心理学から見た海難事故
これはフィクションです。
心理学から見た『漁船乗組員の行動』を予測した物です。
書いてある事の確証も事実認定もありません。
漁船の衝突
漁船の運転しながら、時々手伝う息子。
朝もやで、遠くの景色は見えないが天気が良くなる兆候だった。
「いい天気になりそうだな。おやじ」
「馬鹿言ってないで、前方を見ていろ、そろそろ航路に掛かるから」
「へーい、ちゃんと見てるよ」
・
・
「おやじ! 前方にデカブツが見えるぞ」
そして、息子の呼びかけに父親が操舵室に入る。
「本当にあんなデカブツを平然と乗り込ませてきやがって! 海はお前達の庭じゃ
ないぞ! 」
父親は自衛艦が我が物顔で通過するのにいつも腹を立てていた。
航路を通過するため、漁や進路に絡むことは殆ど無い。
それでも、大型の高速船の出すノイズ等は魚群に影響を出しているのは事実だ。
ただ立証が難しいため事実上の放任状態だった。
レーダーから得た情報では本当に微妙だ。
距離が遠いので、真っ直ぐ進んでも衝突の気配は薄い。
しかし、自衛艦の方が海難事故回避のために『減速』すればまともに衝突コースに入る。
それに近海に入ってきたことから減速は十分にありえた。
それと自衛艦の後ろを通過すれば、波の乱れで船が大きく揺れる。
小型の船では下手すれば、転覆の危険もある。
あまり大型船の後方近くを通りたくなかった。
「とりあえず右へいけ、邪魔しちゃ悪いからな」
父親は右方向に大きくかわして航路を横切るように指示を出す。
さりとて、あまり大きくかわせばコースを外れて無駄になってしまう。
息子が確実にかわすのを確認して念の為に概算した。
「このコースなら大丈夫だろう。もし交差コースに入れば相手は回避行動を取るか
ら、その時は自衛艦の鼻先を突っ切ってやれ!」
偉そうな自衛艦の態度は、そのいかめつい姿で感情を逆なでする。
自衛官と接触したわけではないが、公務員然とした態度は予想できた。
その鼻先を軽くからかう気持ちがあったのは否定できない。
父親の計算が狂ったのは、自衛艦の速度だ。
近海航路を外洋速度で飛び込んでくることは予想もしてなかった。
近海には漁船等の小型船舶がいる。
当然、速く動けば大きな波が発生して被害が出るからだ。
常識からするなら、近海で減速するのは当たり前だった。
そんな『非常識な速度で動いている』と思わないので後方通過目論見を諦めた。
それに左に切るのは、船の灯りの方向でもあり心理的な抵抗もあった。
この父親の判断を『間違っている』と誰が言える!
息子は、父親の指示でわずかに舵を切った。
完全に大きく迂回するつもりのコース変更だ。
真っ直ぐでは、『交錯の危険』があったから『迂回』を指示した。
ところが、自衛艦の速度が速く完全な衝突危険領域予測コースに入った。
その状態の海難判断では、自衛艦側に『回避義務』が生じる。
相手は『進路と速度を変えない』と言う判断で衝突しないように動かす義務だ。
その状態にて漁船が下手に動けば『返って事故に繋がる』コースでもある。
そのために、海難審判は『一方』しか行動を取ってはいけないルール。
両方が同じ方向にかわせば、すれ違いでも衝突してしまう。
減速も同じで、両方が同様に減速したら出合い頭になってしまうからだ。
船は、地上と違ってすぐには動けないために作られた海上ルールだった。
息子は、定速度・定方向を維持して自衛艦の行動を観察する。
しかし、相手に変化はない。
