「飲み会も大事な仕事なんだよ」と言って、婚約者は今日も私との約束を反故にした
「ルーカス様、来週の日曜日のことなのですが」
「え? 来週……?」
我が家の東屋で、婚約者のルーカス様とお茶を飲んでいる最中、私がそう訊くと、ルーカス様はポカンとされた。
「何かあったっけ?」
「何って、以前お伝えしたではありませんか。私が王家主催の詩歌コンテストで大賞を受賞したので、その授賞式があると」
「あっ」
「ルーカス様も私の婚約者として出席していただくので、当日は16時にお迎えに上がりますが、よろしいですよね?」
「あ、そ、そういえばそうだったね……。ゴメン、エリーゼ! その日は、ゲルルフと飲み会をする約束をしちゃったんだよ!」
「……」
ルーカス様が手を合わせて、私に頭を下げる。
「またですか? 先月のお茶会も、ゲルルフ様と飲み会が入ったからと反故にされましたよね?」
「いや、うん……。君には悪いとは思ってるよ。でも……」
「本当に悪いと思ってらっしゃるなら、私の授賞式の日程はお忘れにならないと思うのですが」
「う、うるさいなッ!! 飲み会だって大事な仕事のうちなんだから、しょうがないだろッ!?」
途端、ルーカス様はテーブルを乱暴にガチャンと叩いた。
カップの中の紅茶が零れ、テーブルを濡らす。
「僕とゲルルフは、将来爵位を継ぐ嫡男同士! 言わば未来のビジネスパートナーなんだ! そのパートナーと親睦を深めるために、一番効果的なのが飲み会という場なんだよ! 女である君にはわからないだろうけど、男には男の文化があるんだ。その辺、僕の妻になるからには、理解しておいてくれないと困るよ。まったく」
ルーカス様はフーフーと鼻息を荒くしながら、右手で胸元をまさぐっている。
これは……、やはり……。
「それは失礼いたしました。今紅茶を注ぎ直しますので。――おっと」
「っ!?」
私は手元が狂ったフリをして、ルーカス様の胸元に紅茶をかけた。
「なっ、何するんだよッ!?」
「あらあら、これは申し訳ございません」
私はハンカチで、ルーカス様の胸元を拭く。
「すぐに洗濯いたしますので、上着を脱いでいただけますか?」
「い、いや!? 自分で洗うからいいッ! もう今日は、帰らせてもらうよ! じゃあね!」
「ええ、お気を付けてお帰りくださいませ」
依然としてフーフー興奮しながら、そそくさと帰って行くルーカス様。
ルーカス様の姿が見えなくなったのを確認してから、私は紅茶を拭いた隙にルーカス様の胸ポケットからくすねたものをこっそりと見た。
「やっぱりね」
そこには私の予想していたものがあった。
私は急いで、裏庭へと向かった――。
「ノーラ」
「あ、お嬢様」
裏庭に行くと、メイドのノーラが箒で掃除をしながら、物凄い速さで反復横跳びを繰り返していた。
「何してるの、あなた?」
「はい! こうやって高速で反復横跳びしてれば、いつか分身するんじゃないかと思いまして! 私が二人いれば、掃除ももっと楽になりますからね! ……でも、一向に分身する気配すらないんですぅ」
「ふうん」
相変わらずこの子は、変わってるわね。
こう見えてメイドとしての腕は一流だから、うちも重宝してるけど。
「掃除は後でいいから、馬車を出す準備をしてちょうだい」
「え? ルーカス様とどこかへ出掛けられるんですか?」
「いえ、ルーカス様はもう帰られたわ」
「……! 承知いたしました。すぐ用意いたしますねー」
一瞬でただならぬ事態だと察知したのか、さっと屋敷の中に消えて行くノーラ。
うんうん、流石ノーラ。
話が早くて助かるわ。
――こうして私がノーラと馬車でやって来たのは、王立騎士団の詰所だった。
