99話 《剣》。その報告で想いを馳せる
遅い連絡が来ました。
くるっぽー
くるっぽー
旋回する鳥に気付いて手を伸ばす。
鳥はその腕に礼儀良く泊まり、すっと足を見せる。
「ダンケ」
足には手紙が括り付けられている。
連絡船では出せない秘密事項――船でもその手の手紙は積んでいるが検問の恐れがあるのでバレたら困るのは鳥に持たせているのだ――時間が掛かるので、それが難点だが、重宝させてもらっている。
「ふんふんふん」
くるくる巻かれていた文に目を通し、
「ああ。――やっぱり」
象徴を一人にするという大義名分で反乱を起こそうとした輩をリヒトが水面下で片づけたという報告がそこにはある。
「俺が居なくなるとそういう馬鹿が出てくるんだよな」
それにしても……。
書かれているのはリヒトの対応。
「さすが、俺の弟だな」
自画自賛ではない。正しい対処法だ。
これくらいしないと。そう、担ごうとした神輿の拒絶。それくらいしないと目が覚めないだろうこういう輩は。
ほんといい対応だ。
これは間近で見たかった。面白い事になっていたのだろう。
「担いだ神輿の意思など考えない愚か者が」
冷たい声が出てしまう。
守るべき民であっても、同じく守るべき者達の害になるのなら処す。
そう害虫まで保護して国を腐らせる気はない。
民であっても国に災いになるのなら切り捨てる。そうリヒトに教えたのは自分だ。
「象徴を一人か……手段さえ気を付ければ同意できたがな」
言いつつも。それは無いかと思い直す。
彼らの求める象徴はリヒトだ。
そして、リヒトを求める理由は、
(あいつが《玉座》だからだ)
世界を制するもの。強国として宿命づけられた名前。
――誰がアイツをそうさせるか!!
強国になりたいと望んでないのなら絶対させない。
あいつは俺の対で《盾》でいい。
「ああ。――残念だ」
漏れる言葉。
「俺がそんな幻想を砕いてやれば良かったな」
まあ、いいか。
「これで、リヒトも自信が付けばいいんだけどな」
俺のおまけ感覚で、自身が無かったからな。
そう、弟を案じる。守る《剣》は想いを馳せた。
因みにリヒトはその件は心配かけるから伝えませんでした