それと、相手が思ったより速い事に気付く。
前方を楽に横切るつもりの舵取りがまともにぶつかる事に気付く。
「甲板員は外を見ているのか? 全然変化がないな。おやじ、どうする」
息子は回避コースを取ったはずなのに完全な衝突コースに呆れる。
『イージス艦』がこちらを確認して居ないはずは無かった。
父親は、息子の呼びかけで相手の自衛艦に回避行動が見られないことに気付く。
「案外、オタオタして操舵が思うように出来ないんじゃないか?」
訓練生が操作する時があり『艦長が不在』で呼び出しに手間取っている可能性だ。
しかし、近海航路を動いている今はそれは考えられなかった。
「素人じゃあるまいし。でかいから反応が遅いかもな」
そうは思いながら、指示者が居なければ何もしない可能性もありえる。
「どちらにかわす?」
相手に変化がないのでは動かないと衝突してしまう。
海上ルールから外れるが、命には代えられない。
一瞬左へ向けて舵を切る事も考えた。
「おそらく、減速くらいはやってるだろう」
「でもおやじ、あの後方を見ろよ」
息子が自衛艦の後方を示す。
後方には、高速運転に付き物の大きな乱流が薄明の中確認できた。
まだエンジン全開で動いている。
そんな中に、小船が入り込めばどうなるか予想できる。
小船は波に大きく振られてしまう。
漁の準備で、備品の固定は外した物があるから下手すれば部品を紛失する。
それに土壇場で急減速された時に接触すれば、こちらが全面的に『悪』となる。
海上ルールに外れた行動をとったのなら言い訳は聞かない。
自衛艦の前方はまだ開けており余裕がありそうだった。
「よし、前方を突っ切るぞ」
父親は迷わず、前方通過を指示した。
迷っている時間はないこともある。
「了解」
息子はさらに大きく舵を操作して、前方を通過するようにした。
これだけ、完全な衝突コースなら減速してくれることを期待して!
まさか、『何もしてない』とは思ってもいなかった。
突然、自衛艦から回避警告の汽笛が鳴る。
息子も必死に舵を切るがもう手遅れだ。
自衛艦は目の前だった。
船の舵は車と違い反応に時間が掛かる。
さらに小型船舶に不利な事があった。
大きな船はそれだけで、その部分の水を大きく掻き分ける。
ましてイージス艦の喫水は深く影響が大きかった。
目に見えない乱流が船の周辺に生じている。
海底側へ深く押し出された水流は、表層では逆に船に近付く形の流れを生む。
一見波を掻き分けるから逆のように錯覚するが流体力学的な物だ。
だから、小型の船は移動する大きな船の近くに近付くと吸い寄せられる。
自衛艦は予想以上の接近速度に衝突は回避不可能。
前方通過を早々に諦めていれば、転覆だけで済んだかもしれない。
『船』という財産を放り出す行為にためらうのは当たり前。
息子は最後まで前方通過を目指してフルスロットルだ。
それが『無事』に乗り切る唯一の道だった。
最後の瞬間自衛艦は狙ったように漁船の操舵室を目掛けて突き進んでくる。
漁船はまるで吸い寄せられるように自衛艦に近付き切断された。
新聞記事によれば、自衛艦は逆進をかけて左へ舵を切っている。
これも、専門家は判断に迷うところだ。
船にはスクリューの先に舵を切る舵羽根がついている。
前進時はそれで思った通りの舵が切れた。
と言っても、自動車のバック操作に近い形で船は船尾が動いて進路を変える。
スクリューの停止時は、船の動きにて相対水流が生じて舵が予定通りに効く。
ところが、逆進時にその操作を行えばどうなるか?