「あ、これはエリーゼ様。本日はどのような御用件でしょうか?」
受付の顔見知りの男性騎士が、私に対応してくれた。
「ヘンドリックに用事があるのですけど、お呼びいただくことは可能でしょうか?」
「ああ、ヘンドリック副隊長ですね。少々お待ちください」
「おや、エリーゼ、僕に何の御用かな?」
その時だった。
私の幼馴染のヘンドリックが、いつもの眩しい笑顔を振り撒きながら、ちょうどこちらに歩いて来た。
「ヘ、ヘンドリック副隊長……!? それは……!?」
受付の男性騎士が、困惑の色を浮かべる。
さもありなん。
ヘンドリックは一人の中年男性騎士の首根っこを掴みながら、床を引きずっていたのだから。
中年男性騎士の顔は、見るも無残にボコボコに腫れ上がっている。
よく見ればその中年男性騎士は、ヘンドリックの直属の上司である、王立騎士団第三部隊の隊長だった。
「ああ、この男は騎士団が逮捕した未成年の少女に対して、取り調べと称して悪質なわいせつ行為を繰り返していたことが発覚してね。差し当たり制裁として、二十発ほど殴っておいたんだ」
ふふ、なるほどね。
ヘンドリックは昔から、どんな人間だろうと、悪は許せないタチだものね。
子どもの頃も、とある上級貴族が違法な人身売買に手を染めていたのをたった一人で突き止めて、告発したこともあったし。
騎士になってから異例の早さで副隊長の座に就いたと聞いた時も、ヘンドリックなら当然そうなるわよねと、まったく驚かなかったのを今でも覚えている。
「ひ、ひいいいいいい!!!! ごめんなさいごめんなさい!!! もうしませんから、どうか許してくださいいいい!!!!」
クズ隊長さんは余程怖かったのか、悪夢を見た子どもみたいに泣きじゃくっている。
あらあら。
まあでも、自業自得だから、しょうがないわよね。
「あっはは! 流石ヘンドリック様! やりますねぇ!」
そんなヘンドリックに、ノーラがサムズアップを向ける。
強者同士、気が合っているのかもしれない。
「フフ、ありがとノーラ。さて、エリーゼ、僕に用というのは、何なのかな? わざわざ君がここまで来るくらいだ。余程のことがあったのだろう?」
うんうん、ヘンドリックも話が早くて助かるわ。
「ええ、ここじゃ何だから、個室で話せないかしら?」
「了解。君、この男を、独房にブチ込んでおいてくれ」
ヘンドリックはクズ隊長を、受付の男性騎士に差し出した。
「しょ、承知いたしました! オイ、立て!」
「ひいいいいいい!!!」
クズ隊長は速やかに連れて行かれた。
「じゃ、行こうか」
「ええ」
私とノーラは、ヘンドリックの後に続いた――。
「すまないね、安物のコーヒーくらいしかないけど」
「いえいえ、どうぞお構いなく」
「ありがとうございまーす!」
個室に通された私たちに、ヘンドリックはコーヒーを差し出してくれた。
「うーん、安物のコーヒーも、たまに飲むと逆に新鮮で美味しいですよねー」
コーヒーを一口飲んだノーラが、素直な感想を零す。
「フフ、そうかもね。――ではエリーゼ、早速用件を伺ってもいいかな?」
「ええ、もちろん。つい先ほど、これが私の婚約者の、ルーカス様の胸ポケットから見付かったの」
「……! これは――」
私の差し出したものを見て、にわかにヘンドリックの顔が険しくなった。
「これ、こちらで預からせてもらってもいいかな?」
「ええ、そのために持って来たんだもの。後のことは、よろしくお願いするわね」
「ああ、場合によっては君にも協力を要請することもあるかもしれないから、そのつもりでいてくれると助かる」
