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"This Is Halloween"

朝から霧が強い


近くの山林に沼地が多いせいだろう

灰色の空の下で、村の入口には数え切れない程のよろめく人影が視えた


先祖だ

毎年、今の時期に『彼ら』は帰って来るのだという

朝も早いうちから、村人達は家の外に出ては自らの先祖を探して居る様だった


私もルーツはこの村にあるのだと聞いた事がある

朝食を済ませると、せっかくだから先祖を探してみようと思い、私は宿の外に出た



『先祖』達はみな一様に、仮面を付けて居る

霧の立ち込める農村でそうした帰死者が生者と再会を果たして居るのは、私の眼には異様な光景だった


死者は出会うべき生者の前に立った時、始めて仮面を外すのだという

私は祖母の姿を探した


祖母は生前、虎目石の指輪を着けていた

もし生前と同じ姿ならば、それが手掛かりになるかも知れない



探している最中、多くの死者と抱き合い涙ぐむ村人を眼にした

みな、家族や恋人と再会したらしい


死者達は仮面を外して居ない


時が来れば外すのだろうか

腑に落ちなかったが、生者達も何かしらの確信が有ったのだろう

私は祖母を探し、大きくない農村の中を彷徨った



少しして指輪は視付かった

ただし、それを着けて居るのが祖母なのか、私には解らなかった


農家の納屋の中

虎目石の指輪の人物が、一声も上げずに片手で手招きする



「お前は」


「誰だ」


私は銃を抜くと、仮面の人物から距離を置いた


その時だ

納屋の外からも、人々の戸惑いや恐怖の叫びが聞こえてきた


外に飛び出す

人々が感情の掴めない帰死者から逃げ惑って居た


とは言っても、死者は村人を追い掛けない

ただ佇んで居るだけだ

しかし、総ての死者が仮面をして居なかった


人々は恐慌のように「誰だ」「誰なんだ」と言いながら死者に対し怯え、震えて居た

誰もが親しい人間と信じ、まったく違う顔の死者と再会を果たしてしまって居た様だった


「お前は誰だ」

『祖母』に近寄ると、私は仮面を剥がした



仮面の下の視覚えの無い老人が、うつろな表情で私を視た

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