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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

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【2-7-2】

「それで、どこまで聞いていたのかしら?」


 ディアさんの目がスーッと細くなる。会ってから好意的な態度を取ってくれていたように思うが、一変して今は敵対心丸出しだ。


「いえ? 今来たばかりで何も聞いていないですが?」


 無駄だとは思うもののとりあえず惚けてみる。ただ実際に具体的な話は聞いていないのだ。これではいそうですか、となってくれたらいいんだけれど、まあそう甘くはないだろう。


「流石にそれで通るとは貴方も思っていないんでしょう?」

「ですよね……」


 ふうと息を吐く。せっかく今日まで少しゆっくり出来て、良い心地になれたというのに至極残念だ。


「それで、ディアさん貴方達は何を企んでいるんですか?」


 聞いていた話の通りなら彼女達の元に誰かが到着するのだろう。密会ともいえるのかもしれない。そしてそれとは別に私達は何かしらをされる、と。それが全くの誤解で、私達にとって全くの悪いものでもなければただの笑い種なのだが。


「もし、私たちへのサプライズー! なんてのだったら嬉しいんですけどね〜」


 なんて冗談を言ってみる。ただディアさんはピクリとも笑うことはなく、私の言葉は辺りへと飲み込まれていった。やばい滑ってしまったか? コホンと咳をして場を誤魔化す。


「それで、もう一度言いましょうか? なんなんです?」

「……貴方は少し邪魔でね、早々に退場願いたいのよ」

「それは、つまり、そういうことですか?」


 彼女は肯定も否定もしないが、理解は一緒だろう。しかし理由が分からない。ただ彼女が私を見る目は、今はひどく鋭く憎しみが込められたものにすら思えた。まるで旧来の敵、といったような目つきだ。


 これ以上話すつもりもなさそうなので、私はわざとらしく大きくため息を着く。


「鬼人族の方々には、ディアさんやリーリアさんを初めとして、お世話になったこと心から感謝しています」


 私はぺこりと頭を下げる。言っていることは本心だった。


「……まあ何でもいいんですが、ただ私も為さなければいけない事があります」


 一度私は息を止め、改めてディアさんを見つめた。


「――だから殺すと言われて、ただ殺されたりはしないですよ?」


 私が殺気を放つと場は一気に緊迫感を増す。相手方もすでに臨戦体制といったところだ。しかし敵は三人。こちらは一人。リムさんに貰った武器も持ってきてはいない。正面から立ち向かってはとても勝つ事はできないだろう。ならばひとまず会話で時間稼ぎをして、隙を見つけて逃げるのが一番現実的だ。


「……それで、明日か明後日には誰がくるんです?」


 ディアさんとリーリアさんが少し驚いた表情をしている。聞かれていたのかと若干バツが悪そうな様子だ。


「……貴方には関係ない話でしょう?」


 ディアさんが扇子で口元を隠しながらに答えている。ただ多少なりとも反応してくれたのだ。まだ会話を続けられる余地はあると見た。


「ホント突然来るなんて随分と人騒がせですね?」


 バレない程度にジリジリと後ろへ下がる。逃げる時間を稼ぐためにも距離を稼がなければ。


「……影に隠れて随分と聞いていたようね。野良猫に躾は期待できないかしら?」


 野良猫とは随分な言われようだ。ただ彼女達はまだ油断している。もう多少は時間を稼げそうだ。


「でも私を殺そうとしても、無駄な事は分かっているでしょ? ディアさんは私のことご存知なんだから」


 彼女は確か私の能力の事は既に知っている。そのため、容易には殺せないということも認識しているはず。


「この身体は――「――知っているわよ」


 彼女が私の言葉を待たずに、返答を重ねてきた。思った以上の反応に若干驚く。


「知っている。貴方の事は、嫌となるくらいに」


 なんだ? 彼女の言葉尻には、怒り? なのか深い感情が感じられた。今まで感情を露わにしていなかった彼女なのに、この話題では何故か強く反応していた。


 しかし、彼女が私の事をそんな深く知るはずはない。それこそ身に覚えがない。まあもしジンやヴェルグと相当な深い仲であるというのであればこの怒りも最もで、……いやまさか、そうなのか?


「え、まさか、ディアさんってジンとかヴェルグとかと、やっぱり、そういう仲だった、とか?」


 私の問いポカンとしている。そして数秒後、合点がいったという表情に変わった。


「……違うわよ。言ったでしょうに。あんな醜悪な連中殺された所で何も感じない。そんな風に思われる事すら怖気が走るわ」


 ああそうかそれは杞憂だったのか。ちょっと安心した。しかしそれであればいよいよ理由が分からなかった。


「だったらいったい?」

「……なんでもいいでしょう?」


 彼女が痺れを切らし始めている。そろそろ限界か。若干は距離も取れたがまだまだ心許ないが、致し方ない。


 私は勢いよく腕を振り上げ、そして打ち下ろす。同時に炎が生まれ、辺りに引火していく。魔素の扱いも大分慣れたものだ。炎を見てディアさん達も一瞬怯んでいた。


 私はその隙に外へと飛び出る。このまま急いで逃げなければ。まずはモノの元に戻らないと。ただ、当の本人は思わぬところにいた。


「――あれ、スーニャここにいた」

「え!! モノ!?」


 驚いたことに目の前にモノがいる。私は驚いたあまりに転んでしまった。『だいじょぶ?』なんてモノが言いながらに手を貸してくれる。私はお礼を言いながらに立ち上がるが、いやそれどころではない。


「えどうしてここに?」

「お手洗い行こうって。でも場所わからないから。迷った」


 迷ったって……。でも私もここまで迷い込んだのだから一緒か。多分モノもディアさんの部屋の辺りへと自然に足が向いたのだろう。


「モノ、後で説明するけども、ひとまずここから逃げ――「――逃すわけないでしょう?」


 真後ろからディアさんの声が聞こえ、同時に首元を強く叩かれる。意識が急に薄れてきて、視界が暗くなっていく。モノが何かを言っているようだったが、聞き取ることができない。


 ……クソ、油断した。もしかしたら逃げられるかもしれなかったのに。ひとまずこのまま殺されることがないようにとだけ祈り、私は意識を失った。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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