逆進する水流は、水をかき寄せる。
そのかき集める水流の先に舵の羽根がある。
質量保存の法則から、かき集めた水の方向に船体が引張られた。
舵は逆進したことで、『本来曲がる力』を相殺されてしまう。
おまけに、減速の本来力を受ける面を舵羽根がさえぎる。
スクリューに加わった減速の力を舵羽根が力を受けて相殺した。
逆進するときは『舵を切らないこと』が最大の減速効率に繋がる。
逆進を掛けた事で、船の舵は効かなくなり減速も曖昧になった。
これは、最終的に運のルーレートがどこに落ちたかの問題だ。
最終操作責任を問うのは酷ではあるが『間違わずに操作していれば』と思う。
もし逆進をかけずにスクリューのフリーか停止と舵だけで回避してれば・・・
船の舳先はもっと左へずれて漁船の進路を完全に塞いだ。
あるいは船は舵を大きく切ることで横方向へ力を逃がし減速が間に合った。
逆進を掛けたことで舵が切り切れずに、勢いが殺しきれなかった。
もし舵を切らずに逆進だけかけて、目を瞑っていれば・・・
舳先が右にありもっと速く漁船と接触していたから側面に激突する。
舵を切っていたために、僅かに左へずれて衝突に至った。
舵を切らなければ、接触推定通過線は漁船の後方になっている。
そのラインで『一秒』でも遅ければ、無事に通過した可能性は大きかった。
もし漁船を最後まで無視していれば・・・
漁船は全然間に合わず側面に激突している。
運が良ければ、舳先の水流に跳ね飛ばされて大破転覆でも沈没は免れた。
そうなれば『最悪の結果だけは逃れられたのではないか?』と思われる。
でもこれは、結果論で『後から判断して判る』事だ。
衝突直後は『推進器の完全停止』に決まっている。
衝突しなくても、大きい船は接触寸前では推進器を停止させる。
そうしないと水に落ちた被害者を水流で押し流してしまう危険が大きい。
下手すれば、被害者をスクリューに巻き込む危険もあるからだ。
おそらく自衛艦は『逆進』を掛けたまま突っ切ったらしい。
衝突後の船の動きがそれを証明しているからだ。
そうでなければ、あんな大きくて重たい船が急には止まれない。
自衛艦の前進状態で、スクリューの逆水流は船の周りに複雑な流れを作っていた。
まして、舵を切っているのでその流れはさらに複雑。
普通のモーターボートでも人を簡単に吹き飛ばす威力だ。
大きな船を動かす『推力』を想像してみればその威力は殺人的になる。
だから漁船は切断されて自衛艦が通過時に逆推進力にて大きく振られた。
そして、漂っていた乗組員を振り飛ばし一気に海底近くへ押し流した可能性がある。
『急減速中』はスクリューが海面近くまで浮上している事も重なる。
この辺は、例によって『事故は起きない』という前提で教育されているだろう。
そのため、マニュアルは無かった可能性が大きい。
衝突後、艦長は救助より『本部への申し開きの方』に頭が回ったに違いない。
だから、とっさに救助の判断が鈍ったのではないか?
決して『艦長席に居なかったのでは?』とは言わないが、指示がもたついていた。
自分達が『押し流した』要救助者なら広域を探す手配をする。
時速100キロメートルなら、水流は一秒間に30メートル以上だ。
逆進の勢いは判らないが、それと同等は流れている可能性がある。
海流もあるから30秒後でも、一キロメートルは探す必要があった。
それと、海底を探す要員をいち早く手配するのが当たり前ではないのか?
