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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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10話  **。名前を知るため《約束》の協力を得る

エドワードさんの名前は、某錬金術師からです

 動物の形に整えられている木々を通り抜けると一人の男性が待っていた。

「よお。来たか」

「ああ。案内ダンケな」

 男性に挨拶をすると、その男性はルーデルの手を取って…、

「エドワード・ウィルソン卿」

 少し怒ったような冷たい声。


「――ああ。そうか」

 慌てて手を離し、

「久しぶり。フリューゲル」

「――ああ。久しぶり。エド」

 外に用意されていたテーブルと椅子に腰を下ろす。


「悪いな。ついこちらの文化でな」

「ああ。お前の国の文化は知っているけどな。どうも手を取られるのはな」

 ルーデルに促されて同じ様に椅子に腰を下ろす。


「お前の利き腕左だっけ?」

「まあな。それでもいつ剣を構えるか分からない時に腕を取られるのはな……」

「お前の国の方針だから仕方ないが…そろそろまともな格好しろよ」

 まともな格好?


「ルーデル卿はまともな格好していると思いますけど……」

 綺麗な騎士団の正装。

 着崩しても居ない。


「フリューゲル」

 エドワードは厳しい声で名を呼ぶ。


「お前こいつの後見人になるんだろう。それなのに臣下のように呼ばせるのか!!」

 責める口調。

「あっ、そうか…。悪い」

「謝るのなら俺じゃなくて、この子だろう。お前の弟になるんだから」

 弟……。


「弟……そうか。そうなるのか」

「それくらい把握しておけ。ムズィーク王国の時のような同じ象徴でも上司と部下ではないんだからな」

 呆れたような忠告。


「兄は居たけど、弟は初めてだな……」

「教えたい事は教えておけよ。――もっとも教えてもそれをしない奴もいるがな」

 後半は愚痴だ。


「ああ。――くだんの弟か」

「まあな。象徴名の影響か精霊が全く見えない。もう一人の弟は見えるからこそその意思を尊重するが、あいつは分からないから蔑ろにする。悪意があればいろいろ手を回せるんだが、見えない、聞こえない。古い物は邪魔でしかない。……元々いた原住民と揉めてる」

「お前も大変だな」

 テーブルの上にはお茶とお菓子。


”うんしょ。うんしょ”

 そこによじ登ってクッキーを食べる小人。


「じゃあ、こいつらも…?」

「ああ。見えてない」


 ………二人だけで話をしていて、退屈。


 不貞腐れる寸前のところで、

「――ところで、こいつの名前を記憶から引き出す。だったか?」

「ああ。元々生み出した人間が捨てたから思い出せなくなっていてな」

 二人の視線はこちらに向けられる。


「大事な弟だしな」

 くしゃっ

 頭を撫でられる。

 それがくすぐったい。


「――取り敢えず」

 エドワードは僕を見る。

「改めて、自己紹介だ。エドワード・ウィルソン。象徴名は、”約束を守る者”だ』

「約束?」

 首を傾げると、

「こいつの約束は最初の王とのものでな」

「――この地の幻獣達を守る事。真の王が現れたら誠心誠意をもって仕える事。その約束の形を象徴として留める」

 エドワードが告げる。


「こいつを生み出したのは最初の王。そして、その最初の王との誓いを守ろうとする民たちだ」

「そのせいで、他国には無い文化が定着しているんだ」


「俺の力は魔法と言われる部類。君の……」

「リヒトと取り敢えず呼んでいる」

「じゃあ、リヒト。君の許可を得れば俺は君の記憶を探って名を呼べる。――それをしても良いか?」


「………」

 尋ねられて、戸惑う。

 それは怖くないのかと構えてしまうのだ。


「……僕は」

「――いやなら別にいいぞ」

 ルーデルが声を掛ける。

「フリューゲル。甘やかすな」

 自分の得意分野を思い出せないという事はこの子を足手纏いにするつもりか。

 

 責める言葉。


 足手纏い……。


「第一、お前が弟を案じて連れてきたんだろう」

「ああ。そうだけど、事後承諾で連れて来ちまったようなものだ。こいつが躊躇うなら自然に思い出すのを待った方がいいと思ったんだ」

 案じる言葉。


 それに甘えてしまいたくなるが、そんな自分の甘さに首を振る。

「やる」

 宣言。


「……それが僕に必要ならやる。…怖いけど」

 決意を込めた声。


「そっか。流石俺の弟だな」

 誇らしげに告げられて笑ってしまう。


 そして、決意する。


(これが終わったら『兄さん』って、呼んでもいいですか?)

 言われて、戸惑いつつも照れながら喜ぶ姿が目に浮かんだ。


こいつは弟だという認識が強くなってるフリューゲルだけど、肝心の弟は恥ずかしくてそういう態度を取れてません


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