「初めからそのつもりよ。私にできることなら、何でも言ってちょうだい」
「ありがとう。では、僕は急いでこれを調べなきゃいけないから、悪いけど失礼するよ」
「ええ、お仕事頑張ってね」
「頑張ってくださーい」
「――ああ、全力を尽くすよ」
「私たちも帰るわよ、ノーラ」
「はーい」
さてと、私は私で、準備をしておこうかしら――。
「ルーカス様、来月の第一日曜日に、お買い物に付き合っていただきたいのですが、ご都合はよろしいでしょうか?」
「え? 来月、の……!?」
あれから数週間。
今日も我が家の東屋で、ルーカス様とお茶を飲んでいる最中、私がそう訊くと、ルーカス様は露骨に狼狽えた。
「あ、あー、ゴメン! その日も実は、ゲルルフと飲み会をする予定があってさ!」
ルーカス様が手を合わせて、私に頭を下げる。
やっぱりね。
今までの傾向からして、ルーカス様とゲルルフ様は、毎月第一日曜日に飲み会を開いていることが多かったので、カマをかけたのだけれど、案の定だったわね。
「そうですか。それでは致し方ありませんわね。――ところでルーカス様、これ、ささやかながら私からのプレゼントなのですが、受け取っていただけますか?」
「え?」
私はラッピングされた、小さな箱を差し出す。
「わあ、ありがとう。何かな?」
ワクワクしながら、箱を開けるルーカス様。
「こ、これは――! ニャッポリートの最新モデルじゃないかッ! ありがとうエリーゼ! これ、ずっと欲しかったんだよ!」
「ふふ、それはよかったです」
ニャッポリートは最高級の腕時計ブランドで、ルーカス様はニャッポリートの腕時計に目がないのだ。
「どうか大事にしてくださいね?」
「ああ、もちろん! 肌身離さず付けとくよ!」
子どもみたいに目を輝かせながら、腕時計を色んな角度から眺めるルーカス様。
――よし、これで準備は整ったわね。
「エリーゼ、本当にいいんだよね?」
そして訪れた、翌月の第一日曜日。
例のクズ隊長が懲戒免職になったことで、代理で王立騎士団第三部隊の隊長を務めているヘンドリックが、神妙な顔で私にそう訊いてきた。
「ええ、もちろんよ。遠慮なくやってちょうだい」
「わかった。そういうことなら、僕も手加減はしないよ。諸君、準備はいいな?」
「「「ハッ!」」」
ヘンドリックが確認すると、隊員の方々は一糸乱れず敬礼した。
うん、やはりこの部隊はあのクズ隊長よりも、ヘンドリックが隊長になったほうが遥かによかったわね。
「みなさーん、差し入れにサンドイッチ作ってありますんで、この任務が終わったらみなさんで食べてくださいねー」
ノーラが大量のサンドイッチが入った籠を掲げる。
「わあ、ありがとうございます!」
「やったぁ!」
「ノーラさんのサンドイッチだあああ!!」
ふふ、相変わらずノーラは騎士団でも大人気ね。
ノーラの作ったサンドイッチは本当に美味しいから、さもありなんといったところだけど。
「――よし、そろそろ頃合だな。行くぞ、諸君!」
「「「ハッ!」」」
ヘンドリックの号令で、第三部隊のみなさんが、一斉に動き出した。
「失礼する」
「な、何だあんたら!?」
そして第三部隊のみなさんは、路地裏にある、隠れ家的なホテルに入って行った。
いかつい騎士たちが一斉に入って来たことで、受付の太った男は大層困惑している。
「王立騎士団第三部隊の者だ。これが捜査令状だ。少しこのホテルを調べさせてもらうよ」
「お、王立騎士団……だと……!?」
ヘンドリックが差し出した令状を見て、太った男は一瞬で青ざめた。
「ま、待ってくれッ!? 頼むから、今だけは!?」
「いいや、待たないね。――どいてくれ」
