第13話 新たなる道へ
「今日からお世話になることになりました、八神光也です。宜しくお願いします」
姉に紹介された会社に入ることができた。小さいながらもWebサイト運営や、レンタルサーバーなどを手がけるところだ。さほど知識があるわけではなかったが、研修制度、定期的に技術試験などが多く実施されていて自分のスキルも段階的に上げていけそうな魅力がある。
「ようこそ。八神さんのことは真美さんから聞いています。これから私があなたの教育係で、堀田春花といいます。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。姉とはお知り合いなんですか?」
春花さんは黒髪がよく似合う。僕と同い年くらいだろうか。
「そうなんですよ。真美さんは高校時代の部活の先輩だったんです。社会に出てからは連絡もしてなかったんですけど、たまたま真美さんの会社と取引があって、そこで再会したんです」
「なるほど、そうだったんですね」
そういうことか。なんか話がトントン拍子に進むなって思ってた。
「真美さんには高校時代にいろいろお世話になってたから、再会した時は嬉しくて話し込んじゃって、そこであなたの話も出たんですよ」
社内を案内してもらいながらこんな話まで出てくる。
初日から1週間ほどみっちり研修で久しぶりに頭を使った。目が回りそうだ。僕が覚えてる事はかなり古いらしい。そりゃそうだ。1年以上社会と切り離れた世界にいたんだから。
「一通り仕事の流れは把握できたと思いますので来週からいよいよ実際に作業をこなしてもらいます。頑張ってくださいね」
「わかりました。すでにヘトヘトなんですが」
二人とも軽く笑い合う。
「八神さん、今夜時間ありますか?良ければご飯でもいきませんか?研修も終わったことだし」
まさかの春花さんからのお誘いだ。特に予定もなかったし、明日は休みだ。
「いいですねぇ、じゃあ行きましょうか」
会社ので同僚とはいえ女性と二人での食事ってかなり久しぶりだ。なんか新鮮な感じがする。ちょっとくすぐったいな。そこで意外なほど話が盛り上がってしまった。春花さんは一つ上だったが、聞いてる音楽や好きな映画なんかも同じものが多かったから親近感が湧いたんだろう。
「なんか昔からの知り合いみたいですね、私たち」
「そうですね、そんな感じがします」
正直心地よかった。春花さんとの空間は。
駅までの帰り道に
「八神さん、私、応援してます。事故のこと真美さんから聞いてますけど、今からの時間を大切にしてください」
春花さんからの言葉に胸が詰まる。これからの僕の時間かぁ。まだわかんないや。
「ありがとうございます」
どんな顔をしたらいいのか分からないまま手を振りお互いの帰路へ就いた。
「ふたりの約束」を読んでいただきありがとうございます。久しぶりにさおりが出てこない話になってしまいました。それぞれの歩んでいく道に笑顔がたくさんあればいいんですが・・・。これからもよろしくお願いします。




