表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/118

【2-8-2】

「――あああ゛゛ァァァァ!!!!!」


 私の絶叫が暗闇に飲み込まれる。ただ何と思われようが、どう見られようが関係なかった。クソクソクソクソ。ガブリエットを前に何もできなかった。千載一遇の機会をこの手で潰してしまったんだ。


 今まで私は何をしていたんだ。多少なりとでも強くなったつもりだったのか。足りない足りない足りない。まだまだ足りないんだ。もっともっともっと強くならないと。私が私のしたいことを為すためには。


 私はすぐさまにその場を立ち去りたかった。すぐにでもまたリムさん達に会わなければ。ただディアさんがふと視界に入る。ーーそういえば、ある約束をしていた。


「ディアさん。私忙しいんです」


 ずっと傍観していたディアさんに話しかける。


「でも約束は約束なんで。貴方は殺します」


 体中から炎が噴出する。感情が制御できない。


「……貴方、改めてなんなの?」


 私の様子を見てディアさんが尋ねてくる。ただ私にはそれに丁寧に答える心の余裕はなかった。


「私? ご存知でしょう? スーニャですよ」

「……まあいいわ。知られてしまったからには、やっぱり殺すしかないわね」


 白々しい。最初から殺すつもりだったくせに。そういえばガブリエットが一つ漏らしていたな。


「……ディアさん。貴方だったんですね? 私の里をガブリエットに教えたのって」

「……ええそうね。言い訳するつもりもないわ」


『そうですか』とボソリと呟く。それなら彼女もまた、私にとっての復讐の対象だ。


「……それなら、貴方は私にとっての仇でもある。――殺しますね?」


 彼女へ向かい剣を振るう。纏っていた炎が彼女へ放たれる。炎はディアさんにまとわりつき、その身体を焼く。ただそれを彼女は容易く払う。そしてこちらへ向かって突進してくる。


「ッ!?」

 私は慌てて距離をとりつつ、再度炎を放つ。だがディアさんは私が目を向けた瞬間には姿を消していて、私は彼女を見失ってしまう。周囲を見渡すも彼女を捉えることが出来なかった。


「……舐められたものね」


 彼女の声は後ろから聞こえた。それと同時に首を掴まれる。その力の強さに驚く。私は身動きをとることすら出来なかった。


「これでも私は鬼人族の長なのよ? ガブリエットには劣るにしても、貴方程度容易く殺せるわ」


 グググと掴む力が増していく。痛みに顔が歪む。私は持っていた剣の切先を彼女へ向けて走らせる。ただそれもまた受け止められる。


「まったく面倒なことを……。ただまあ考え直せば、これはこれで都合がよかったのかもしれないわね。貴方達の処分も迷ってはいたところだし」


 骨がミシミシと音を立て始める。堪らず声が出る。私は全身から炎を放ち、彼女の手を焼く。彼女は素直に手を離し、炎を振り払った。


「……馬鹿の一つ覚えね。つまらない」

「は?」

「貴方は炎をただ闇雲に出しているだけ。剣の扱いもなってない。本当に、ガブリエットを追い詰めたのかしらね?」


 イライラする。私は剣を彼女へ向けて振る。ただ剣は掴まれ攻撃も止められる。


「肉体が貧弱なのかしら? そんな速度じゃあ当たっても恐くはない。そんなのでよくヴェルグやジンを倒したものね」


 彼女は吐き捨てるようにその言葉を発した。そして掴んでいた剣を私から奪い、クルクルと回し弄んでいる。


「まああの時は他に加勢していたお仲間がいたものね? それがいないならこの程度か」


『多分ヴェルグの時もそうだったんでしょう』と言いながらに持ってた剣を今度はこちらへと投擲してきた。剣は私の頬を擦り後方の木々へと突き刺さる。時間差で私の頬からは血が滴った。


「……私を殺す、とか言ってたわね?」


 瞬間私の側頭部に衝撃が走る。勢いから横に身体が吹き飛ぶ。


「そんなザマで、どうやって私を殺すのかしら?」


 ツカツカとこちらへと近づいてくる。私は慌てて体勢を立て直す。また同じ衝撃が私を襲う。ただ今度はどうにか見ることが出来た。これはディアさんの蹴りによる衝撃だ。余りにも速すぎてさっきは見えなかったが、目を凝らすことで何とか認識することができた。


「私へ攻撃もできず、自分を守る事も出来ない」


 今度はその拳で身体を殴りつけられる。身体がゴム玉のように跳ね転がる。彼女に蹴られ、殴られ、抵抗しようにもそれも意味をなさない。私は彼女のなすがままだった。


 首を掴まれ、再度身体を持ち上げられる。私はただ彼女を睨みつけることしか出来ない。


「――本当、無様」


 吐き捨てるように喋っている。


「なんで、あの子はこんな……」

「な、に?」


 そういえばなぜ彼女は私を嵌めようとしていたのか、まだ聞いていなかった。邪魔になると言っていたがそれはどういう意味なのか。


「……ああそういえば貴方に説明していなかったわね」


 首をぱっと離し私は地面に落ちる。締められていたからかゴホッゴホッと咳き込む。

 

「――いいわよ。話してあげる」

 

 私を睨むその視線は、明確に殺意が込められたものだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。

(……でないと、力尽きるかもしれません)


※評価は星マーク、ブクマはお気に入りからお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