「う、うわ!?」
ヘンドリックは太った男を押しのけて、ずんずん奥へと進んで行った。
他の隊員の方々も、ヘンドリックに続く――。
「この廊下をしばらく真っ直ぐよ、ヘンドリック」
「了解」
私の指示した通り、ヘンドリックは颯爽と歩を進める――。
「この部屋かい、エリーゼ?」
そしてとある部屋の前で立ち止まったヘンドリックは、私にそう訊いてきた。
「ええ、間違いないわ」
「ありがとう。――失礼するよ」
そう言うなりヘンドリックは、扉を蹴破り中に入って行った。
「う、うわっ!?」
「な、何だお前は!?」
「きゃああああ!?!?」
「何よこれえええ!?!?」
私も続いて中に入ると、そこには白い煙が充満しており、広いベッドの上には、全裸の四人の男女が寝転がっていた。
男性二人はルーカス様とゲルルフ様で、残りの二人の女性は、私の知らない顔だった。
「私は王立騎士団の者だ。お前たち四人を、違法薬物所持による容疑で、逮捕する」
「「「「――!!!」」」」
四人の顔が、絶望で染まった。
「煙は絶対吸うなよ、エリーゼ」
「ええ、もちろんよ」
ハンカチを口に当てる私。
この煙の原因は、テーブルの灰皿で燻っている、数本の煙草だった。
だが、これはただの煙草ではない。
中身はエクーフラという、違法な麻薬なのだ。
エクーフラはこうして煙草のようにして吸うことで、桁外れの高揚感と多幸感を得られるらしい。
だが、非常に中毒性が高く、薬が切れてくると、激しい不安に襲われたり、ちょっとしたことで、すぐカッとなるとか。
この頃のルーカス様の態度が明らかにおかしかったので、もしやと思ってあの日胸ポケットを調べてみたら、煙草を吸わないはずのルーカス様が、この煙草のようなものを持っていたのだ。
私は瞬時に、違法薬物であることを確信した――。
大方ルーカス様はゲルルフ様と二人で月に一度、こうしていろんな女性たちを交えて、ドラッグパーティーを開いていたのだろう。
「エリーゼ!? なんで君がここに!? ――あっ!? もしかして!?」
ルーカス様が、手元のニャッポリートの腕時計を凝視する。
「ええ、その腕時計には、発信器を仕掛けておいたんです、ルーカス様」
「そ、そんな……!!」
ルーカス様たちがドラッグパーティーを開いている場所まではわからなかったので、こうして一計を案じたのだ。
「オイ、どういうことだよルーカス、これは!? テメェ、ヘマしやがったな!?」
「い、いや!? これは違うんだよ、ゲルルフ!」
何が違うんですか、ルーカス様?
紛れもなく、あなたはヘマをしたでしょう?
まあ、そもそも違法薬物に手を出している時点で、ゲルルフ様も同罪ですが。
「……クッ! 許さないぞエリーゼ……!! よくも僕を裏切ったな!! よくもよくもおおおおおお!!!!」
「「「――!!」」」
半狂乱になったルーカス様が、私に跳び掛かって来た。
「汚い手でエリーゼに触るな」
「ぶべら!?!?」
「「「――!!?」」」
が、そんなルーカス様の顔面に、ヘンドリックの渾身の右ストレートパンチが炸裂し、ルーカス様は錐揉み回転しながら、壁に激突したのだった。
「無事かい、エリーゼ?」
「ええ、お陰様で。ありがとう、ヘンドリック」
「どういたしまして。――この四人を連行しろ」
「「「ハッ!」」」
ヘンドリックの一言で、一斉に隊員の方々がルーカス様やゲルルフ様たちを取り押さえる。
「うわ!? 放せ! 放せよおおお!! 俺は名門ビッテンフェルト伯爵家の嫡男だぞッ!」
「いやああああ!!!」
「帰してよおおお!!!」
名門伯爵家の嫡男だろうが、犯罪は犯罪ですよゲルルフ様?
