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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

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【2-6-3】

 部屋に戻り用意されたベッドへ横になる。隣にはモノがイビキをかきながらに寝ていた。こっちは大変だったんだぞと鼻を摘んでやると、顔を顰めながらにむにゃむにゃと言葉にもならない寝言を発していた。


 私は少しの間そんな彼女で遊び、やがて眠りにつく。目を瞑ってから意識を手放すまでは一瞬だった。


「――ーニャ様、スーニャ様、起きていらっしゃいますか?」


 扉が叩く音が聞こえて目を覚ます。目を開けると外はもう陽が登っていた。さっき寝たばかりのように身体は気怠かったが、無理やりに意識を起こす。


「はいはいー。起きてますよー」


 返事をしつつ、私は慌ててベッドから起き上がりドアを開ける。


「おはようございます。朝餉の用意が出来ました」


 目の前にいたのは昨日いた給仕の中の一人だった。ディアさんかリーリアさんが来るかと思ったが、忙しいのだろうか。


「はーい。ちょっと待ってくださいね」


 まだグースカと寝ていたモノを起こして、急いで身支度を整える。途中途中にまた寝ようとするモノを何とか起こしつつ、私達はすぐに部屋を後にした。


 食事をとる部屋は私達がいた客室からは少し距離が離れているようで、少しの間三人で長い廊下を歩く。私は何ともなしに給仕の彼女へと話しかけてみた。


「そういえば今朝はディアさんやリーリアさんではなかったんですね?」


彼女は私が声をかけたことに驚いたのか、初めピクリと身体が揺れていた。


「……ええ。お二人とも急用で館を後にしました」


 館を後に? 私達に何も言わずに? 思わぬ回答に驚く。深く聞きたいところだったのだが、彼女はそれきり足早に歩き始めたためにそれ以上聞くことは何だか憚られた。


 案内された部屋に着き、その古めかしい木造のドアを開ける。部屋は何十人も座れるテーブルと席があり丁寧に食器の用意がなされている。ただ、もうみな食事を済ませたのか座っているものはいなかった。私達はひとまず手前の席へと座る。


 案内をしてくれた給仕が合図をすると、ほどなくして朝食が目の前に並べられた。出てきた朝食はお粥に木の実が混ぜられたようなもので、適度に塩味が加えられており非常に美味しい。モノは肉が食べたいとブーブー言っていたが、二回もおかわりをしていた。


 ご飯を食べた後もデザートとお茶を頂き、私達はまったりとした時間を過ごす。リムさん達には悪いが本当にこんなゆっくりとした時間は久々だった。だがまたしても思わぬ展開に振り回されることになる。


「スーニャ様。外に馬車を待たせておりますので、お荷物が纏まりましたらお乗り頂けますか?」

「え?」

「いえ、スーニャ様方を鬼人族の里へご案内する馬車を準備しております」

「……え!?」


 想定外の言葉に驚いてしまう。確かにディアさんは鬼人族の里へ是非にと言っていたが……。


「でもディアさん達も今忙しいんじゃ」

「いえ、これは当主たっての願いです。何卒」


 そこまで言われると何だか無碍にするのも申し訳ない気持ちになる。なんせすでに用意までされているのだ。ここで断ってしまうのも心苦しい思いもあるし、どうしたものだろうか。


「……モノ、どーする?」

「お肉、お菓子」


 私の服の裾を引きながらに囁いてくる。いやいやいや、よく覚えてたな。でもまー、うーん、仕方ないか。実際私も鬼人族の里というのがどのようなものか興味もある。まあそれにお酒やご飯も。だから、ごめんなさいーと心の中でリムさん達に謝っておく。


「じゃあお言葉に甘えさせて頂きます」


 私の言葉を受けてこの給仕の表情がひどく安心したものに変わっていたが、相当厳重に言われていたのだろうか。


 再度私達は行きに使った馬車へと乗り込み、鬼人族の里へと向かう。といってもここからそうは遠くないらしい。半日も掛からず着くそうだ。


「スーニャー、しりとりー」

「えー、仕方ないなー。じゃあ、しりとりー」

「リー、リーリアー」

「アー?、アヌ」

「ヌー? ヌ〜?? ……無い」

「いや語彙少なすぎでしょ……」


 私達は持て余した時間をダラダラと消費していた。途中仮眠を取ったり、モノと遊んだり、手元だけでできる魔法の練習をしたりだ。道案内には先ほどまで給仕をしてくれていた彼女が同席していた。


「ね。今更だけどもあなたのお名前は?」


 声を掛けてみたものの、私の声を受けて彼女が若干表情を曇らせたのは間違いないだろう。


「……いえ、私などスーニャ様に覚えて頂くほどのものではありません」


 彼女はそういうとそれっきり前を向いたままこちらに耳を貸すことはなかった。私は不自然なその様子に釈然とはしないながらも、それ以上深く追求することはやめておいた。僅かながら彼女の表情には恐れが映っていたからだ。


 その後私達は何事もなく鬼人族の里へと到着する。昼前頃に出発したために、到着した頃にはすでに夕刻に差し掛かっていて日も沈みかけの頃合いだった。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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