計画その4 無し
俺は、とにかく雑誌を読みたい気持ちを抑圧出来なかった。
でも、もう計画がなかった。もし計画があったとしても、あんなに危険な作業をするのは嫌だった。
それに、俺は何を隠そう、漢だった。今こそ漢のど根性を見せてやる!
こうして俺は、また書店へと足を運んだ。
スキンヘッドもいる。トイレもある。立ち読みしている輩もいる。
何も変わっていないこの書店に入ってみると、これまでに携わった多くの人々や、怒った事件を、走馬灯のように思い出すことが出来た。
まず最初は、雑誌の存在する場所を探した。
置いてあった場所はレジの前で、スキンヘッドの店員はレジにいた。
俺はそれで計画をたてる決意をした。
計画の一番最初には、変装して書店に潜入した。完璧に思えたその計画は、部活の後輩の出現によって、大きく崩壊した。
その次は、本を持って、違う場所で見ようと考えた。
たまたまスキンヘッドがいなかったので、何の試練もなく持ち出せたが、読む場所が悪かった。
大人の花園で見ていたため、ムッツリスケベのサラリーマンに注意され、因縁の対決に敗北し、涙を飲んだ。
最後に行った計画は、はっきり言って、強引な策であった。
無邪気な子供を拉致し、見せろと脅迫した。
その後、その少年の父親である、馬鹿なやーさんを騙してその場を去った。
物語は、数々の修羅場を迎え、終幕へと向かっている。
俺はこれまで戦ってきた敵に心から心の中で礼を言いながら、強くなった自分に酔いしれた。
そして、最後の戦いに備えて、静かに深呼吸をした。
「よし!」
俺は心の中でそう叫び、レジの前へと歩いていった。
スキンヘッドは俺をギロリとした目で睨んだが、俺は怯むことなくレジの前まで行ったのだ。
「俺は戦う! 挫けない!」
そう心で力を入れ、腕に巨大な魂を吹き込み、あの雑誌を掴んだ。
「よっしゃ、来いや! 俺はお前なんかに負けないぞ! 何とでも言いやがれ! 俺はあんたなんかに負けない! 俺は男だ! 様々な試練を受けて、ここまで来たんだ! 来るなら来い!」
心の中では、そのような相手を威嚇するような言葉でいっぱいだった。
俺の未来に待ち受けるのは、光か闇か……。
それを左右する行動を行ったのだ。
立ち読みを始めたのだ。
俺は恐怖とスリルを味わいながら、スキンヘッドの鋭い瞳を味わった。それはあの時の気持ち以上だ。
バスケット大会の決勝戦、ラスト十秒、得点は一点差で負けている。
そんな時、ノーマークでなおかつゴール付近にいたため、味方からパスを受けた。
もう打つしかない!
手はまるで痺れているように、ブルブル震え、足は棒のようになり、汗は止め処なく流れていた。
しかし打たなければ勝つことが出来ない! 打つんだ! でも入るのか? でも打つしか!
そんな葛藤が恐怖へと変わる。
ここで外してしまったら、バスケ部エースとしての信頼が失われてしまう。
でも打つしか……。
そんな気持ちを持っているであろう友人を、ベンチから見ていたときの自分の気持ち以上なんだ。
俺は汗をかきながらも、ゆっくりとページをめくっていった。
俺はスキンヘッドの視線を感じ、スキンヘッドの方を見ると、スキンヘッドは俺をじっと見つめていた。
怖い。
目にはくまが出来ていて、それが鋭い目を引き立たせていた。
まるで獣に睨まれたような気持ちで、俺は一瞬怯んだが、自分の勇気をフルに出し、スキンヘッドの目を睨んだ。
どうだ、なんか文句があるのなら言ってみるがよい! 俺は挫けないぞ! 負けないぞ!
だが、彼の攻撃はそれだけだった。
俺が雑誌を読み終わるまでの数十分間、スキンヘッドは一言も発言しなかった。
その、何気ないぎこちなさの中で漫画を読んでいたため、漫画の内容を、ほとんど記憶に書き込むことが出来なかった。
そのせいか、漫画を読みきったという達成感よりも、スキンヘッドが、何も文句を言わないという状況が、怒りとなって俺の心の中に積み重なり、今までこの立ち読みのためだけに、危険な行動をやっていたのに、無駄になってしまったという思いが爆発してしまった。
怒りに満ちた俺は、何の躊躇なく、スキンヘッドに言ってしまった。
「なんか怒れよ!」
最初の趣旨とは明らかに異なるが、俺は言わずにはいられなかった。
店員に文句を言われずに立ち読みを出来るのは、中学生にとっては、利点であることなのだが、そんなこと、今の俺には関係なかった。
俺の言葉に、スキンヘッドは、読んでいた少女漫画を床に落とし、目に涙を溜めながら、静かに言った。
「すみませんでした」
こうして、長く壮絶であった俺とスキンヘッドの戦いは、彼の心の病によって、静かに幕を閉じた。




