101話 《剣》。戦争の始まりを知る
平和は長く続かない
予兆はあった――。
「はぁ」
だけど、俺が自国に居ない時に起こるとは思わなかった。
「――動じませんね」
もっと動揺すると思ってました。
その連絡を持ってきた烏丸の言葉に、
「――お前も分かっていただろう」
こうなる事を。
「――はい」
憎らしい感じの笑みだな。
「でも、我が国には影響ありません」
「元凶が何を言ってやがる!!」
何しれっと私は関係ありませんという顔をしているんだ。
「――本音ですよ」
にこやかに艶やかに笑う。
「もう少し後の予想でしたので」
「………」
国から文が届いた。
戦争が起きたのだ。
アルコス――ラサニエルの国と。
ミレニアムヘヴン――マイケルの国。
その両国の言い分は、神地――天都との交流を優位性を争うもの。
「ホント。愚かですね」
天都は今まで、ラサニエルの国であったアルコスとだけ交易をしていた。
独占させていたのだ。
新地の県は自分を通して行うというのは敵には恨まれやすいが、神地からの利権を手に出来て、国としては得だった。
そう神地は、そんなアルコスの陰で隠れて自国を守っていた。
だが、その平和を新しい国であるミレニアムヘヴンが壊した。
そのために優位性を持った新しい盾が必要になり、その盾としてエーヴィヒが認められたのだが、それを面白く思わないのはその二国だ。
今まで自分達が守っていたから甘い汁を吸えたのにと恨むアルコス。
自分達が交渉権を手に入れるはずなのに横取りされたと恨むミレニアムヘヴン。
そんな両国は当初はエーヴィヒを責めたが、やがて――まあ、そういう風に持って行ったんだろうな――甘い汁を吸えなくなったのはミレニアムヘヴンのせいだとアルコスは気付き、その八つ当たりをし出して、ミレニアムヘヴンもまたアルコスという国が神地に偏った情報を与えたから自分達の行為が悪と捉えられたと攻め立てた。
それほど魅力的な餌だったのだ。神地という国は。
「傾国という奴か」
「我が国はそうやって自国を守ってきましたので」
ラサニエルさんはそれも承知だったはずですけどね。
にこにこと告げる。
だが、その笑みは毒を含んだもの。
「――本音は」
「我が国を植民地のように扱おうとしていたのですよ。いい迷惑でした」
「じゃあ、門を壊されたのは……」
「それは偶然ですよ。ですが、壊れたのなら次の一手を考えないといけない。大変なんですよ」
「それは俺も分かる」
国を治めているからな。これでも。
「敵に回したくないな」
「お褒めに預かり光栄です」
褒めてねえ。
そんな軽口を言いつつ、おそらく俺もまたその立場だったら同様の事をするだろうなと感想を抱いたのだった。
ばっちり当事者な二人。




