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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第2部】目覚め

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【2-1-5】

 ラースの強さは力だけではない。突筆すべきはそのスピードだ。距離を取っていたはずが、一瞬で間合いを詰められる。私が攻撃したはずなのに、それよりも早く彼の攻撃が繰り出される。私だけでは一溜まりもなかった事だろうが、ギルゴーシュ殿と連携することで何とかラースとやり合えていた。


「ギルゴーシュ、か。流石は人族の大将と言うべきか? いやだがあのシェスカの小娘には劣るか」


 矢継ぎ早な攻撃を繰り出しつつ、それでもまだ余裕があるのか喋りかけてくる。ギルゴーシュ殿が攻撃を受け、私はラースへと剣を振るう。隙をついたはずなのに、それでも私の剣は空を切る。


「俺がガブリエットに劣るとは心外だな。勝負とは単純な強さだけではないだろう?」


 ギルゴーシュ殿がラースの言葉に返す。私は彼が注意を引いている間に魔法を唱える。


「聴け。罪深き汝らに慈悲を授けん。我が与えるは原初の光。咎を洗い流す神々の息吹。其の福音と共に永遠の安息を得よ。――ホーリーランス!」


 詠唱を終え、魔素から変換された光の矢がラースを襲う。ただ彼を止めるには到底足りない。彼は造作もないように私の攻撃を避けていた。


「俺はこの反応速度が売りでな。広範囲の攻撃ならともかく、狭い範囲では魔法など当たる気はしないな。リアナンシーほどの使い手ならいざしらず、貴様のは生ぬるい」


『詠唱破棄もできんのか?』などと余裕そうにしている姿は私の神経を逆撫でる。魔方では意味をなさないのであれば、それならそれでいい。別の手段を講じるのみだ。それに、こちらの方が私も得手としている。


「む? 今度は何だ?」


 私は今度は魔素を自らの身体強化にあてる。一時的に、動きのギアが上がる。ラースへ接近し剣を振るう。彼は驚いた表情を浮かべた。


「……いい動きだな。スピードも力も別人のようだぞ?」

「そうだろう? 私も舐められたままでは面目がたたんからな!」


 攻撃を続ける。先ほどとはうってかわりこちらが攻め込む。突然の変化に戸惑っているのだろう。ラースは私の攻撃にまだ対応できないでいた。そしてその隙を逃すギルゴーシュ殿でもなかった。


「合わせるぞレオ!」


 二人で再度攻撃を続ける。少しずつだがラースに攻撃が届き始める。浅いが血が流れ、彼の茶色の毛皮が赤く染まっていく。このまま倒せるのではないか、そんな甘い考えを抱く。ただそれは当然の如く簡単に打ち砕かれる。

 

「……俺が押されるなど、いつ以来だろうな」


 今度はラースがいったん距離を作る。そして身体を震わせながに嘶く。彼はまるで獣のように四つ足をついていた。


「――ここからは俺も全力だ」


 牙を剥き、まさしく獣のようにこちらへと飛び交ってくる。先ほどとは違う攻撃に、今度は私たちが動揺させられる。攻撃の軌道が直線的でありながらも変則的だ。ただの獣であれば攻撃は単調だが、相手は獣人族の王。直線的な中にも手足は異なる動きを取り、攻撃が読めない。さらにスピードも力も先ほどよりも更に増している。


 私もギルゴーシュ殿もここに至るまでにすでに軽くない傷を負っていた。しかし改めて自分を奮い立たせる。ここで私たちが負けたら、全てが無駄になるのだから。


 ギルゴーシュ殿と共に再度攻撃をしかける。こちら側も相手も双方すでに死力をつくしている。もはや長くは持つまい。あとは、互いの意地のぶつけ合いだった。


「さっきはああ言ったがな、嬉しくもある。本能なんだろう。こんな戦いが出来ることがな。ギルゴーシュ、レオ、いつまでもこうしていたいと思わないか?!」

「俺は全く同感できないな。早く倒れてくれ!」

「私も同感だ!」

「人族というのはどこまでもつれない種族だな!」


 言葉を交わしつつも攻撃は止まない。我々は戦いを続けた。双方傷を負い体中を血が流れる。一瞬のようでもありながら、何時間も経過したような気もする。


 誰ともなしに距離を取り体勢を整える。辺りには荒い息が響いていた。ふと周りへ目を向ける。気がつけばあれほどいたはずの兵がほとんどいなくなっていた。


「兵たちは、どうしたんだ……?」

「なんだ。気がつかなかったのか? みな死んだ。人族も亜族も関係なくな」


 まさかそんな。私たちが戦い始めてそんな時間も経っていないはずだ。いくらラースに集中していたとはいえ、そんなことはありえないはずだ。


「我々の戦いの熱気にあてられたんだろう。そもそもが限界だったんだ。傷を負っていないものなどいない。半分死んだような身体で気力だけで戦っていたんだ。死ぬ時など、あっけないものだ」


