのところに立って」
「俺に命令するのかトーマ!! まあ、レンガのところに行くけど、どうせ、ここもレンガを敷きつけるんじゃないのか? 遣り掛けは駄目なんだぞ」
「そこには種が植えてあるの!!」
そう叫ぶように告げると、
「種? 何だいそれ?」
やっぱり知らないんだね。
「マイク。植物はどう育つのか知ってる?」
「ああ。勝手に生えてくるんだぞ。それを綺麗にしないといけないのは大変だぞ」
「……」
「………」
マイケルの言葉を聞いて、マイケルの国ミレニアムヘヴンの在り方が心配になる。
植物が勝手に生えて育つ。そんな風に国の上の者が思っているとしたら多くの民の苦労を知らないという事になるだろう。そんな国が長く持つとは思えない。
ビアンカも同意見なのだろう。だが、それを口に出さない。
ビアンカからすれば、滅んでくれても構わないのだ。
「――で、話って何なの?」
ビアンカお手製の香草茶を注いで渡す。
「ああ。戦争するから味方をするんだぞ!!」
戦争……?
「どこと…?」
「どこって、俺達を若造だと馬鹿にしている国だぞ!!」
若造はこちらの言う事を聞けばいいんだという態度が許せないんだぞ。だから思い知らせるんだ。
「……マイク」
「何だい?」
「僕はお前の味方にならないよ」
「なっ……⁉」
味方するとばかり思っていたのだろう。その答えに信じられないと目を見開いて、
「トーマだって、年寄りにムカつくだろう!!」
「――僕は言ったよ。年長者は敬う者だ。君は自分が正義で自分の意志に同意しない者は悪だと判断するのはおかしいと」
だから、君の味方になれない。
そう告げると。
「分からずや!! もういいよ。俺は一人でするから!!」
香草茶の入っていたカップを投げて去っていくマイケル。
「ごめんね。ビアンカ」
このカップ気に入っていたのに割っちゃって。
謝るトーマスに、
「気にするな」
と告げ、
「あの者は変わらないな」
「うん……」
そう。この大陸に来た時から変わらない。それは、彼の民もまた考えが変わっていない事を示すものだった。
トーマスは苦労性。
(因みに名前はどこぞの機関車から)