イイ歳をして、そんなこともわからないのですね――。
――こうしてルーカス様たちは、騎士団に逮捕された。
後から聞いた話だけれど、ゲルルフ様のご実家のビッテンフェルト家は、大手の麻薬密売組織と繋がりを持っていたらしい。
当然ながらゲルルフ様のお父様であるビッテンフェルト伯爵も逮捕されたので、ビッテンフェルト家は近々取り潰されることになるだろう。
あのホテルもゲルルフ様から多額の金を受け取っており、ドラッグパーティーを開く場を提供していたので、現在は業務停止命令が出ている。
そしてルーカス様のご実家も、跡取りであるルーカス様が逮捕されてしまったことで、随分頭を抱えている。
もちろん私とルーカス様の婚約も白紙になった。
あんな犯罪者と結婚せずに済んで、本当によかったわ。
ちなみにヘンドリック率いる王立騎士団第三部隊は、その大手の麻薬密売組織を速やかに壊滅させたらしい。
その功績を認められ、ヘンドリックは正式に第三部隊の隊長に就任したとか。
何にせよ、これで一件落着ね。
「ふう」
今日は私は我が家の東屋で一人、のんびりとお茶を飲んでいた。
ルーカス様との婚約が白紙になったことで、私の心は今日の雲一つない青空みたいに澄み渡っていた。
嗚呼、お茶が美味しいわ。
「お嬢様、ヘンドリック様がお見えですよー」
その時だった。
ノーラが高速で反復横跳びを繰り返しながら、こちらに歩いて来た。
どうやらまだ分身を諦めていなかったらしい。
「ヘンドリックが? 何の用かしら」
私はおもむろに、玄関へと向かった。
「やあ、エリーゼ」
玄関に行くと、そこには大量の薔薇の花束を抱えた、タキシード姿のヘンドリックが立っていた。
「どうしたのあなた、それ?」
「フフ、僕からのささやかなプレゼントだよ。どうか受け取ってほしい」
「ありがとう」
ヘンドリックから花束を受け取ると、薔薇の優雅な香りが私の鼻孔をくすぐった。
「わざわざこれを届けてくれるために来たの?」
「いや、用事はもう一つある。――君に、プロポーズしに来たのさ」
「……!」
ヘンドリックはいつになく真剣な顔で、私の目を真っ直ぐに見つめる。
ヘンドリック……。
「もうあの男との婚約は白紙になったんだよね? だったら僕が君に気持ちを伝えても問題はないはずだ。――子どもの頃から、ずっと君が好きだった。どうか僕と、結婚してほしい。もう僕の父上には、許可はもらってるから」
「ヘンドリック……。――もう、もっと早く言ってよ。あなたが吞気に武者修行なんかしてるから、私はあんな男と婚約するハメになったのよ?」
私のお父様は、元々ヘンドリックを私の婚約者にするつもりだったらしい。
だが、あれは今から四年ほど前。
ヘンドリックはある日突然武者修行の旅に出ると言って家を飛び出し、それ以来音信不通になってしまったのだ。
それから数年して、ヘンドリックが旅から帰って来た時には既に、私はルーカス様と婚約してしまっていたのだった。
「アハハ、ゴメンよ。――でも、この手で君を守れる男になりたかったから、どうしても自分を一から鍛え直したかったんだ。……とはいえ、修業から帰って君が他の男と婚約したことを知った時は、死にたくなるほど落ち込んだけどね」
「ふふ」
せっかくなら、その時のヘンドリックの顔も見てみたかったけど。
「そういうことだったのね。じゃあ、今回だけは特別に許してあげる。――私も、ずっとあなたのことが好きだったから」
「ほ、本当かい!」
「ええ、本当よ、ヘンドリック」
「わあ、やったあ!」
ヘンドリックは子どもみたいに、無邪気にはしゃいだ。
ふふ、こういうところは、子どもの頃から変わってないわね。
「お嬢様! ヘンドリック様! おめでとうございまーす!」
「「――!」」
振り返ると、高速で反復横跳びを繰り返しながら、ノーラがパチパチと拍手していた。
「ふふ、ありがと、ノーラ」
「ありがとう、ノーラ」
「早速旦那様にご報告してきますねー!」
依然反復横跳びをしながら、お父様の書斎へと向かうノーラ。
――その時、一瞬だけノーラの姿が二人に見えたのだけれど、きっと気のせいよね?
拙作、『戦争から帰って来た婚約者が愛人を連れていた』がコミックグロウル様より2026年3月6日に発売された『選ばれなかった令嬢には、本命の彼が待っています!アンソロジーコミック』に収録されています。
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