まさか『船の周りを懸命に探していた』とか言ってはいないよね・・・
その辺の記事は『乗組員を捜索』としか書かれてなくて良く判らなかった。
事故は回避行動を取る義務がある方が動かなくてはいけない。
それが、国際船舶法でしっかり定められている。
自衛艦の方が速やかに回避行動を取っていれば事故は避けられた。
『小型の漁船だから回避行動を取るのが当たり前!』という素人意見もある。
しかし、回避行動を行わなかった漁船の方を非難するのは完全に『筋違い』だ。
漁船の乗員はギリギリまで『船舶の常識』に従って行動していたからだ。
漁船を減速して様子を見るのは『論外』だし船舶ルールに違反する。
それに、果たして間に合ったかどうかは疑問がある。
汽笛を鳴らした時点では、すでに回避限界を超していただろう。
船はそんなに急には動けない。
漁船が動いて回避行動を取る時点で、どちらにかわすか判断した時を考える。
判断時点で、船後方のスクリューによる海面の乱れが無ければ左へ切っていた可能
性はある。
自衛艦の後方の海面に乱れがあれば・・・
もしそれが『逆進』なら巻き込まれる可能性を否定できない。
船は急減速すると慣性で後方が浮き上がり、スクリューが海面付近まで浮上する。
その前を横切るように判断したら、そいつは船を知らなさ過ぎる。
スクリューが巻き起こす流れで、小型船は確実に吸い込まれてしまうからだ。
もし通常推力なら自衛艦は舵を切る可能性が大きい。
船が舵を切ると後方が大きく動く。
自衛艦が舵を切った時、その横を通過するのは進路を塞がれる事も予想できた。
相手が『回避行動』をとって推力が生きている状態では無理だ。
どちらの選択も危険を伴い転覆は逃れられない。
この時点、自衛艦は漁船の進路の左に見えている。
暗闇に覆われた視界で自衛艦の姿だけが大きく圧し掛かってくる状態だ。
昼間と違い船の速さなど細かい状況は見えない。
とっさに『減速中』の船の前を横切るように判断したのは『正解』だ。
ただ、その時点で『まだ巡航速度前進中』とは思わなかった。
この判断ミスが致命傷に繋がったけど、これは漁船側のミスとは思えない。
汽笛が鳴って、逆進が掛かった時点では完全に手遅れだ。
漁船の乗組員は思っただろう『なにをいまさら!』と。
二回目の舵を切る前なら『気付いてなかった』と知って左へ舵を切っただろう。
『減速していない』と気付き『転覆を覚悟で!』すれ違いを試みる。
上手くすれば接触だけで逃れられる可能性もあった。
汽笛が鳴った時点では、船の動きに於いては時間が無さ過ぎる。
漁船の乗組員は神か仏に祈るしか残されていない。
事故の一番の原因は、決まっている。
近海航路を漁民が想像出来ない速度で操船する自衛艦の『非常識』だ。
『想定以上の速度で動いている船の後ろを、舵を切らなければ通過できる?』
凄い判断もあったものだ。
もし、舵を切らなければ、自衛艦の後方200メートルを通過?
あの速度で200メートルなら、回避判断は正しい事の証明ではないのか?
200メートルは地上では大きいが海では僅かだ。
自衛艦の速度は1秒間に30メートル以上で6秒の余裕しかない。
漁船は秒速30メートル以上の動きで数秒後に当たるような状況を見れば判る。
その壁の『切れ目がある』という保証が無い状況の判断だ。
船の長さがしっかり判らないが、その間視界を塞ぎ続ける恐怖は計り知れない。
ふさがれる前に前へ出ようと考えるのは『正常な判断』と思う。
それに、あの結果は自衛艦の周りの海流状況を検討していない。
大きな船が動けばその周りに発生する乱流は小船の舵にも影響を与える。
あくまで、理論数値でしかない事を頭に入れておいて欲しい。
漁船は、もし自衛艦が50ノット以下なら、その前を軽く通過していた。
逆にその場合は、舵を切らなければ船にぶつかっていることになる。
だから、この場合『結果論』であって『仮定の話』は検討すべき事ではない。
例えば、優先道路走っていた。
左から突然大型のトラックが走ってきて、一時停止を停まる気配もなく飛び出した。
運転者はとっさにハンドルを右へ切ったために、本来の車線から外れてしまう。
そして、トラックの後尾にぶつかった。
トラックの運転手から、『お前がかわしたからぶつかった』と言われるような物だ。
トラックの速度とその後の挙動を瞬時に判断しろと言われてもできるわけ無い。
反射的にトラックの来た方向の反対側に逃げるのは『人間の本能』でもある。
仮定や結果を騒ぐのは意味がなく、飛び出し行為その物を問題にすべき事故だ。
漁船が『暴走している』という記事を見たことがある。
海の上の相対速度は明るい場所でも対象物がなくはっきり判らない。
操作する方も同様で、速度が出ている事も気付かないほど平坦な水面だ。
朝の4時頃はまだ海は暗い。
その暗い海面で、ただでさえ速度は判りにくい状況だった。
自衛艦は、視認を難しくする暗い色を塗っている。
大きさと速度と距離を判断するのはただでさえ難しい。
そんな時間に自衛艦は時速100キロメートル以上でつっぱしっている。
同じ速度だからと言って、漁船と一緒に考えては困る。
喫水の深さも小回りも全然違う。
そんな重たい船が漁船と同等の速度で動き回る事自体がおかしい。
前方に障害物があっても止まれないし、かわせないからだ。
漁船にぶつかったのは、かわせない程の『大きさ』だったからに他ならない。
漁船の方は『ルールを守っていた』から回避が遅れただけだ。
漁船を引き裂き『通過する』速度は決して安全速度ではない。
これを『暴走』というのではないのかな?
