決別
光は人間に視線を向けた。その顔は別人のように強張り、眼には鋭い光が浮かんでいた。
ふたりの人間は、頼邑を心配そうにしていることが分かった。どうやら、迎えに来たのだと理解した。光は、疑っと見ていたが、やがて手に持っていた刀を木の根に突き立てた。くるりと背を向け、玉藻の方へと消えていった。
まるで、その後を追いかけるかのように頼邑がやって来る。そこで、見たのは、なくした刀だった。
それを見た頼邑は、ハッとしたように顔を上げた。
…………見ていたのか。
と、頼邑は察知した。
後ろから、伊助たちが駆け寄ってきた。頼邑のそばまで来ると、頼邑さまァ、と言い切り、次の言葉がでない。
森の奥を真っ直ぐと見つめた目には何か決意したような強いひかりが宿っていたからだ。
でも、すぐにこちらを見て、
「もう大丈夫だ。すまない。帰ろう」
と、背を向け歩き出した。
頼邑の背の先には、光も背を向けて歩いていた。
玉藻は、渡したのか? と訊くと光の顔が険しくなった。
何かを思いつめたような眼をして真っ直ぐと森の闇を見つめながら、
「つまらぬ情にとらわれすぎた…………」
と、言ったあとに、
「みなを呼べ」
と、強い口調で言った。
光は眦を決意したような顔をして言った。
ふたりの背には、互いにつながっていた糸が切れ、もう結び直すことはできなかった。




