表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/117

【2-4-1】邂逅

「……えっと、こんにちは?」

「はい。こんにちは」


 ニコニコとした表情をしながらこちらを見つめてくる。黄金色の長い髪を後ろで結っている。キラキラと輝く耳飾りを身に付けていて、着ている服装は前世の着物に酷似したものであり、その紫の色は彼女の雰囲気によく合っていた。


「スーニャさん、貴方と話せて光栄ですわ」


 随分と上品な立ち振る舞いに慌ててしまう。こちらの様子が伝わったのか、扇子で口を隠してクスクスと笑っていた。


「慌てなくていいのですよ? そんなつもりじゃないのですから」


 その言葉で顔が赤くなる。呼吸を正し彼女と向き合う。聞きたい事はたくさんあるが、まずはこれだろう。


「インヴィーディアさん、何のご用でしょうか?」


 私はヴェルグを殺した。亜族として仇討ちのために来たというのもおかしな話ではない。私は悟られないように身構える。


「あらディアでいいんですよ? それとも、私が気軽に話した方が貴方も話しやすいかしら?」


 ニコニコと笑っている。とんでもない美人なんだが、何を考えているか読めないタイプだ。


「……どちらでも。それでディアさんは何の為に私に会いにきたんです?」

「んー? んふふ〜。今話題のスーニャさんに会いに来たのよ〜?」


 早速言葉がフランクなものになっている。しかし話題というのはいったいなんだろうか? 私の様子を見て彼女が補足をしてくれる。


「自覚がないのかしら? ヴェルグを倒した謎の人物って今一部で話題の的なのよ?」


『でもそれがこんな可愛い子なんてね〜』なんてお茶らけていらっしゃる。しかし思ったよりも情報が回るのが早い。身元不明の存在が亜族の大将を倒したのだから、話題にもなるだろうが。


「なるほど。……それでディアさんは仲間の敵討ちか何かですか?」


 直球で聞いてしまう。それであれば、亜族の大将がわざわざここまで来たことも理解ができる。


「いや、そんなつもりはないのだけれど?」


 キョトンとした顔を浮かべている。思わず姿勢を崩してしまった。


「……それであれば本当に何のご用で?」

「だから言っているでしょう? 貴方に会いにきたと」

「いやいやいや、その為だけにわざわざここまで?」


 亜族は先の大戦から今大変な事態になっているはず。よほど時間の余裕などないはずなのに、一体どういう目的だろうか?


「ええ。それくらい、重要な目的なの」


 彼女はその笑みを崩さない。


「……貴方遠目から見ていたけれども、随分と特殊な体をしているわね?」


 その表情のままに目を鋭く細める。私はどのように答えるべきか考えてしまう。素直に言っていいものか。慌ててジーが間に入る。


「えーと、ディアさん? 彼女は――「――ありがとう。でも私は、スーニャさんに聞いているの」


 ジーが取り繕おうとしても言葉を入れさせない。彼女には有無を言わさない迫力があった。


「……私は少し特殊な一族の出なので。見慣れない力も持ってましてね」


 これくらいならいいだろうか。しかし中途半端な誤魔化しは通用しなかった。


「見慣れない、訳ではないわね。アレは私はよく見たことがある。――ね、あれって不死鳥の炎でしょう?」


 アンジェルは人と長らく接していないとは言っていたものの、その生涯は相当に長い。ディアさんがアンジェルと接触していたとしてもおかしな話ではないか。


「よくご存知ですね。仰られる通りに、あの力は不死鳥のものです。私は出自が化け形族の遠縁に当たりましてね。一部の力を頂いたのですよ」

「ふーん? 化け形族ってまた珍しい種族ね。でも確かそんな都合良いものではなかったのじゃない?」

「それは秘技ですから内緒です」


 チラリと舌を出しながらにおちゃらけてみる。嘘は言っていない。真実も言っていないが。


「あら残念。じゃあ質問を変えて、――貴方が不死鳥を殺したの?」


 だんだんと質問が直球になってきているように思う。彼女からのプレッシャーも増すばかりだ。しかしこちらからすると地雷原を歩いているような気持ちになる。一歩でも踏み間違えたら即死亡、みたいな。


「違います。私が殺したと世間的にはなっているみたいですが、実際はほとんど冒険者達が行ったものです。私は最後の後押しをしただけに過ぎません」


 暫くの間私たちは見つめ合い、そしてディアさんがふうと息を吐き空気が弛緩する。


「まあまんざら嘘を言っているようでもないし、いいでしょう」


『全部が全部本当なのかは分からないけれども』なんて言っている。やはり油断のならない人だ。


「スーニャ、今の話を聞いた上で、改めて私のお願いがあるの」


 果たしてなんだろう。少なくとも嫌な予感しかしないのだが。


「一緒にマグノリアへ来てもらえないかしら?」


 思ってもいない問いかけに思わず言葉が詰まる。私がマグノリアに? いったい何が目的だろうか。


「えっとそれはいったい?」

「疑問に思うのも当然ね。貴方に会いたいという人がいてね。私が貴方に会いに来たのはそれが目的」


『変な人だったら勿論やめようと思っていたのだけれど』なんて言っているが、いやしかし今し方祖龍を倒したばかりというのに。


「ね、スーニャ。来てくれるわよね?」


 ジーッと目を見つめられる。いやいや流石にさっきの今でそれは……。私はモノとジーを見る。モノは特段と変わらぬ表情で私を見ていて、ジーは黙り込み、暫くした後に口を開いた。


「……まあちょっとくらいならいいんじゃないですか? 素材の加工にも時間は掛かるでしょうし」

「ええ! ええ! 少しだけですからね!」  


 ジーの答えに、ディアさんが嬉しそうに反応する。そう言われては私も抵抗のしようもなかった。ディアさんに急かされマグノリアへと向かう準備が始まる。向かうのは私とモノの二人。ジーは祖龍の死骸の運搬と帰宅後の処理があるために、ここで別れることとなった。


 祖龍の死骸と共に隠れ家へと転移する彼女を見送り、ディアさんが用意していた馬車でマグノリアへと向かう。今我々が位置している場所から五、六日程度で到着するらしい。


 私は馬車に乗ってすぐ睡魔に襲われた。ジンと戦って時間も経っていないのだ。疲れていて当然だった。それに時間もたっぷりとある。私は初めて赴くマグノリアがどのような場所なのか思いを馳せつつ、眠りについた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。

(……でないと、力尽きるかもしれません)


※評価は星マーク、ブクマはお気に入りからお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