交差点は、普通『双方が制限速度?』で走っている事を前提に判断する。
人間は精密なコンピュータではなく感情と不確かな予測で動く。
前方で衝突しそうな状態で、心理的に衝突回避方向に舵を切るのはおかしくない。
結果的に自衛艦が減速しなかったから、ぶつかっただけだ。
漁船は相手が『予測の速度』で動いて『直進したらぶつかる』と判断した。
だから避ける為に『一回目の回避行動』をとった。
いや回避ではなかった可能性の方が高い。
単に灯りから離れるように動いただけ。
その時点で交差の事は検討もしていないなら『通常の進路変更』だ。
自衛艦の広域レーダーでは相手の様子が判る。
しかし、漁船のレーダーでは詳しい情報がわかるわけ無い。
そして、二回目の回避行動は本来海上法の違反行為に当たる。
漁船は、目の前を被せる自衛艦に『緊急回避』と言うしかない。
もし、自衛艦が先に通過をしようとしていたなら論外だ。
ショーか何かで打ち合わせていたなら別だが、普通人では絶対に無理。
小さな漁船の視角角度からすれば、完全にコースをふさがれたように感じる。
実際の証言でも、自衛艦は漁船を完全に見落としていた事を認めた。
後方通過はあくまで言い訳の結果論だ。
漁船はそこまで『法規を守って行動していた』事を忘れてはいけない。
コースを一定で速度も変えずに進んでいた。
地上の人は『もっと早くかわせば』と言うが、それが海上法のルールだ。
確かに、漁船が最初の進路変更したために甲板員が見落としたかもしれないが・・・
それは、自衛艦側の怠慢であって、漁船側の責任とは関係ない。
最初の変更も左から来るので『右』へ避けただけだ。
実際、寸前を横切ったのだからその判断は正しい。
左から来るのに左へ舵を切れるのは、現場を見ない『地上の理論家』だけだ。
もしくは、広域を見ることが出来る『鳥の眼』を持つ者のみ。
真っ暗な中、漁船のレーダ視界ぎりぎりの範囲を有視界でどう判断しろという。
接触せずに、コースを大きく外れないように動かすのが精一杯だ。
最後まで、回避義務を怠っていたのは完全に自衛艦の方だ。
実際、海難審判は『自衛艦の方が事故原因』と断定している。
それを庇う司法判断は『国の方からの圧力に屈した』としか見えない。
失礼、それは言いすぎた。
ただ『海の上のルール』に精通していない事も事実だ。
発表された航跡図を見ても、漁船の方はルールを守っていた。
おそらく、自衛艦を操作する者にとって漁船は『ゴミ』に見えたのだろう。
(ゴミ=海面反射の明かりやレーダーノイズの事、意識的に除外してしまう)
だから、漁船の灯りを『見落とす』し『避けよう』ともしない。
『守ってやっているのだから、お前達が避けて行くのが当たり前』
そう考えて、いつも回避行動を取っていなかった可能性もある。
最初の進路変更が『ルール違反?』という反論があった。
十分距離が離れていた場合『偶然進路を変えた』可能性もあり断定は出来ない。
真っ暗な中、灯りだけ見えた船から離れる様に動くのは『通常の進路変更』だ。
モータボート等の運転士が他の船に近付かないように動くのと同じ。
進路も交差も検討してない動きだった可能性の方が高い。
第一漁船がそんな『高級なレーダー』を積んでいる訳ない。
漁船のレーダーでは『そこに何かある』のを確認するのが精一杯だ。
具体的な大きさや形など検討の必要なく、普通なら『機動性』でかわしていく。
