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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

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【2-3-3】

 それはレオが去ってから数日のことで、私達は珍しく穏やかな時間を過ごしていた。


「そういえば、あの白い剣? はなんだったんです?」


 私はジーが入れてくれたお茶を飲みながらリムさんに尋ねる。


「おお! そうだった! どうだった!?」


 待ってましたとばかりに爛々と目を輝かせる。彼女がこんな嬉しそうな顔をするのも久方ぶりに見る。


「あれはな、不死鳥の骨を媒体にした刃だ。その特性を受け継ぐように作った。私は刀鍛冶ではないから、荒療治で拵えたが切れ味は思ったよりも悪くなかったろう? 私が振るう分にはただの切れる骨だが、貴様であればその特性が発現するかと思ってな。それで使ってみた感想はどうだった? 自己修復や発炎性能を帯びていたと思うのだが」


 口早に説明をしている姿を見て思わず苦笑する。まるで年相応の少女だった。私は事の一部始終を伝え、彼女は熱心にその話を聞いていた。しかし私は彼女に文句を言わなければならなかったと思い出す。


「……そういえば、私一人で行かせて、もし私が死んだらどうするつもりだったんですか?」


『生き返ったからよかったものを』とリムさんを責めるように見つめる。あの時点では、生き返りは確約されたものではなかったはず。死んでしまえば彼女の夢の実現もまた無駄になるだろうに。ただ彼女は何を分かりきったことを、と言った風に答える。


「不死鳥の心臓を継いだのだ。死ぬわけなかろう?」

「いやほらでも、万が一ということが……」

「そんなものはない。そんなことがあれば、それは受け継いでいないこと同義だ。つまり、そもそも今生きていない」


 彼女があまりにも断言するために、思わず黙ってしまう。彼女が言うのであればそうなのだろうが、説明もなしだった側としては釈然としないことは否めなかった。ただこれ以上何か言ったところで無駄であろうことも察し、私も追求はしなかった。


 それと私はもう一つ気になっていたことを確認する。今度の相手はレナードだ。


「レナードってさ、レオと知り合いだったんじゃないの?」

「ええ、もちろん知ってますよ」


 彼は全くもって動じない様子でお茶を飲んでいる。相変わらず絵になる少年だ。


「今回直接会っちゃったわけじゃない? 何か問題は起きなかったの?」

「ああ、そういうことですか。無論問題ありませんよ」


 にっこりとした笑顔をこちらへ向けてくる。


「他人の空似ということで説き伏せましたから」

「いや、えっと……」

「どうしましたか?」


 まあ私としてはなんでもいいのだが。


「いや、別になんでも……」

「ふふっ。それが彼女のいいところですからね」


 笑っている彼を見つつに思ったことは、レナードはこういう風に今までも乗り切ってきて、レオはきっと苦労していたんだろうということだった。

 

 その後数日間はだらだらとお茶を飲んだり、リハビリをしたりの時間をすごす。ただそんな平穏も長くは続かなかった。


 この家には電話とも呼ぶべき呪具がある。しかし見た目は貝殻のようで、複数の電波が届くものではなく、直通のものだ。つまりは一回線ごとに一個の端末を所有しなければいけないらしい。


 その回線がけたたましい音を立てながらになっている。誰かがこちらへ連絡を取ろうとしているのだ。リムさんがうるさいと一度破壊しようとしていたが、慌てて私達でそれを止め、着信に応じた。


「もしもし!! リム様聞こえてますか!?」


 この声は確か、ギルドマスターを務めているマーニャさんだ。


「なんだ。相変わらず喧しいヤツだな。どうしたというのだ」


 リムさんがその声に応える。喧しいというのは余計ではあるが、何かあったのだろうか。


「スーニャさんもそこいてはりますか!?」

「いるが? それでなんなのだ?」

「スーニャさんが、竜人族のヴェルグを殺したのホンマですか?」

「……本当だ。だからそれがなんなのだ」


 リムさんがイライラとしている。それもそのはずで、確かにマーニャさんはリムさんの問いに回答していなかった。よほど余裕がないのか。私はひとまず様子を見続ける。


「……リムさん。確か祖竜の討伐に興味を持ってはりましたね?」

「……それがなんだ?」

「祖竜がスーニャさんを出せ出せ宣って街々で暴れてるんですわ」


『いい加減にせえって話ではあるんですけどもどうしようもなくて』などとリムさんの不機嫌さに気づいてすらいない様子だ。それほどまでに慌てているのだろう。しかしなぜ祖竜がわざわざ私を名指しで指名するのだろうか。


「祖竜はどうもヴェルグと仲がよかったらしいです。なんでそのためでしょうね」


 ああそうか。ヴェルグを殺したことが伝わり、祖竜が怒っているのか。至極単純な図式だ。


「このままではもっと大きい被害がでます。しかもギルド所属の冒険者の名前を言いながらに進んでるんです。いいですかスーニャさん。貴方に緊急クエストを出します。――祖竜ジンを討ち取ってください」


『貴方にだって責任あるんですからね?』なんて付け加えつつに私へと話を振ってくる。


 私は厄介だなあと思いながらも、再度タイミングの良さに驚いていた。以前リムさんは次に集めるべきの素材は骨格だと言っていたはずだ。私は身体のリハビリも満足に終わってないものの、祖竜討伐の準備を進める。


 更に加速する展開に喜びすら感じながら。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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