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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第3部】白日夢

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【3-1-4】

「……アーガですか?」

「うん。レナード知ってる?」

「いえ、聞いたことはないですね」


 私はリムさんから話を聞いた後、早速準備を始めた。今はちょうど昼時でもあったので食事をとりつつ皆へ話の内容を伝えたところだ。


 意外というべきかアーガの事は皆知らなかった。賢人ということであれば誰かしら知っているのかと思ったのだが、あまり世間に認知はされていないのだろうか。


「それでそのアーガという賢人がいるのがディーヴァヌ山脈なんですね?」

「みたいだね。移動してなければいいんだけど」


 今私たちがいる大陸には北東部と北西部に山脈が広がる。北東部側をディーヴァヌ山脈、北西部側をアスーラ山脈と呼ぶ。今回我々が目的としているのは北東部側だ。


「でもリム様が存じていた時期からはそれは随分と時間が経過しているのでは?」


 レナードが言うことも最もである。私はチラリとリムさんを見る。彼女は私の視線に気づき食事をとりつつ会話に加わってきた。


「ああは言ったが、恐らく移動はしていない」


 何故か確信を持っているような物言いだった。当然ながらに何故そうなのか質問をする。


「でも、ずっと一箇所に留まるなんてあり得ないんじゃ?」

「……まず考えが違うな。奴には自由などない」


 彼女は持っていた茶器を置いた。部屋の中に陶器同士の硬質音が響く。


「アーガは私達太古の神々に反逆したと言ったろう?」

「ええ。確かにそれは聞きました」


 私以外にも過去そんな人がいたことが驚きだったけれど。


「奴は当時、間抜けな人族や亜族、果てにはモンスターすらも扇動して私達へ反旗を翻した。数も質もそれなりだったからな。それなりに手を焼いたぞ」


 それなり、というのがどれくらいなのかは分からないが、ただリムさんが手を焼くと言うのだから一般的に見たら相当だろう。それも太古の神々六人を相手取ってなのだから。


「それで、どうなったんです?」

「……それは言っただろう? 出る杭は打たれるものだ」


 リムさんは面白くもなさそうに話している。私としては他人事ではないように思えてならないが、ひとまず話を進めよう。


「でもそれがどうして移動しない、ってなるんですか?」

「ボロ雑巾にされた後、奴は例の山脈にある牢獄へ閉じ込められた。そこから移動させたという話も聞いたことがない」


 賢人の寿命は私達の想像よりもはるかに長い。もしアーガが本当にそのまま牢獄に入れられていたとすると、それは何十年何百年になるのだろうか。たとえ生きていたとしても気が触れてもおかしくない時間のはずだ。


「でもどうしてそんな事までして生かされてるんです? それにその賢人さんは何が目的だったんですかね」


 彼女達は率直に言って敵対したものへの容赦はない印象だ。それなのに何故生かしておいたのか疑問だった。


「……そうしたのは、長姉のギィだ。奴の意向だな。それにこれは、ただ生かされているわけではない」

「というと?」

「――罰を与えてるのさ。長い長い罰を」


 私は思わず絶句する。いったいどれほどの責苦が行われ、どれほどの期間続けられるのか。


「ギィは特にそういう部分に敏感だからな。容赦はしない。……それと、アーガの考えは私たちもよく知らん。聞きたいなら本人に聞けばいい」


 リムさんの言葉には若干何かを隠しているようなニュアンスがあった。……いややっぱり単純に面倒臭いだけだろうか? 


 ただ少なくともアーガは何かしらの目的を持って彼女達に逆らったのだろう。そして負けた、と。いずれにせよ私の求めている情報を持っていそうではある。私は一層の期待を胸に抱く。


「じゃそろそろ、その何とか山脈に行く計画を立てようか」


 そもそも誰が行くかというのすら決まっていない。私もあまり地理に詳しくはないために助っ人が必要だった。


「……また美味しいの食べれる?」


 真っ先に声を上げたのがモノだ。鬼人族の里の時の経験で味をしめたのか、今回も同じ展開に期待をしているようだ。でも山脈の中には当然甘いものなどない。そのご期待には沿えそうもなかった。


「……たぶんない」

「……えー」


 ガーンと音が聞こえそうなほどにショックを受けていらっしゃる。


「それでそもそもどうやって行くんです?」


 横から話に加わってきたのはジーだ。先ほどまでは奥で洗い物をしていたようだが、話を聞いていたのだろう。一から話す必要はなさそうだった。


「えーと……」


 彼女の質問に窮する。私だってほとんど外には出ていないわけで、思い起こせばディーヴァヌ山脈自体はサーヤから聞いたことはあるけれども、入り口だとかの話は聞いてはいない。適当に行ってそのまま登山するとかやっぱ難しいだろうか……。


「ディーヴァヌ山脈なら行き方は存じてますよ」


 おお流石! と言いたくなる。話に加わってきたのはレナードだ。確かに彼なら私たちよりも世界情勢には詳しいだろう。


「レナード、教えてくれる?」

「ええ。ただ危険ですよ。山頂付近は年中雪が積もっていて足元も悪い。特有のモンスターも多数おり凶暴で手強い。越えた先の国家であるフクローランに行こうとした交易商が命を落とすなどざらに聞く話です」


 思ったより過酷な環境であるようだ。そもそも前世はもちろん今世でも山登りすらしたこともなかったのに、まさかここでいきなり挑戦することになろうとは。


「危険なことはいい。ただそういうことであればまずは無事に辿り着くことからだね」


 アーガに会う前に死んでしまっては元も子もない。それにそんな環境では魔素も薄いはず。無駄に死ぬわけにはいかないだろう。


「それでどこから行けばいいのかな?」


 レナードはその辺り地理関係にも明るい。ただ私の質問にレナードは若干躊躇っていて、しかしその後の発言で理由を理解する。


「……スーニャの目的地には、シェスカを経由していくことが必要になります」


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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