それだけに、大きな船には近付かず遠くからかわしていくのが当たり前。
自衛艦側の目がいいから『相手も同じ』と思う事自体がおかしい。
観測機器に掛けている金額の桁が数個違う。
それに、タンカー等はレーダーの索敵位置が高いため遠くを見通せる。
それを言うなら『港を出た所で進路変更したから違反』と言うのと同じレベルだ。
漁船が漁場へ向かう進路は決まっているわけではない。
道路とは違い、海の上には大雑把な航路があるだけだ。
進路交錯の最終判断は視界の短い方を基準に『漁船サイドの目』で行う。
漁船が『進路を固定』したところから判断するのが常識ではないのか?
漁船側は『交錯が確認』されたところで、ルールに乗って進路を固定した。
それを『ルール違反』というのは『海の事情を知らない』と判断する。
『相手がかわしたからぶつかった。かわさなければ当たらなかった?』
そういうのは完全な言い掛かりで、かつ責任転嫁になる。
そういう言い合いを失くす為に作られたのが、船舶における海上ルールだ。
最終的に交差する『船の位置』で回避行動の取り方が『義務』付けられている。
漁船の位置は『そのまま進行』で自衛艦の位置は『相手の進路妨害不可』だ。
その中には当然『緊急回避を思わせる行動』も含まれている。
回避側が相手より先に通過する場合は、事前に『通過許可』を取る必要があった。
そうしないかぎり、漁船はルールに従って動く。
ぶつかりそうになって、パニックになり操作を誤っても漁船側の責任ではない。
海の上は『自衛艦の世界』ではなく万民の使用する領域だ。
大きな船を扱うなら、もっと細心の気配りと『ルール』に沿って動かして欲しい。
さて、新聞記事からすると自衛艦側はいくつのミスを重ねていたのかな。
数えるのも馬鹿らしいほどお粗末な操船に思えるのは気の所為?
それでは本題に入る。
心理学から『事故』を解析すると・・・
漁船側の乗組員が事故に遭った理由は『真面目すぎた』可能性が高い。
漁船側に落ち度は『殆ど無い』と言ってもいい。
自衛艦は『普段から』回避行動を取ってなくて、漁船の方が機転でいつも大きくか
わして交錯範囲に入らないようにしていた。
だから、甲板員はあまり漁船の動きを注意して見ていない。
レーダー担当も、漁船の動きから目を離した。
漁船の方は、いつも同様のコース変更で楽にコースを横切れる予定だった。
それが、角度が僅かに浅かったか距離を見誤る。
それと、自衛艦の速度が予定より速かったために交錯する。
漁船の方は交錯ルートに乗ってしまったので真面目にルールで動いた。
自衛艦の方はいつも同様、漁船との交錯は検討もしてなくて対処が遅れた結果だ。
自衛艦の艦長や乗組員を『心理学』から判断するなら・・・
『早く地上に戻りたかった』という心理もあるだろう。
しかし、『見せびらかす』という思いを強く感じる。
『大きな船を、基地寸前までかっこよく進入させて自慢したい』
高価な大きなおもちゃを手に入れた子供の心理が透けて見える。
艦長は、大きな船が近海を高速で動けば、どんな被害が出るかを考えてもいない。
イージス艦は重いから喫水が深く推力も大きい。
そのため、タンカー等とは影響力が違う。
海底に向かって『衝撃波が出てる』と思ってもいい。
それだけに、周りのへの影響が大きく慎重に動かす必要があった。
それなのに、浅海を外洋速度で乗り入れているのは影響を考えていない。
真っ暗な海を、相手の船の灯りとレーダーの反射波だけで高速移動している。
