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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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1話  《剣》。**を拾う

新シリーズです。うん。何かごめんなさい。

 森の中。

 軍隊はのそのそ進んでいる。


「やっと、終わった…」

 行軍の中で若い兵士が呟く。

「私語は慎め。――まあ、今回は長かったな」

 その近くで歩いていた壮年の兵士が注意する。

「ですけど……」

「まあ、言いたくなるのも分かるがな」


 兵の声は小声で言っているつもりだけど、こちらには筒抜けだ。


「……注意した方が」

「仕方ないんじゃねえ。それくらい長かったからな」

 ったく、あの国もいい加減諦めてくれればいいものを。

「ですが、ルーデル卿」

「それくらい気を抜かせてやれ。――緊張し続けてもいい結果にはならねしな」

 この軍の責任者は俺だ。


「何かあってもこいつらならきっと緊急でも動けるさ」

 今は気を抜かせてやればいい。

 そう告げると。


「甘いですね。我が国の守護者様は」

 溜息交じりで言われたが、

「そういうわけじゃないけどな」

 どっちかと言えば厳しい方だと思っているが。

「それよりも、守護者って呼び方は…」

 俺に合わないだろう。

 ってか、止めろ恥ずかしい。


「何を今更。防衛線では全戦全勝。我が国の守護者様が」

 だからその名は……。


 ぴぃぃぃぃ


 声は途切れる。

 一羽の鳥が旋回して、肩に泊まる。

「――どうした?」

 くいっ

 くいくい


 色素の薄い銀髪を引っ張ってどこかに案内しようとしている鳥に。

「――分かった」

「ルーデル卿!!」

「先に戻ってろ」

 副団長に命じる。


「いえ、お一人では行かせられません」

 近くに居た小姓に合図して付いていくように命じる副団長に大げさだと思いつつ、

「一人で大丈夫だぞ」

「《つるぎ》」

 副団長の責めるような叱るような声で、仕方ないとため息を吐いて、

「馬でついてこい」

 声を掛けると後ろを見ずに馬を走らせる。

 これが出来る限りの丈夫だと告げる様に先に向かうのを溜息をついて、

「お一人にするな」

 と、故障に命じる声がする。


 それを聞いて現地を取ったとばかりに。


「待ってください!!」

 後ろから悲鳴が聞こえるが相手しないでどんどん走っていく。


 鳥が鳴きながら案内していくのを付いていき――。


「ル…ルーデル卿……」

 息も絶え絶えの状態でも何とか付いてきたそいつに根性あるなと感心しつつ、

「なるほど……」

 こりゃ、呼ぶわけだ。

 と、視線はその鳥が教えてくれた者の方から離れない。


 周りを見渡す余裕が出たのだろう。そいつは俺が何を見ているのか気になりそちらを見て、

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 ああ。悲鳴をあげるのか。


 ってか、どさくさ紛れて抱き付いてくるが、左は俺の利き腕だからそちらじゃなくて反対に抱き付いてくれ。これでは剣が出せない。


「なっ、何なんですかっ!! あれは⁉」

 怯えたように告げる声に喧しいなと思いつつ軽く無視する。


                  ・・

 森の木々にもたれるようにしているのそれを凝視する。

 ・・

 それは、子供だった。

 ただし、半透明で今にも消えそうな子供だが。


「落ち着け。これは俺と同じものだ」

 ぴたっ

 さっきまでの慌てぶりが嘘みたいの収まる。

 見ていて面白いなと思いつつ、

「だけど、こいつは消え掛けだな」

 おそらく、捨てられたんだろう。


「捨てる……? って、これ…じゃなくて、この子はルーデル卿と同じものという事は守護者………をですか」

「これの役割が守護者かどうかは分からないがな」

 うちの国では俺の立場は――不本意だが――守護者と呼ばれているが、他国では巫女とか神官の奴もいるし、宰相とか教育係も居る。

 こいつも人に求められたんだろうに……。

 信じられないという顔をしているが、良くある話だ。



「俺らは人が居ないと生きていけない存在だ。こいつは人によって作られたのに創った人間がこいつの価値を気付かず、捨てたんだろうな」

 俺らみたいな存在が近年生まれるのもまれだからなその手の知識が無い者も多くなったんだろうな。

 さて、どうするか。


 しゅたっ

 剣を抜く。


「――お前には選択肢を与えてやる」

 意識を保つのも辛い状態だろうそいつに声を掛ける。

「このままのたれ死ぬか。いっそ俺の手で一思いで死ぬか」

 好きな方を選ばせてやる。


 どちらも同じ死だが、苦しんでも長く生きるのとさっさと苦しまずに死ぬかの違いだけだ。


「ルーデル卿……」

 こんな状態で答えられるとは……。

 そう言い掛けた小姓の言葉を聞かずに待っていると、


「……!!」

 そいつは弱っている状態でもこちらを睨んできた。

 深い緑の目は生きたいと貪欲に伝えている。


「そうか……」

 気に入った。

 

 マントを外し、それでそいつを包んで、肩で担ぐように持つ。

「――生かしてやるよ」

 俺の分の力を分けてやればこの場では消えないだろう。


「ルーデル卿!! 持って帰るんですかっ!!」

「ああ。こいつが選んだしな。――選ばせてやると言ったし、それなら叶えてやらねえとな」

 騒ぎ立てる小姓にこいつが起きるから静かにしてろと告げ、そいつを馬に乗せる。


 ――これが俺とこいつの始まりだった。



主人公達の名前はまあ、おいおいという事で……。

因みに主人公は二人(?)です

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