 本当に、生きているものはこんな少ないのか? それでは勝って生き残ったとしても、仕方がないのではないか。我々が為すは人族の未来のため。だがその人族がいないのではそこに意味など無いではないか。私は眩暈に襲われ思わず頭をおさえた。


「レオ、戦っている最中に惚けるな! 集中しろ!」


 ギルゴーシュ殿の声でハッと前を向く。目の前に迫ったラースの攻撃を慌てて受ける。兎にも角にも私はまずこの場を生き残らなければ。


「はァッ!」


 剣に力を込めラースへと振るう。しかし双方決め手に欠ける状況だ。どうにか打開先を見つけなければ体力で劣る我々が負けるだろう。ただ、ここでギルゴーシュ殿に耳打ちされる。


「レオ、少し時間を稼げるか?」

「なんです? 何か策があるですか?」

「ああ。我が国に伝わる秘技を見せてやろうかと思ってな」

「!! そうですか。わかりました。それでは任せてください。極力相手を止めるようにします」


 その言葉通りに私はラースへと立ち向かう。私一人ではとてもラースを抑えるには足りない。しかしそれでもやるしかない。今はただギルゴーシュ殿の秘策に頼るほかないのだ。


「何か策があるようだが、素直に受けると思うか?」


 状況を察知したラースがギルゴーシュ殿へと迫る。私はなけなしの魔素を使い身体を強化し迎撃する。すでに枯渇しつつあった魔素ではあるが出し惜しみは無しだ。


「グゥ、まだまだ動けるじゃないか。先に貴様から殺すか。レオッ!」


 ラースは標的を私へと変え、猛攻撃を仕掛けてくる。何とかその動きを捌くものの限界は近い。私はギルゴーシュ殿の様子を見た。


 彼は呼吸を正し構えを取っていた。その静かな出立に彼の周囲だけ時が止まっているかのような印象を受ける。噂にだけ聞いた事があった。剣聖が剣聖たる所以。彼の国のごく一部のものだけに口伝される秘技。身体中の全ての魔素を剣に宿し、その魔素を斬撃へと変え敵へと叩きつける。その無比の威力はたとえ太古の神々でさえも斬り伏せるとされる。


「レオ、離れろ!」


 その言葉を受けてすぐさま離脱する。

 

 ――其の技は一振りに全てを込めることから、こう名付けられた。

 

「神技一閃ッッッ!!!」


 剣撃と共に放出された魔素が斜め一線にラースを切り裂く。片腕が吹き飛び、胴体から血が噴水のように溢れる。


「ッッ!! ――うぐぁぁぁが゛ぁぁッッ!!!」


 その威力に薄寒さすら覚える。完璧に決まった。たまらずラースはその場へと崩れ落ちる。ただギルゴーシュ殿もまた姿勢を崩し地に伏していた。


「はぁはぁはぁ。ゴホッゴホッ。やったか……? 流石に万全ではない状態では堪えるな」

「ええ! ラースも重症を負っています。凄まじいものを見させて頂きました」


 私も興奮冷めやらぬ状況だ。話に聞く神技一閃。それをまさか目にする日が来るとは。ただ今はラースのトドメを刺さねば。私は警戒しながら彼へと近づく。


「ハァハァハァ。やって、くれたな。こんな攻撃を残しているとは……」


 傷口を押さえながらうめいている。その目にはまだ力が感じられる。


「……ラース。もうお前の負けだ。俺も今やまともには動けんが、レオもいる。今の状態で彼女を相手取るのはさすがに分が悪いだろう」


 ギルゴーシュ殿の言葉に偽りはない。確かに今のラースであれば私でも倒すことはできよう。


「グハハハッッ!!! 舐めるなよ? 人族風情が!!」


 それでも彼は戦いを続けようとする。私はゆっくりとラースへと近づき剣を向ける。ラースは私へと攻撃をするも先ほどまでの鮮烈さは微塵もない。彼の攻撃を弾き、そしてその首へ剣を突きつける。


「……口惜しいが、ここまでだな」


 先ほどまでとはうってかわり至極落ち着いた様子だ。私は彼へと最後の言葉を投げかける。


「何か言い残すことはあるか?」

「ない。――殺せ」

「……貴殿のこと、忘れないぞ」


 彼の首を切りおとす。彼が絶命したことを確認した後、思わずへたり込んでしまう。ようやく、ようやく終わったのだ私たちの戦いが。皆に早く知らせてやらねば。そうだ勝ち鬨をあげよう。生き残っている兵たちも集めてやらないと。


 私は少しだけ息を整え、ギルゴーシュ殿へ声をかけようと振り向いた。


「ギルゴーシュ殿、みなを――「――レオッ! 逃げ」

「なんだぁ? 旦那はやられちまったのかよ。なっさけねー」


 そこには、カイリの標的であった竜人族の大将、ヴェルグ=ガーランドが立っていた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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