どう見ても、高級車をギャラリーの前でスピンターンさせる若者の心理その物。
ルール無視のパフォーマンスにしか見えない。
おまけに、甲板員も少なく『自動操縦だった』とか書かれていた。
普段から日常的にこんな危険なことを繰り返している証拠だ。
戦闘艦が、漁船の特攻を見逃していては話にならない。
完全に気を抜いて操縦しており『危機管理能力の欠如』と心理学は分析する。
艦長達の『子供の心理』は人事ではない。
『かっこよい』と思っている飛行機や武装兵器を乗り回すパイロットも然り。
その辺は、銃等の『武器』を持つ者も似たような心理だろう。
持ったり乗っただけで、自分が偉くなったり強くなったように錯覚する。
車に於いて『ハンドルを握ると性格が変わる』と言うのと同じだ。
その影響の事は『知識』では教えられても『実際』には判っていない。
そして、『持たない者』の心理を想像すら出来ないだろう。
武器を持つ者は、武器を持って『守ってやっている』と優越感に浸る。
武器を見せているだけで『住民は不安になる』など考えても居ないだろう。
その不安が態度に表れ、武器を持つ者をさらに助長させる。
武器は周りに対して、過剰なストレスを誘発させてしまう。
『武器を奪えば、自分達も同様に強くなれる』と誤解させる事だ。
敵対者からそう思われると、襲撃を誘発するような結果を招く。
さらには『お前達が居るから被害に遭う』と住民に思われる危険もある。
住民からの『忌避』の雰囲気は、守る方にもストレスを生む。
切っ掛け一つで暴動や暴走に発展する危険を抱えていることを知って欲しい。
そんな自衛隊が海外に行く話が世間で出ている。
弱者の不安に気付かないと、火種を撒き散らすのが目に見える。
もし派遣するなら、もはや『自衛』隊ではない。
『攻撃隊?』や『挑発隊?』と言っても良いほどの危険を孕む。
国会の偉いさんが決める事なので反対はしないが・・・
『アメリカ合衆国奴隷軍』と名前を改めて『日本とは関係ない』事を強調する。
そうしないと危なくて任せられない。
住民が速く走る車の前を『どかないからひき殺した』と言い訳するのが目に見える。
最後に、事故の状況を省みて・・・
速過ぎて『どけなかった』という漁船乗組員の気持ちが判らないかな?
自衛艦が『まともな速度』なら漁船は楽にかわしていた事を忘れてはいけない。
漁船の一番最初の進行方向は交錯の『優先権』がある進路でかわす必要はなかった。
真っ直ぐ行けば、自衛艦の邪魔になる可能性があったから進路を変えている。
漁船乗組員は、気を使って自衛艦に『進路を譲っていた』のだ。
不幸な事故になったのは、残念な『結果』でしかない。
事故の件で漁船の乗組員を責める自衛隊員がいるという。
そんな人達に、漁船員の気持ちは通じてない。
ここで改めて、『本当の平和を守るのは何か』を問う。
『武器の性能なのか?』『住民との融和なのか?』
自衛隊の人達が、どちらなのか『迷わない』と信じたい。
これは、言いたい放題の書き放しです。
事実の検証も根拠もない空想の読み物。
もう直ぐ、事故から7年になろうとしています。
その間に、自衛隊のあり方も変わって来ようとしている。
裁判の結果もほぼ決まっている頃。
改めて、忌まわしい事故を掘り返すつもりはありませんが・・・
漁船の被害者の方の無念が『少しでも晴れたらいいな』と言う想いです。
漁船『清徳丸』の被害者の方の冥福をお祈りします。