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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

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【2-6-2】

「私達姉妹のこと?」

「そう。実はあんまり知らなくて」

「んー? いいよー。話してあげる」


 私が知っている事は至極一般的な情報だけだ。アヌ神が作った神々と言われる存在であること。六人姉妹であること。太古からこの世界で生きていること。その力は賢人をも上回ること。


 大雑把にはこんなところだろう。無論彼女らのエピソード自体は無数にあるが、何が本当なのかもわからない。ただ彼女達は歴史の表にも裏にも現れ、この世界をコントロールしてきたことは間違いなかった。


「私達はアヌの申し子。アヌお母さんは、この世界を作って初めに私達を作った。私達はお母さんの意思を継ぐもの達。彼女の意思を受け継いで、世界を導いているの」


 改めて本人から聞く情報というのは重みが違う。しかしこの世界の誰もが崇める存在のアヌ神をお母さんと呼ぶとは。


「……アヌというのは実在したの?」

「したよー。今は死んじゃったけどね」


 衝撃的な情報をあっけらかんと話している。アヌ教徒が聞いたら卒倒するんじゃないだろうか。いや詳しい教えとかは知らないけども。


「ただ私達はお母さんの意思そのままに生きている。それは貴方達もみんな一緒だけれども、私達は特にそう」


 私達もみんな一緒とはどういうことだろうか。集合意識のようなものだろうか。


「だからお母さんは生きているといえば生きているし、死んでいるといえば死んでいるの」


 彼女が言っていることは、分かるようで分からなかった。捉え所がない上に独自の死生観の要素が強いように思える。


「それで、なんで貴方達は争ってるの?」

「貴方達って?」

「人族と亜族のこと」


『ああ』と合点がいったような表情をしている。私が聞いたい本題はここからだ。


「それは簡単だよ。ミームがそうしたかったから」

「……亜族を憎んでいるとかではないの?」

「うーん、憎んではいないんじゃないかな?」


 彼女の回答は若干曖昧だ。どうも彼女と話していると感覚の違いのようなものを感じる。


「……そうするとなんでこんな戦争をしてるのかな?」

「ミームは人族を愛してる。本当に心から。だから人族の望みを叶えてやりたいの」

「人族の望み?」

「うん。亜族を滅ぼしたいって望み」


 それが人族の望みなのだろうか。そんな、ごく僅かな人達だけの望みではないのか。それに争ったところで、自分達にも被害が出る話のはず。


「でも、すごい犠牲も出てるじゃない? それは……」

「そんなの関係ないよ。だって昔なんてもっともっと少なかったんだもん」


 そうか。彼女達からすれば、今の人族の数なんて、ごく最近の話なのだろう。だから多少減ったところで関係などないのだ。


「……ククルは、亜族の神様なんでしょ? 何とか止めようと思わないの?」

「えー? 特には思わないかな〜。だって亜族もみんな人族を憎んでるんだもん。今回の戦争を経て余計にそうなった。もう、この争いは止められないよ」


 そんな。彼女達が言えば止まるんじゃないのか。どんなに望みや意思があったって、それぞれの神が言うのであれば。


「……無駄だよ? だってそれがみんなの意思なんだもん。それを止めることは誰にもできないし、私達だって言わないよ」


 私が思っていることを察したのだろう。ただそれはまったくの図星だった。


「昔から、私達はたくさんの望みを叶えてきた。繁栄を求められれば繁栄を、滅亡を求められれば滅亡を、繰り返し繰り返し繰り返し。これから先もそれは変わらない」


 幼い見た目なのに、その言葉には神と呼ばれたもの特有の重みを感じた。


「――ね? そろそろお話はおしまいでいーかナ?」


 ヤバい。ククルの目が怪しく光っている。それにまた遊びという名の殺し合いをするのはごめんだった。


「もう一つだけ聞いても良い?」

「えー!! もう! 今度はなーにー?!」


 ぶーぶーと不貞腐れながらに回答してくれる。思ったよりも話も通じるし良い子じゃないか、なんて思ったり。


「――貴方達を殺す事は出来るの?」


 思いがけない言葉だったのだろう。キョトンとした表情を浮かべている。そして彼女は笑い始めた。


「アハハハハッ!! なにそれ!? キャハハハハッ」


 その後ふーふーと息を荒くしながらに呼吸を正している。本当に芯から愉快そうだった。


「殺すことは勿論できるよ。私達だって生き物だもん。死んじゃう時は死んじゃう」


『ただ今まではそんな機会が無かっただけ』と言葉を付け加えている。そうか。彼女達も殺す事はできるのか。それであればいい。


「ん、わかった。ありがと」


 あとはどうここを立ち去るなのだが、はたしてどうしよう。生き返るにしても限界まで殺されては私も死んでしまう。といって、今ここで『じゃあね〜』と言って去るわけにもいかないだろうし。


「ね、スーニャ」


 私が逡巡していると向こうから声を掛けてきた。ビクッと身体を震わせる。また遊ぼーと言われるのかと思ったがどうやらそうでもないらしい。


「私、貴方のこと好きになっちゃった。だってそんなこと言う人今までいなかったんだもの」


 思わぬ言葉に驚く。ただ彼女からは確かに敵意もなかったし、言葉も柔らかかった。


「だからね、何かあったら協力してあげる。でもその分いっぱい遊んでね?」

「いやそれはちょっと……」

「……ダメなの?」


 ヤバいちょっとイラついておられる。慌てて私は言葉尻を変える。


「いーけども、もっと別な遊びもあるじゃない? それなら喜んで」


『うーん〜、まあそれでもいっか』と言い納得してくれた。前言撤回だ。やっぱり危なっかしい子だ。


「あ、そういえば一個だけ」


 そういって彼女は私にゴニョゴニョと耳打ちされる。『内緒だよ?』なんて言われながらに聞くその話は、どういう意図なのか理解ができず詳しく話を聞こうとしたのだけれど、別の声によって遮られる。

 

「――話は終わったかしら?」


 後ろから声を掛けられる。振り返るとディアさんがそこにいた。ククルも気づいていなかったようで驚いている。そしてすぐ不機嫌そうな表情にかわった。


「……ディア、なに?」


 さっきまでとは打って変わった声色だった。楽しんでいた時間を邪魔された、という表現がぴったりな反応だった。


「お楽しみのところごめんなさいね、ククル。でももう夜も更けたわ。スーニャも疲れているし、もうお開きにしなさいな」

「なんで? 私はもっと遊びたいんだけど?」


『またスーニャも遊びに来てくれるから』なんてまるで母親のような声色でククルと接している。ああディアさんも気苦労が絶えないだろうななんて心の中で同情する。


 その後はククルの制止を振り切り二人で部屋を後にする。『当分はククルの面倒は大変そうね……』なんてボヤく彼女を見て、思わず苦笑いをしてしまった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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